1章. 飲食店は本当に儲からないのか?

1-1. なぜ「飲食店は儲からない」と言われるのか?
「飲食店は儲からない」というイメージは、多くの経営者やこれから開業を考える人の頭に浮かぶ代表的な不安要素です。実際、飲食業に参入しても数年で閉店に追い込まれる店舗も少なくありません。その背景として、まずは初期投資の大きさが挙げられます。物件の敷金・礼金、内装工事、厨房設備など、店舗を構えるために必要なコストは想像以上に大きいのです。
さらに、開業後も多くの出費が続きます。たとえば、仕入れにかかる食材費は毎日発生し、その価格変動に影響を受けることもしばしば。加えて、調理スタッフやホールスタッフなどの人件費、光熱費や家賃など、さまざまな経営コストが重くのしかかります。これらを全て賄ったうえで利益を出さねばならないため、「薄利多売」や「利益率が低い」と感じることが多くなるわけです。
また、飲食店が儲からないとされる要因には外的環境も大きく作用します。天候不順や景気後退、社会情勢の変化など、店舗の努力だけではコントロールしきれない要素が売上を左右します。大雨や台風の日は顧客が外出を控え、売上が急激に減少することも珍しくありません。最近ではリモートワークの定着や外出自粛ムードが長引いた影響で、夜間の集客が極端に落ち込んだ店舗も多く見られました。このように、飲食店は安定的に顧客を確保することが難しい事業形態のひとつなのです。
1-2. 飲食業が選ばれる理由
初期費用や経営リスクの大きさがあるにもかかわらず、多くの人が飲食業を選ぶ理由は何でしょうか。一つには「自分の料理で顧客を喜ばせたい」という思いがあります。たとえば、長年修業を積んだシェフが独立して開業し、自分ならではの料理を振る舞う場をつくりたいという夢を抱くケースです。料理を通じて人を幸せにし、喜んでもらえることは飲食店の醍醐味でもあります。
また、「小さい頃からの夢だったから」「自宅の近くで地域に愛されるお店を育てたい」という想いが原動力になり、飲食業に飛び込む経営者も大勢います。趣味や得意分野からビジネスを起こせるという点でも、飲食業は魅力的な選択肢なのです。さらに、飲食店はニーズがなくなることがほとんどありません。人は毎日何かを食べるわけですから、うまくマッチすれば安定的な売上を見込める可能性もあります。
ただし、「飲食は人を笑顔にできる」「食は生活に必要」といったポジティブな要素だけで突き進むと、途中で大きな壁にぶつかることも少なくありません。経営を持続させるには、料理のクオリティや雰囲気づくりだけでなく、しっかりとしたコスト管理や集客戦略が必要になります。どれだけ素晴らしい料理をつくっても、知られる仕組みをつくらなければ顧客は来ませんし、利益を出すための原価率調整や人件費のコントロールを怠れば、たちまち経営難に陥ってしまうのです。
1-3. イメージと現実:本当に儲からないのか?

「飲食店は儲からない」というイメージが蔓延している一方で、実際にはオーナーがしっかり利益を出している店舗もたくさんあります。要は、ビジネスとして飲食業を捉えたときに、戦略とマネジメントが徹底できているかどうかがカギです。売上を最大化するためには、どの時間帯にどのメニューが最も注文されているのか、顧客単価を上げるためにはどのようなメニュー構成が最適か、といった細部のデータ分析が欠かせません。
昨今では、POSシステムを導入して売上データをリアルタイムで把握したり、SNSを活用して顧客との接点を増やしたりする戦略が広く普及しています。特にSNSは、低コストでお店の魅力を発信できるため、人件費や広告費を抑えながら新しい顧客を呼び込む効果が期待できます。たとえばInstagramで料理写真を魅力的に投稿し、その投稿を見た人が「今度行ってみよう」と思って来店し、リピーターになってくれれば売上の向上につながります。

一方、「バーチャルレストラン」のように店舗を持たずにデリバリーに特化するビジネスモデルも注目されています。実店舗の家賃や内装工事などの負担を避けられるメリットがある一方で、オンライン上でのブランド構築やデリバリー対応のオペレーションなど、別の課題が浮上するため、“放っておけば儲かる”わけでは決してありません。総じて「飲食業は儲からない」というよりも、“正しい経営努力を怠ると儲からない”という捉え方をしたほうが適切でしょう。
1-4. ランチ営業は本当に儲からないのか?
飲食店におけるランチ営業は「儲からない」「客単価が低くて割に合わない」という声がしばしば上がります。しかし、視点を変えればランチ営業にも大きなメリットはあるのです。たとえば、ランチタイムに初来店した顧客が「夜も来てみよう」と思ってくれれば、ディナータイムの売上拡大につなげられます。また、ランチ限定メニューを導入すれば、夜メニューの食材を有効活用して食材ロスを減らすこともできます。
ただし、ランチのメリットを最大化するには戦略的なアプローチが不可欠です。ランチメニューの価格帯と原価率をあらかじめ計算し、なるべく効率よく利益を出せるように設計する必要があります。たとえば、高単価なグランドメニューを昼でも出すのか、あるいはランチ限定のコンパクトなメニューを用意して回転率を高めるのか。これらは店舗のコンセプトや周辺のターゲット層を踏まえて慎重に決めなければなりません。
また、SNSでランチの写真やサービス内容を積極的に発信することも重要です。特にビジネス街なら「忙しい会社員が短時間でリーズナブルに食事を済ませたい」という需要を狙えますし、住宅街なら「子育て中の主婦や近所の高齢者が気軽に立ち寄れる場所」を目指す戦略が有効です。ランチ営業の稼働をディナーにつなげるトリガーと捉えれば、「ランチ営業=儲からない」という先入観は大きく変わるはずです。
ランチ営業と併せて平日の集客方法を『【完全版】飲食店で平日集客を伸ばす方法を総まとめ!無料でもできる効果的なお店への来店の増やし方!』の記事にもまとめていますので参考になります。
1-5. 繁盛店と儲からない店の差が生まれる理由
同じ場所・同じジャンルの飲食店でも、行列ができる繁盛店と閑古鳥が鳴く店舗に分かれることがあります。その差を分けるのは、経営者がどの程度「顧客視点」と「コスト管理」を徹底しているかです。繁盛店は顧客が本当に求めているものを提供するだけでなく、メニューのラインナップやスタッフの接客態度まで総合的に磨き上げています。さらに、在庫管理や人件費のコントロール、SNS発信などを活用し、コスト面と集客面の両面から改善を重ねているのです。
一方で、儲からない店舗は「この料理が作りたいから出している」「昔ながらのやり方を変えたくない」というように、経営判断が自己都合寄りになりがちです。顧客のニーズを汲まず、原価や人件費のムダを把握しないまま運営を続けると、売上はおろか利益確保もままなりません。さらに、SNSを一切使わず“口コミに頼るだけ”という状態だと、潜在的な新規顧客を取り込みにくいでしょう。
また、POSレジのような販売データの可視化ツールを導入しているかどうかも大きい差を生みます。繁盛店は売上データをもとに「どの時間帯にどのメニューがよく出るか」「客単価の変動はどうか」を把握し、すぐにメニュー改定やシフト調整を行います。儲からない店舗は「忙しくてそこまで手が回らない」と後回しにし、結果的に合わないメニューの継続や不適切なシフトでコスト超過を招いているのです。
こうした細部への取り組みの積み重ねが、儲かるお店と儲からないお店の間に大きな格差を生む主因といえます。
2章. 飲食店が儲からないと言われる主な理由

2-1. 飲食店が抱える経営上の課題
飲食店が儲からないとされる背景には、さまざまな経営上の課題が存在します。たとえば、飲食業は天候や季節、景気の動向など外部要因による影響を受けやすい特徴があります。雨が続けば客足が減少し、売上も落ち込みやすい。また、社会情勢の変化やリモートワークの普及など、店舗の力だけではどうにもならない外的要因が業績を左右しがちです。
さらに、飲食店経営者にとって頭が痛いのは、競合店舗が非常に多いこと。特に人気エリアには数多くのお店がひしめき合い、メニューや価格帯が似通っていると、顧客に選ばれるのは至難の業になります。ここで差別化戦略を打ち出すためには、自店舗が提供できる強み(料理の独自性や雰囲気など)を明確に打ち出す必要があります。
加えて、忙しさのあまり管理が後手に回ることも大きな課題です。売上や原価率、人件費といった数字面を把握しないまま運営を続けると、気づいたときには赤字が膨らんでいることも珍しくありません。飲食店は日々の営業に追われがちですが、同時にデータを活用しながら経営の舵取りをしなければ、先に進むための戦略を立てにくくなります。
2-2. 初期費用と利益率の壁
飲食店が儲からないと感じる要因の一つに、初期投資の大きさがあります。物件の取得や内装工事、冷蔵庫や調理器具などの厨房設備、さらにテーブルや椅子などの客席備品を整えるだけで相当な費用がかかります。これらの投資を回収する前に資金が底をつき、開業から半年~1年で撤退を余儀なくされるケースも少なくありません。
また、飲食業はどれだけ売上を上げても、コストを適切に管理しなければ手元に利益が残りにくい構造です。まず原価として食材を仕入れる必要があり、その仕入れ価格やロスをどれだけ抑えられるかが利益率を左右します。さらに、スタッフを雇えば人件費も高額になります。時給制の場合、忙しい時間帯以外にも人手が余ってしまうと、労働コストが無駄に膨らんでしまうでしょう。
つまり、投資を回収するには十分な売上が必要ですが、その売上を確保しても原価や人件費、家賃、光熱費などを引いていくと想像以上に薄利になりがちなのです。この利益率の低さと初期費用の重さが組み合わさることで、「飲食店は儲からない」という印象をさらに強めています。

2-3. 競合と人材リスク

飲食店を取り巻く環境は競合が多く、人材確保の難しさも深刻です。顧客が多そうな好立地には、すでに似たジャンルの店舗が並んでいて、差別化が困難になりがち。もちろん繁華街や駅前など客足が見込めるエリアを選べば家賃も高く、利益を上げるには相当の集客数と客単価が必要になります。
人材リスクという面では、ホールスタッフやキッチンスタッフが辞めてしまうと営業に支障が出る可能性が高いです。飲食業は比較的離職率が高く、職場環境や待遇面を改善しなければ、常に新人の教育や採用コストが発生することにもなります。新人スタッフが増えると、料理や接客の質も安定せず、顧客満足度やリピート率にも悪影響を及ぼすかもしれません。
2-4. 廃業率の高さが示すもの
さまざまな調査で「飲食店の廃業率は他業種より高い」と報じられています。短期間で閉店に追い込まれる店舗が多いからこそ、「飲食はやはり厳しい」というイメージが強まるのです。特に新規開業者であれば、ノウハウや人脈、資金力が十分でないまま参入するため、初期投資の回収が間に合わず負債を抱えて撤退するケースも珍しくありません。
廃業率が高い背景には、「開店するのは簡単でも、続けるのが難しい」という飲食業特有の特徴があります。お店をOPENした直後は興味本位で顧客が訪れてくれるかもしれませんが、その後リピーターをどれだけ増やせるかが大きな勝負になります。実際には、最初の数カ月で大きく黒字を出すのは難しく、赤字を垂れ流さないよう慎重にコストを抑えつつ、着実に売上を伸ばさなくてはなりません。

こうした厳しさから生き残るためには、「今このお店を開く理由」を明確にし、ターゲット顧客やメニュー構成、原価と価格設定などを丁寧に練る必要があります。勢いや憧れだけで始めてしまうと、廃業率の統計に飲み込まれるリスクが高いのです。
2-5. 売上が上がらない3パターン
飲食店の“儲からない”状態をもう少し整理すると、主に以下の3パターンが挙げられます。
- 顧客が来ない
立地が合わない、宣伝が不十分、競合に埋もれているなどの理由で、そもそもお店へ足を運んでくれる人が極端に少ない状況です。 - 顧客は来るが売上に結びつかない
客単価が低かったり、回転率が上がらないことが原因で、想定よりも売上額を伸ばしきれないケースです。たとえばランチでのみ集客できているが、夜は閑散としているなどのパターンがあります。 - 売上はあるのに利益が残らない
原価や人件費、家賃などのコストが高く、売上が大きくてもほとんど利益にならない状況です。食材ロスやオーバーポーション、過剰な staffing などもここに影響します。
飲食店経営者は、自分の店舗がどのパターンに当てはまるのかを正確に把握し、原因を特定することが重要です。原因ごとに打つべき対策は異なるため、現状分析をしないまま闇雲に「宣伝費を増やす」「人件費を削る」といった対策をしても、期待した効果が得られない可能性が高いからです。現状を数字で客観的に見るために、POSシステムを導入してデータを蓄積し、改善策を練る姿勢が欠かせません。
3章. 儲からない飲食店の特徴と失敗例

3-1. 「儲からない」飲食店の共通点
儲からない飲食店の多くは、顧客目線の経営ができていないことが最大の課題です。たとえば、メニュー構成が店主の好み一辺倒になっており、周辺のターゲット層が求めている料理や価格帯を考慮していない店舗があります。いくら料理の質が高くても、地域の客層に合わなければ足を運んでもらえません。
また、収益を上げるための施策が整っていない場合も多いです。具体的には、高収益商品や回転率アップの商品(軽食・テイクアウトメニューなど)と、集客商品を明確に分けずに運営してしまうケースが挙げられます。原価のかかる豪華な料理ばかり増やし、手頃な価格帯でリピーターを育成するメニューが少ないと、全体としての利益率が伸びにくいのです。
さらには、接客や店内の雰囲気が「また来たい」と思わせるレベルに達していない例も散見されます。飲食店は料理だけでなく、お店での体験全体を提供する場です。スタッフの対応がそっけなかったり、内装が清潔でなかったりすると、せっかく初回に来店した顧客が離れてしまい、継続的な売上向上が見込めません。店舗オペレーション全般を総合的に見直す必要があります。
3-2. ありがちな失敗行動
飲食店経営におけるありがちな失敗行動を挙げると、「原価管理を行っていない」「人件費管理が杜撰」「周辺リサーチ不足」「集客施策が不十分」などが代表例です。これらはいずれも、経営の基本ともいえる部分ですが、実際の現場では忙しさや慣習で後回しにされがちです。
たとえば、食材ロスを減らすためにこまめな棚卸しやオーダー集計をせず、大量に仕入れて余らせてしまう店舗があります。食材が廃棄になるだけでなく、冷蔵庫スペースの圧迫や余計な仕込み時間を生むなど、二重三重にコストを浪費してしまいます。人件費面でも、忙しい時間帯に正確なシフトを組まず、暇な時間までフルスタッフで対応するといった無駄が生じやすいのです。
また、SNS活用やチラシ・看板などの広告手段も「やる余裕がない」と放置していると、潜在顧客が全くお店の存在を知らないままになってしまいます。特に今の時代はスマホ検索で店舗情報をチェックして来店を決める人が多いため、基本的な情報発信を行わない店舗は機会損失が大きいでしょう。結果的に、こうした地道な努力の不足が積み重なり、「飲食店は儲からない」という結果を招いてしまうのです。

3-3. なぜ売れない?15の具体的要因
儲からない店舗には数多くの要因がありますが、代表的なものを挙げると「立地やメニュー、サービス品質の問題」「価格設定や集客手段の不備」「食材管理の不徹底」などが挙げられます。たとえば、立地に関しては“家賃が安いから”だけの理由で、人通りの少ない場所を選んでしまうケースもあります。すると自然に客足が伸びず、売上不足に直面するでしょう。
メニュー面では、原価率やオペレーションを無視して高コスト・低利益の商品を多く出している店舗が見受けられます。盛り付けに手間をかけすぎて提供までの時間が長引き、回転率を下げてしまうこともあるのです。接客や雰囲気に関しては、店内が雑然としていたり、掃除が行き届いていなかったりすれば、初見の顧客は「もう来なくていいや」と感じやすくなります。
こうした15にも及ぶ細かいポイントを一気に改善するのは容易ではありません。しかし、経営者としては「どれが最優先か」を冷静に見極め、一つずつ潰していく姿勢が求められます。たとえば、まずは原価管理とメニュー改定から始めて利益率を上げ、そこで確保した利益をスタッフ育成や内装改善に充てる――というように順序立てると進めやすいでしょう。
3-4. 失敗するお店の共通構造
失敗するお店の多くは、「なんとなく」の経営を続けていることが特徴です。開業当初は熱意にあふれていても、日々のオペレーションで忙殺されるうちに数字の管理が後回しになり、売上や原価、人件費といった重要なデータを把握しなくなっていきます。すると、何が原因で利益が出ないのかを正確に特定できず、漠然とした不安とともに営業を続ける悪循環に陥るのです。
また、顧客視点を見失い、自分たちの都合だけでメニューや価格を決めてしまう構造もよく見受けられます。「これがうちの定番だから」「自分がこれで勝負したいから」という気持ちが強すぎると、周囲の競合状況やターゲット層のニーズを考えなくなってしまうのです。加えて、人材マネジメントを疎かにし、スタッフが定着せずに常に新人ばかりの状態が続くと、サービス品質が安定しません。リピーターが育たず、売上の下支えをする常連客が増えないまま経営が苦境に陥ります。
こうした構造的な問題を抱えると、どんなにSNSで一時的に集客を増やしても、根本の経営力が弱いためにすぐ失速してしまいます。成功している飲食店ほど、「なぜこの価格設定にするのか」「どういう顧客にどうアプローチするのか」を戦略的に考え、スタッフも含めてチーム全体で共有しているのが大きな違いです。
3-5. バーチャルレストランの落とし穴
近年注目を集めるバーチャルレストランは、実店舗を持たずにデリバリーやテイクアウトを中心に展開する新しい飲食業の形です。初期費用の負担を抑えられる反面、“オンライン上でのブランディング”が必須となり、独自の強みを打ち出せないと競合に埋もれがちです。さらに、デリバリーサービスのプラットフォームに依存する部分が大きく、手数料やアルゴリズムの変更に振り回されるリスクも否めません。
また、オペレーション面でも落とし穴があります。バーチャルだからといって食材の仕入れや原価管理の重要度が下がるわけではありません。オンライン上で注文が殺到したときに、キッチンのキャパシティを超えてしまうと質の低下や提供遅延が起こり、顧客満足度が下がります。さらに、デリバリー対応のパッケージや専用容器のコストも意外と無視できない額になり、最終的な利益率を圧迫する可能性があります。
バーチャルレストランが儲かるかどうかは、やはり経営者がどれだけ戦略的に動けるかにかかっています。顧客がSNSで料理写真を共有したくなるような仕掛けを用意し、複数のデリバリーサービスを使って販路を拡大し、限られたスタッフで効率的に調理と梱包を回すなど、リアル店舗とは異なる着眼点が必要です。「実店舗を持たないから楽」というわけでは決してなく、むしろバーチャルならではの課題に正面から取り組まないと、結局“儲からない”状態に陥ってしまうでしょう。
4章. 儲かる飲食店になるための基本戦略

4-1. 経営方針を明確にする
飲食店を「儲かるお店」に変えていくには、まず経営者自身がどのようなビジョン・経営方針を持っているのかを明確にすることが重要です。たとえば、「地域で一番愛される定食屋を目指す」「若い女性向けのカフェとしてSNS映えを重視する」「本格的なイタリアンをリーズナブルに提供する」など、コンセプトを言語化してチーム全体で共有することで、日々の判断基準がブレにくくなります。
経営方針を明確にするメリットは、メニュー開発から接客スタイル、内装・雰囲気づくりまで一貫性を保てる点にあります。たとえば、家族連れをターゲットにするなら「子ども向けメニューを充実させる」「テーブル間隔を広めに取る」「キッズチェアやおむつ替えスペースを完備する」など、お店の細部に至るまで方針を反映できるでしょう。こうした戦略の統一感は、顧客に「ここは自分に合っているお店だ」という安心感を与え、リピーター育成にもつながります。

一方で、曖昧なコンセプトで開業し、「なんとなくカフェ風にした」「価格設定が適当」などの状態が続くと、他店との違いを打ち出せず埋もれてしまいがちです。飲食業は競合が多いため、まずは“何を提供し、どんな顧客に支持されたいのか”という核心をぶれずに伝えるところから始めましょう。しっかりとした経営方針があるお店ほど、スタッフ教育やコスト管理といった次のステップにスムーズに取り組めます。
4-2. 数字を活用したメニュー戦略
儲かる飲食店づくりにおいて、メニュー戦略はきわめて重要なポイントです。とりわけ、「原価率」「客単価」「回転率」といった数字を踏まえた設計を行うことで、より効率的に利益を確保できます。たとえば、原価率の目安を30~35%に設定してメニュー構成を考えると、仕入れコストと販売価格のバランスを取りやすくなります。高すぎる原価率は利益を圧迫しますし、低すぎると品質や満足度の低下につながるので注意が必要です。
また、店舗の客層によっては、客単価がそこまで高くない場合でも、回転率を上げることでトータルの売上を伸ばせます。たとえば、ランチタイムのスピード提供メニューを増やして回転率を高める戦略を取るのも一案です。一方、ディナータイムはコース料理やアルコール類で客単価を上げる形にすれば、同じ店舗でも時間帯別に売上の伸ばし方を変えられます。
重要なのは、実際の売上データを定期的にチェックし、人気メニューや注文頻度の低いメニューを分析することです。POSレジなどを導入すれば、メニュー別の売上推移を簡単に把握でき、原価率や人件費を掛け合わせた“粗利ベース”での管理もしやすくなります。こうした数字に基づくメニュー改定を繰り返すことで、店舗は持続的に収益性を高めていけるのです。
4-3. スタッフ育成とサービス品質の向上
飲食店が儲からない理由のひとつに「スタッフの質」が挙げられます。経営者がいくら戦略を練っても、実際に顧客と接するのはスタッフです。接客態度が悪かったり、調理スキルが未熟で料理が安定しなかったりすると、リピート客の獲得が難しくなります。逆にスタッフ教育に力を入れれば、顧客満足度が高まり、クチコミやSNSでも好意的な評判が広がりやすくなるのです。
スタッフ育成で大切なのは、まず店舗のコンセプトや目標を丁寧に共有すること。「なぜこのメニューを推しているのか」「どんな接客をすることで顧客に喜んでもらえるのか」を具体的に伝えると、スタッフは自分の業務に意義を感じやすくなります。また、マニュアルを整備することも必要ですが、それに固執しすぎると柔軟な対応ができなくなる恐れも。あくまで“顧客に喜んでもらう”ための基礎として位置づけ、スタッフ一人ひとりが創意工夫できる余地を残しておくとよいでしょう。

さらに、人件費の管理も忘れてはなりません。忙しい時間帯に適切な人数を配置し、閑散時間帯は最小限の人員で回すなど、シフト設計を工夫すれば無駄なコストを削減できます。この際、スタッフの希望や働きやすさにも配慮しないと、離職率が高まり、結果として教育コストが増えるデメリットも生じるのでバランスが大切です。最終的に“スタッフがイキイキ働ける環境”こそが、顧客に良いサービスを提供し、売上を伸ばす原動力になります。
4-4. SNSと口コミを意識した集客戦略
現代の飲食店経営でSNSを無視することは、もはや大きなリスクといえます。InstagramやTwitter、Facebook、さらにはYouTubeなどを活用すれば、広告費をほとんどかけずに広範囲の顧客にアプローチ可能です。特にビジュアル重視の料理写真は、SNS上で拡散される効果が高く、いわゆる“映え”を意識した盛り付けや店舗の内装は、集客において強力な武器になります。
ただし、SNSでの発信は単に「美味しそうな写真を投稿する」だけに終始すると、フォロワーが定着しにくいかもしれません。投稿頻度や更新のリズムを整え、メニューの裏話やスタッフ紹介、季節限定のイベント告知など、多面的な情報を発信することが大切です。たとえば、「仕入れ先の生産者を訪ねた動画」をYouTubeにアップし、それをSNSで周知することで、「このお店は素材にこだわっているんだな」というイメージを強く植え付けることができます。

また、SNSだけでなく、実際に来店した顧客の口コミも重要です。最近はGoogleマップや食べログなどの口コミを参考に店舗選びをする人が多いでしょう。接客や料理の質を高め、口コミで高評価を獲得することで、新規顧客が自然と増える好循環を生み出せます。ポジティブなクチコミやSNSでの投稿が広がるほど、広告費を大きく掛けずとも新しい客層にリーチできるようになるはずです。
SNSや口コミを活用した集客戦略とSEOは親和性が高いため、『【完全版】飲食店のSEO対策攻略ガイド!店舗への集客効果や具体的な施策まで徹底解説!』も併せてご覧いただくとよいです。
4-5. 継続的な改善を支えるデータ活用
飲食店が儲かる仕組みを作るには、一度成功した方法を“継続的にブラッシュアップ”していく姿勢が欠かせません。そのための武器となるのがデータ分析です。たとえばPOSシステムを使えば、日々の売上や客単価、時間帯別のオーダー状況などを簡単に数値化できます。これをもとに「週末は何がよく出るのか」「雨の日に注文が減るメニューはどれか」「高収益につながるのはどのカテゴリーか」などを客観的に判断できます。
データはスタッフ教育にも役立ちます。具体的な数字を示せば、スタッフは「この時間帯にはこのメニューが出やすい」「客単価を上げるにはサイドメニューの声かけが効果的」といったことを理解しやすくなるでしょう。売上目標や改善の結果を共有すると、スタッフも自分の働きが経営にどう貢献しているかを実感できます。
さらに、顧客とのコミュニケーション履歴もデータとして蓄積すれば、リピーター管理の精度が高まります。SNSやLINE公式アカウントと連携して、定期的にキャンペーン情報を発信するなど、データドリブンなアプローチを取り入れれば、無駄なコストをかけずに売上アップを狙いやすくなるのです。こうしたサイクルを途切れさせない限り、飲食店は徐々に“儲かる体質”へと変化していきます。
5章. 具体的な店舗経営の改善施策と実践例

5-1. 原価管理の仕組み化
飲食店の利益を左右する最も大きな要素の一つが「原価管理」です。仕入れた食材をいかにロスなく使い切り、最大限価値のある形で顧客に提供できるかが、利益率を高めるカギとなります。たとえば、Aというメインメニューで使った食材の端材や余りを、Bというサイドメニューや日替わりの小鉢で活用すれば、ムダを減らせるだけでなくメニューのバリエーションを増やすこともできます。
このように食材の歩留まりを意識し、過剰在庫を持たないようにするためには、棚卸しや仕入れの記録をこまめに行う習慣づけが大切です。週1回、もしくは日別の売上データを見ながら、どの食材がどれくらい余るのかをスタッフと共有し、翌週の仕入れ量を調整する仕組みを作りましょう。仕入れ業者とのコミュニケーションも重要で、鮮度と価格のバランスを保ちながら、安定的に品質の良い食材を確保できるようにしておくと安心です。
また、季節限定メニューやフェアを企画し、余りそうな食材を積極的に使い切るアイデアを盛り込むのも有効です。こうした小さな工夫の積み重ねが、年間では大きなコスト削減につながり、売上以上に利益を伸ばしてくれる要因となるでしょう。
5-2. 効果的な集客キャンペーン
飲食店の集客は日々の売上を左右する重要なファクターです。SNSや口コミ以外にも、キャンペーンやイベントの活用で新規顧客を呼び込むことができます。たとえば、雨の日に来店した人限定でデザートを無料にしたり、ランチタイム限定でドリンク付きのセットを特別価格で提供したりするだけでも、来店誘導につながる可能性があります。
飲食店で効果的なイベント企画を、『【劇的に集客アップ】飲食店の面白いイベント企画完全ガイド!アイデアの出し方から成功事例まで!』の記事でまとめていますのでご活用ください。
ただし、むやみに割引を増やすと客単価を下げるリスクがあるため、目的を明確に設定しましょう。「新規顧客にまずは店の味を知ってもらう」「雨の日の客足低下を少しでも緩和する」「大人数での利用を増やしたい」など、狙いを定めてキャンペーン内容を考えるのがポイントです。例えば“3人以上のグループなら1人分半額”のように、客数と売上増を結びつけるキャンペーンを打てば、客単価が多少下がっても総売上は増える可能性があります。
また、キャンペーンが成功したかどうかを定量的に測定し、結果を次に生かすことが大切です。集客数だけでなく、食材の消費状況や平均客単価、リピーター化率などをチェックし、損得のバランスを検証しましょう。こうしたPDCAを回すことで、より効果的なキャンペーン施策を見極められるようになります。
5-3. テイクアウト・デリバリーの活用
コロナ禍を機に、テイクアウトやデリバリーの需要が一気に高まりましたが、これは飲食店にとって大きなチャンスでもあります。店内での飲食だけに頼らず、顧客が自宅や職場で手軽にお店の料理を楽しめる仕組みを整えれば、売上の新たな柱を作ることが可能です。

まずはテイクアウトメニューを導入して、持ち帰りが可能な形態や包装を考えてみましょう。ランチタイムで特に忙しいビジネス街なら、手軽に食べられるサンドイッチやカレーなどが人気になりやすいです。オフィス街の方が多い立地では、SNSやLINEで「今日のテイクアウトメニュー」を発信し、その場で注文できるようにしておくと効率的です。
デリバリーに関しては、Uber Eatsや出前館などのプラットフォームを活用するのが一般的です。ただし、手数料がかかる分、原価率や価格設定を慎重に見直す必要があります。また、提供時間や配達エリアによってはオペレーションが乱れやすいため、キッチンやスタッフの負担をよく考慮して導入しましょう。もし調理設備やスタッフ数が十分なら、バーチャルレストランとして別ブランドを立ち上げるのも一つの手段です。いずれにしても、店内飲食と違う新たな売上チャネルを得ることで、飲食店はより安定的に収益を確保しやすくなります。
5-4. スタッフモチベーションを高める取り組み
飲食店では、人件費が大きなコストとなる一方で、スタッフこそがお店の“顔”でもあります。接客スキルや調理技術を高めるには時間がかかり、一度成長したスタッフが辞めると、再び新人教育をする負担が生じます。だからこそ、スタッフが長期的に働きたいと思える環境づくりは、経営者にとって最優先事項といっても過言ではありません。

具体的には、スタッフのアイデアを積極的に取り入れる「メニュー開発会議」を定期的に実施したり、接客コンテストを行って優秀なスタッフを表彰したりと、やりがいを感じさせる仕組みを作るのが効果的です。小さな取り組みですが、「自分が考案したメニューが採用された」「サービス向上のアイデアを提案して評価された」といった経験は、スタッフのモチベーションを大きく引き上げます。
また、シフトの柔軟性や福利厚生、時給・給与面の見直しなど、働くうえでの基本的な要件が整っていることも重要です。飲食業はどうしてもハードな労働環境になりがちですが、少しでもスタッフを労わり、努力を認める姿勢があれば定着率は高まります。結果的に、スタッフの成長が店舗全体のサービス品質を上げ、リピーターの増加や売上拡大につながるという好循環が生まれるのです。
5-5. 顧客ロイヤルティを向上させる仕掛け
飲食店が長期的に儲かるためには、一定数の「常連客」や「ファン」の存在が欠かせません。いかに一度きりではなく、何度も足を運んでもらえるかが安定した売上につながるのです。そこで、有効な手段の一つが“顧客ロイヤルティ・プログラム”と呼ばれる取り組みです。例えば、ポイントカードやスタンプカード、会員限定の割引など、継続的に利用するとメリットを感じられる仕組みを作るのが基本です。

また、SNSやLINE公式アカウントで“特別なお知らせ”を配信すれば、情報を受け取った顧客は「ここだけのお得感」を感じやすくなります。たとえば、会員登録してくれた方限定で誕生日割引を提供したり、新メニューの試食会に招待したりする方法もあります。店舗側からすると、顧客の反応をダイレクトに確認できるため、より戦略的にサービスを改善しやすくなるでしょう。
ファン化しリピーターを増やすためには、メルマガの活用も大切です。『飲食店のメルマガって集客効果あるの?本当に成果が出る配信方法と運用術を大公開!』の記事にまとめていますのでご活用ください。
6章. 集客とコスト管理を両立させるのが大切

6-1. メディアミックスの考え方
飲食店が売上を伸ばすには、複数の集客チャネルを組み合わせる“メディアミックス”の考え方が有効です。SNSで日々の情報発信を行いつつ、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)や地図アプリなどの口コミサイトを徹底的に活用し、必要に応じて地域情報誌への広告やポスティングも行う――こうした多面的な取り組みによって、異なる層の顧客へアプローチできるようになります。
特に近年はSNS利用者の拡大に伴い、若年層やスマホ世代だけでなく、幅広い年代がInstagramやTwitterをチェックするようになりました。ビジュアル重視ならInstagram、手軽さならTwitter、映像で魅力を伝えるならYouTubeといった形で使い分けると、それぞれのプラットフォームに合った顧客とつながりやすいのです。
一方で、地域情報誌や駅周辺の看板、ポスティングなど、オフライン媒体もまだまだ効果的です。特に地元住民を対象に長期的に通ってもらいたい場合は、SNSだけではリーチしきれない年齢層や情報収集手段を持った人たちを逃さないようにしましょう。複数のメディアを重ね合わせ、相乗効果を狙うことが、飲食店の安定経営には欠かせません。

6-2. 雨の日や閑散期の対策
飲食店は天候に左右されやすく、特に雨の日や平日のランチタイム以外など、いわゆる“閑散期”には客足が落ちてしまいがちです。こうした時期の売上ダウンを少しでも緩和するために、あらかじめ対策を講じておくと良いでしょう。たとえば、雨の日限定のサービスや割引を設けるだけでなく、近隣の住民や会社員向けにデリバリー・テイクアウトを強化するという方法が考えられます。
また、雨の日特典をSNSで告知し、「傘立て完備」「タオル貸出しOK」「温かいドリンク1杯無料」など、来店したくなる条件を整えれば、外出すること自体を敬遠しがちな顧客の足を引き留められるかもしれません。特に他店が“雨でガラガラ”な状態のときに、自店だけ特典を打ち出していれば相対的に目立ちやすいのです。
一方で、閑散期には人件費を抑えるシフト設計が必要になる場合もあります。実際に、想定以上に顧客が少ない時間帯にフルスタッフを配置していると、利益どころかコストのほうが大きくなります。人件費を管理しつつ、スタッフが有効に時間を使えるよう、作業マニュアルの更新やSNS投稿の準備、調理の仕込みなどを行うタイミングとして活用するのがおすすめです。
6-3. コストを見直すためのステップ
飲食店のコスト削減と聞くと、まずは「仕入れを安くする」と考える経営者が多いかもしれません。しかし、安易に安い食材を選ぶと料理の質が落ち、リピーター離れを招くリスクが高まります。より効果的にコストを見直すには、以下のステップを踏むとよいでしょう。
- 売上データの把握
まずはPOSレジなどで日々の売上状況をチェックし、メニュー別の人気度や時間帯別の客入りを把握します。 - 主要コストの洗い出し
食材費(原価)、人件費、家賃、光熱費など、大まかにどの項目にいくらかかっているかを一覧化します。 - 優先順位をつける
「このコストを下げると顧客満足度に直結するかどうか」「削減のインパクトが大きいのはどれか」を見極めます。 - 具体的な削減策の検討
仕入れ先の交渉、メニュー数の整理、仕込みやシフトの見直し、電力プランの切り替えなど、具体的な改善策を試してみます。 - 評価と調整
一定期間を設けて結果を評価し、さらに改善する余地があるかどうかを判断します。
この一連の流れを継続することで、“安易なコストカット”ではなく、“必要なコストはかけながらも無駄を省く”というバランスの取れた経営が実現しやすくなります。
6-4. 多店舗展開や新業態へのシフト
飲食店が大きく儲けるためには、多店舗展開や新業態へのシフトを検討するのも一つの選択肢です。一つの店舗で高い売上を出すには限界があるため、看板メニューや経営ノウハウを横展開して2店舗目、3店舗目を出すことで売上を拡大できる可能性があります。
たとえば、ラーメン店として成功した後に、同じ味をチェーン化して別エリアに展開したり、テイクアウト専門のラーメンスタンドを立ち上げたりするのも手です。ただし、多店舗展開を急ぎすぎて人材が不足したり、クオリティが落ちたりするとブランドイメージを損なうリスクがあるので要注意。スタッフ育成や店舗ごとのコンセプトの最適化が必要になります。
将来的にチェーン化やフランチャイズ展開を考えている方は、『飲食店のフランチャイズ開業のすべて!儲かる仕組みから成功の秘訣まで大公開!』も併せてご覧ください。
また、既存のコンセプトを活かしつつ、新業態に挑戦する方法もあります。イタリアンレストランがカジュアルなバルスタイルを始めたり、和食居酒屋がカフェタイムを追加したりなど、“既存の強み × 新たな形態”でシナジーを狙うわけです。新業態で成功すれば、既存店との相乗効果でブランド全体の知名度が上がり、結果的に全体の売上と利益を押し上げられる可能性があります。
6-5. 長期的なリピーター獲得こそが最大の武器
結局のところ、飲食店経営を安定化させ、しっかりと“儲かる”状態を築くためには、リピーター獲得が欠かせません。新規顧客を集めるためには広告費やキャンペーン費用が必要ですが、リピーターは一度そのお店を気に入ってくれればコストをかけずに継続的に売上をもたらしてくれる存在です。
リピーターを増やすには、「顧客が来店するたびに新たな発見や満足がある」仕組みづくりがポイントとなります。季節ごとにメニューを入れ替えたり、常連さん向けのシークレットメニューを用意したり、スタッフが名前を覚えて接客するなど、小さな気遣いが大きく印象を左右します。また、SNSやメールマガジン、LINEなどの公式アカウントで“次回予告”や“試作品モニター募集”などを行い、顧客が参加できる場を作るのもいいでしょう。
さらに、リピーターが新規顧客を紹介してくれるケースも期待できます。ここで「友達連れで来店したら割引」などを設ければ、新しいファンが増えるたびにリピーターが喜び、リピーター同士のコミュニティも生まれます。こうした好循環を生む仕掛けができると、お店は自然に安定的な売上を得られるようになるのです。
7章. ランチ営業・雨天対策・バーチャルレストランなどの売上増加戦略

7-1. ランチ営業のメリットと注意点
飲食店経営で「ランチは儲からない」と敬遠されがちですが、実は活用次第では大きなメリットがあります。ランチタイムは客単価が低めになる反面、客足は比較的安定しやすい時間帯です。ビジネス街では周辺で働く会社員を取り込めれば、定期的に一定の人数が訪れる可能性が高まります。さらに、ランチ営業によって利用したお客さんが「今度はディナーでも来てみよう」と思ってくれれば、夜の売上増にもつながるでしょう。
ただし、ランチ営業を行う際は仕込みの効率やスタッフの配置計画などを丁寧に設計する必要があります。たとえば、夜のメニューと食材を共通化して仕入れをまとめたり、昼と夜で調理の段取りをあらかじめ分けたりするなど、オペレーション上の工夫をすることで人件費や食材ロスを抑えられます。客単価がディナーに比べて下がる分、回転率を意識してメニューを見直すことも重要です。「ランチは短時間で提供、ディナーはじっくり楽しむ」といった時間帯別の特徴づけが成功のコツといえます。
7-2. 雨の日でも売上を確保する仕掛け
飲食店は天候に左右されやすい業種ですが、雨の日を逆手に取って「雨の日キャンペーン」を実施し、来店客に特典を用意する店舗も増えています。たとえば、「雨が降っている間に来店するとドリンク1杯無料」「雨天割で○%OFF」など、わかりやすいインセンティブを打ち出すと、わざわざ足を運んでくれるお客さんが現れるかもしれません。
また、傘立てや置き傘、濡れたコートを拭くタオルなど、雨の日ならではの接客を用意していると、“雨の日でも快適に過ごせるお店”という印象を残せます。こうした気遣いが口コミやSNSで取り上げられると、雨天でもリピーターを獲得しやすいでしょう。さらに、雨の日や台風などで外出が難しい場合に備えて、デリバリーやテイクアウトを積極的にPRするのも手です。「大雨なので今日はお持ち帰り専用メニューに切り替えます」など、柔軟な対応策をSNSで発信できれば、売上の落ち込みを最小限に抑えられます。
7-3. バーチャルレストランの可能性と注意点
バーチャルレストランとは、実店舗を持たずにデリバリー専用ブランドをオンライン上で展開するビジネスモデルです。通常、店舗賃料や内装費などの固定コストを大幅に削減できるため、「飲食店は儲からない」というイメージを覆す新たなチャンスとして注目されています。しかし、事業を成功させるには、オンライン上でいかにブランド力を高めるかが大きな課題です。
バーチャルレストランは集客経路としてデリバリーアプリやSNSをメインにするため、検索対策やインスタ映えする写真のクオリティなど、オンラインマーケティングのノウハウが欠かせません。加えて、デリバリーでは顧客が料理を受け取るまでの体験が重要になります。たとえば、包装のデザインや容器の保温・保冷機能が不十分だと、味や見た目が損なわれやすく、「写真と違う」「温かいうちに食べられない」という不満が出てしまいます。
さらに、実際にはバーチャルレストランといえど厨房が必要であり、シェアキッチンなどを活用する場合は、その使用料や人件費、食材コストなども発生します。プラットフォームごとに異なる手数料形態もあり、利益率を計算する際には細心の注意が必要です。バーチャルレストランで儲かるかどうかは、ほかの飲食業同様に「コスト管理」「マーケティング力」「顧客満足度向上」の3点が要になります。
7-4. 販促とオペレーションを融合させた施策
店舗での来店営業、雨天時の対策、そしてバーチャルレストランのようなデリバリー特化型――これらを組み合わせて展開すると、売上源が分散し、ひとつのチャネルが不調でも全体をカバーしやすくなります。たとえば、実店舗でランチやディナーを営業しつつ、オフピークの時間帯にはデリバリーやテイクアウトに注力する形です。こうすることで、店舗スペースが余っている時間を無駄にせず、有効活用できます。
ただし、複数の形態を同時に運営すると、オペレーションが複雑化しがちです。キッチン内で、店内提供用の料理とデリバリー用の料理を混在させる際は、調理順や人員配置を明確にして混乱を防ぐ必要があります。POSレジやオーダー管理システムの導入を検討し、「デリバリー注文が入ったら即キッチンに通知される」「受け取り待ち時間を正確にモニターできる」といった仕組みを整備しておくと、ミスや顧客不満を減らしやすくなるでしょう。
7-5. 今後の飲食業トレンドを見据えた取り組み
近年では、キャッシュレス決済やスマホ注文など、飲食業界のデジタル化が急速に進んでいます。顧客もスマホで簡単に注文や決済ができる店舗を好む傾向があり、導入の遅れは機会損失につながる恐れがあります。また、新規顧客の獲得にはSNSだけでなくインフルエンサーを活用する動きも増えており、定額制で宣伝してくれるサービスや、飲食店専門の広告代理店を利用する事例が目立ってきました。
さらに、原価管理や人件費管理を自動化・効率化するサービスも続々と登場しています。クラウド連動のPOSレジや在庫管理システムを使えば、経営者はリアルタイムで売上や在庫を把握し、適切なタイミングで仕入れや発注を行えます。こうしたツールの導入にはコストがかかるものの、人件費の無駄や食材ロスを大幅に削減できれば、結果的にプラスになる可能性が高いでしょう。
8章. 「飲食店は儲からない」という考え方についてよくある疑問
- 高い立地コストと低い家賃、どちらを選ぶべきか?
-
高い家賃を払ってでも人通りの多い好立地を選ぶのか、または家賃を抑えて広告やデリバリーで集客を図るのかは悩ましい問題です。ポイントは「ターゲット顧客はどこで何をしているか」を明確化し、その導線上に店舗を置くかどうかを検討することにあります。オフィス街で働く人がメインターゲットなら、通勤路やオフィスビルに近いほどランチ客を見込めます。逆に、ターゲットが若者やインスタ世代なら、賑わう商業エリアに出店したほうがSNSでの拡散が早いでしょう。一方、落ち着いた住宅街で地元密着を狙うなら、家賃の安い物件に出店し、その分を内装や広告費に回す作戦も有効です。
- 人件費を下げるとスタッフ離職率が上がりそう…どうすれば?
-
無理に給与を下げたり、シフトを極端に削ったりするとスタッフのモチベーションを損ない、離職率が高くなるリスクがあります。人件費を下げるのではなく、“生産性を上げる”ことに注目しましょう。たとえば、調理工程を簡略化するセミ調理品の導入、時短レシピの開発、セルフサービスエリアの設置など、スタッフの負担を減らす工夫をすれば少人数でも回転率を維持できます。
また、スタッフ教育に力を入れることで一人あたりの仕事量を増やしながら、適切な評価制度を整えれば、スタッフが「しっかり働いた分、報われる」と感じて離職リスクが下がります。時給や給与以外の部分で働きやすさを向上させる(シフトの融通、福利厚生の充実、表彰制度など)といった取り組みも効果的です。 - SNSを頑張っているがフォロワーが増えない
-
SNS集客においては、投稿内容の質と更新頻度が大きくモノを言います。単に料理写真だけをアップしていると、既存顧客にも新規フォロワーにも“飽き”が生まれやすいです。そこで、ストーリーズやリールを活用して、調理風景やスタッフの個性、食材の産地訪問など多様なコンテンツを提供すると、見てもらえる確率が高まります。
加えて、Instagramならハッシュタグ戦略や位置情報のタグ付け、Twitterならトレンドに絡めた投稿など、それぞれのプラットフォームの特性に応じた工夫を取り入れましょう。フォロワー同士が交流できるキャンペーン(写真コンテストやクーポンプレゼント企画)を実施するのも有効です。SNSは“点”ではなく“面”で攻めることで、少しずつフォロワーが増えていきます。 - テイクアウトとイートイン、どちらをメインにすべき?
-
立地やターゲット層によって最適解は異なります。ビジネス街であれば、ランチタイムのテイクアウト需要が高い一方、ディナーはアルコールを含めたイートイン利用が期待できるかもしれません。住宅街では、主婦や高齢者がゆっくり店内で過ごすケースもあれば、忙しい方が夕食用にテイクアウトを利用するケースもあります。
実際の売上データや顧客からの声を分析し、どの時間帯にどの利用形態が多いのかを把握したうえで、それぞれに合わせたオペレーションを構築するのが定石です。イートインの空き時間にテイクアウトやデリバリーの仕込みを行う、あるいはイートイン客が混雑する時間は配達受付を一時停止するなど、状況に応じて柔軟に切り替える運用も選択肢に入れましょう。 - バーチャルレストランと実店舗を両方やるメリットは?
-
実店舗がある場合、すでにスタッフや仕込み環境、仕入れルートなどのリソースが整っているため、バーチャルレストランを始めるハードルが低くなります。デリバリー専門の新メニューや別ブランドを作り、“店内では提供しない特別メニュー”として展開することで、新たな売上チャネルを得られるのが大きなメリットです。
一方で、オペレーションが煩雑になる恐れがあるので、受付管理や調理順のルールを明確化し、スタッフ間で共有する必要があります。また、バーチャルレストランはプラットフォーム手数料が高めに設定されることが多く、利益率を厳しくチェックしなければなりません。“デリバリーはあくまでサブ”と割り切って、アイドルタイムの売上補填に使うなど、明確な目的を設定したうえで導入するのがおすすめです。
9章. 飲食店を安定して儲かるビジネスに育てるために

9-1. 顧客満足度向上が最優先
最終的に「飲食店が儲かるかどうか」を左右する最大の要素は、顧客満足度です。料理の味や質、接客の心地よさ、清潔感など、お店での体験がポジティブであれば、自然とリピーターになってくれる人が増えます。また、SNSで自発的に情報を拡散してもらえるので、新規顧客の獲得費用を下げながら売上を伸ばせる可能性があります。
一方、コスト削減を優先するあまり料理のクオリティが落ちたり、スタッフが不足して待ち時間が長くなったりすると、急速に評判が悪化してしまうでしょう。飲食店は口コミやレビューの影響が大きく、良い評判も悪い評判も瞬く間に広まります。だからこそ、日々の営業で「スタッフがお客さんを笑顔にするにはどうすればいいか」「料理に手抜きがないか」を確認・改善し続けることが重要です。
9-2. コンサルタントや外部専門家の活用
飲食店経営に行き詰まった場合、経営コンサルタントや外部のプロフェッショナルを活用する手段も検討する価値があります。原価管理のシステム導入やメニュー開発、SNSマーケティングなど、実績ある専門家に相談すれば、自分では気づけなかった問題点や改善策が見えてくることが多いです。
もちろん、コンサルタントへの依頼には費用が発生しますが、そこで得られるノウハウを自店舗で定着させれば、長期的なリターンにつながる可能性は高いでしょう。特に多店舗展開を目指す場合や、業態変更など大きな決断を控えているときには、客観的な視点を取り入れることで失敗リスクを下げられます。経営者一人で抱え込まず、外部のリソースを賢く活用するのも現代の飲食ビジネスでは重要な選択肢です。
9-3. 各種ツール・サービス導入での効率アップ
前章でも触れたとおり、キャッシュレス決済やPOSレジなど、ITツールの活用は飲食店の利益率を高めるうえで欠かせなくなってきています。たとえば、PayPayやクレジットカード決済を導入することで、現金管理の手間やミスを減らし、顧客にも便利に利用してもらえます。会計がスピーディーになることで回転率も上がり、余計な待ち時間が短縮されるメリットが期待できます。
また、POSレジを使えば売上データや在庫管理が自動化され、紙ベースで集計していたころに比べて圧倒的に情報が正確かつタイムリーに手に入ります。このデータをマーケティングやメニュー改定に生かすことで、「いつ何がどれくらい売れているのか」「原価率はどのメニューが低いか」といった判断を数値で下せるようになります。アナログな手法で経営を続けるよりも、管理にかかるコストと時間を削減しやすいでしょう。
その他にも、インフルエンサーマーケティングを専門に扱うサービスや、月額定額で各種広告を依頼できるプラットフォームなど、飲食店の販促活動を支援するツールは増えています。こうしたサービスをうまく使うことで、従来なら不可能だった規模やスピードで顧客にアプローチできるようになり、結果的に費用対効果を高めやすくなるのです。

9-4. 「儲からない」を超えるためのマインドセット
飲食業に限らず、事業を続けていればさまざまな困難や不確定要素に直面します。「飲食店は儲からない」と言われる業界だからこそ、安定した利益を出すためには、経営者が問題を前向きに捉え続けるマインドセットが欠かせません。失敗を経験しても「これで何がわかったか」「次はどう改善すべきか」を考え、“失敗は前進のための材料”と捉えられるよう意識しましょう。
売上が伸び悩んだときこそ、ターゲットを明確に見直したり、新しいメニューを試したり、SNS施策を刷新するチャンスでもあります。人件費が高騰すれば、オペレーションを見直すきっかけになりますし、競合が増えれば差別化を加速させる機会にもなります。常に市場や顧客の動向をチェックし、「この店にしかない価値」を提供しようと挑戦し続ける姿勢こそが、“儲からない”を超えて繁盛店を生み出す最強のドライバーになるのです。
9-5. 飲食業の未来と持続的な成長
近年は働き方改革やデジタル化の流れが加速し、消費者の外食ニーズや食への価値観も多様化しています。テイクアウト・デリバリーの拡大、時短営業の普及、健康志向・ヴィーガンメニューの登場など、飲食業の未来は変化の連続です。だからこそ、柔軟に対応できる店舗は大きく飛躍し、従来の慣習にこだわる店舗は取り残される可能性があります。
これからの飲食店経営では、「いかに顧客とコミュニケーションを図り、要望に応え続けるか」が最も重要なテーマになるでしょう。店舗の物理的な場所を越え、SNSやオンラインイベントで顧客との接点を作ることで、リピート率やロイヤルティを高められます。また、原価や人件費の管理を徹底したうえで、多店舗展開や新業態にチャレンジするなど、持続的な成長を狙う方向性も見えてきます。
10章. 飲食店経営者が抱えやすい疑問とその解決策
10-1. 「忙しくて数字を追う余裕がない。どうすればいい?」
飲食店を経営していると、日々の仕込みや接客、スタッフ管理に追われ、「データ分析まで手が回らない」と感じる方は多いでしょう。しかし、数字を管理しなければ現状を正確に把握できず、改善の糸口を見失いがちです。そこでおすすめなのが、まずは最小限の指標に絞って管理を始めること。たとえば、
- 日別売上
- 日別来客数
- 代表的なメニューの原価率
この3つだけでも、どんな日にどれくらいの売上が上がっているのか、人気メニューの仕入れコストが利益を圧迫していないか、といった基本を把握できます。慣れてきたら、人件費比率や時間帯別売上など細かい指標を少しずつ追加し、スタッフとも共有しながら店舗全体の改善に生かしましょう。
10-2. 「クレームが多いとき、どう対応すればいい?」
クレームが頻発するようなら、店舗として何か根本的な問題を抱えている可能性があります。たとえば、料理の温度が適切でない、接客態度がそっけない、店内が清潔でないなど、視点を変えれば改善できる点が浮かび上がるはずです。クレームを“ありがたいフィードバック”と捉え、原因を客観的に分析するのが第一歩です。
さらに、スタッフがクレーム対応で萎縮しないよう、基本のマニュアルを整備することも重要です。お客様の不満や要望に対して丁寧に耳を傾け、誠意ある対応をすれば、逆に好印象を持ってリピートしてくださるケースもあります。大事なのは「クレームをあしらう」のではなく、「何が顧客の不満につながったのか」を知り、具体的な対策を打つ姿勢です。
10-3. 「多店舗展開はいつのタイミングがベスト?」
多店舗展開のタイミングを判断するポイントは、大きく以下の3つに集約されます。
- 既存店が安定しているか
現在の店舗で、経営者が不在でも回る仕組みができているかどうかが重要です。もしオーナーや店長が1日いないだけで店舗が混乱するようであれば、新店舗を立ち上げても人手不足や教育不足で失敗しやすいでしょう。 - 資金に余裕があるか
開業には初期投資が必要で、すぐに利益が出るとは限りません。1店舗目からの利益が安定し、ある程度の蓄えや融資の目処が立っていると安心です。 - 人材育成プランがあるか
スタッフや店長候補をどう確保し、教育するかは多店舗展開の大きな課題です。優秀なメンバーを引き抜いて2店舗目を運営し、1店舗目を新人だけに任せるような事態は避けたいところ。人材のローテーションや研修制度などを準備することで、複数店舗でもサービス品質が落ちないようにしましょう。
これらを踏まえ、新店舗が既存店の足を引っ張らない状態を作ることが多店舗展開成功のカギです。もしタイミングを誤って拡大すると、いずれ両方の店舗で赤字が増え、破綻のリスクが高まります。
10-4. 「一度口コミ評価が落ちたら挽回は難しい?」
SNSや口コミサイトでネガティブな評価が目立ち始めると、経営者としては大きなショックを受けるかもしれません。しかし、対応次第で状況を好転させることは可能です。まずはクレームや低評価の内容を丁寧に分析し、改善策を実行したうえで積極的に情報発信を行いましょう。たとえば、
- メニューや内装をリニューアルして雰囲気を一新する
- スタッフ教育を徹底し、接客レベルを高める
- 原価率や品質にこだわり、料理のクオリティを引き上げる
- 新しいSNS投稿やキャンペーンで「変わったお店の姿」を周知する
大切なのは、具体的な行動変化を見せることです。一度落ちた口コミ評価を完全に消し去ることはできませんが、「あのお店、最近すごく良くなったらしい」とプラスの話題を積み重ねていけば、新しい顧客層が興味を持って来店してくれる可能性も高まります。

10-5. 「低リスクで始められる飲食ビジネスはある?」
「飲食業は儲からない」イメージが強いからこそ、低リスクな形態を探している方は少なくないでしょう。最近注目を集めるのが「キッチンカー」や「バーチャルレストラン」です。
- キッチンカー
店舗物件の契約や大掛かりな内装工事が不要で、移動式のため出店場所を柔軟に変えられます。その反面、天候やイベント、許可申請などに左右されやすい面も。 - バーチャルレストラン
シェアキッチンや既存店舗の厨房を借りてデリバリー専門ブランドを展開できます。家賃負担が少なく済む一方で、オンライン集客やデリバリー運営のノウハウが必要で、プラットフォーム手数料の影響が大きいという課題もあります。
いずれにしても、低リスク=儲かるわけではないので、客層を明確にし、価格設定や仕入れ、SNS活用など基本を徹底する必要は変わりません。小さく始められるからこそ、早めに仮説検証を回し、事業拡大を狙う際にはしっかりと経験とデータを基に戦略を練りましょう。

11章. 飲食店が安定的に売上や利益を伸ばすために
11-1. 「飲食店は本当に儲からないのか?」再考
ここまで解説してきたように、「飲食店は儲からない」と言われる背景には、初期費用の高さや競合の多さ、外部要因に左右されやすい構造など、数多くの要因が存在します。しかし同時に、飲食店だからこそ大きな可能性を秘めていることも事実です。実際に繁盛店として高い売上と利益を確保し、さらに多店舗展開や新業態へのチャレンジで成功を収めている事例は枚挙にいとまがありません。
結局のところ、飲食店の儲けは「経営者のマインドセット」×「具体的な戦略実行」で大きく変わるのです。コスト管理に注力しつつも料理の質を下げない工夫、SNSや口コミを活かした低コスト集客、スタッフ育成を通じたサービス品質の向上、さらにはバーチャルレストランやテイクアウトといった新しい手法への適応――これらを地道に実行できる店舗は必ず生き残り、やがて地域やジャンルを超えて評判を高める可能性があります。
11-2. 「儲からない」状況を打破するための最初のステップ
もし今、「売上が伸びない」「利益が出ない」「スタッフが定着しない」といった悩みを抱えているなら、まずは以下のポイントを優先して取り組んでみてください。
- 数値データの可視化
POSレジなどで売上と原価、人件費を見える化し、何が問題かを特定する。 - メニュー戦略の見直し
原価率や客単価、回転率を踏まえたメニュー構成に変更し、高収益商品と集客商品を上手に組み合わせる。 - スタッフ教育
経営方針を共有し、具体的な接客マナーや調理技術のマニュアル化を進めてサービスレベルを安定させる。 - SNSや口コミサイトの活用
低コストでも新規顧客へリーチできるよう、定期的かつ魅力的な情報発信を行う。 - 小さな改善の積み重ね
店内の清掃やトイレのアメニティ、雨の日キャンペーンなど、小さなことでも着実に実行して積み上げていく。
これらのステップを繰り返し、PDCAサイクルをまわし続けることで、半年~1年後には大きく経営状況が改善している可能性があります。飲食業は華やかなイメージとは裏腹に地道な努力の連続ですが、それだけに成功したときの達成感やお客様の笑顔は何事にも代えがたい報酬となるはずです。
11-3. 今なら月商500万円を達成するためのノウハウを共有
飲食店の成功例を見ると、月商500万円、年商数千万円の規模に成長した店舗も決して珍しくありません。もちろん立地やジャンル、ターゲット層によって条件は異なりますが、「無理なく、着実に売上を伸ばしていく」ためのノウハウを学ぶことで、同じような成果に近づける可能性があります。たとえば、
- リピーター獲得施策:SNSキャンペーン、LINEアカウントでのクーポン配布、バースデー特典など
- スタッフモチベーションアップ:インセンティブ導入、提案制度、定期的な社内表彰など
- データ分析の強化:客単価や時間帯別売上、人気メニューから不人気メニューまでを可視化し、素早く対策を打つ
こうしたポイントを網羅した「成功マニュアル」を日々実践し、改善していくだけで結果は変わってきます。行動しないまま「飲食店は儲からない」と嘆くより、どんな些細なことでも試し、仮説と検証を繰り返してノウハウを積み上げることが成長の近道です。
11-4. 飲食業で理想の未来を手に入れるために
本記事で取り上げたように、飲食業は参入障壁が低い反面、経営を軌道に乗せるのは決して簡単ではありません。だからこそ、成功を収めた店舗には明確な差別化ポイントや、しっかりと数字を見ながら運営する手腕があります。たとえば、あえて狭いジャンルに特化して「ここでしか食べられない」体験を提供する。あるいは多店舗展開でスケールメリットを生かし、仕入れコストを下げながらブランドを広めていく――やり方は多種多様です。
大切なのは、自分がどういう飲食店を作りたいのか、そして顧客にどんな価値を届けたいのかを明確にし、そこに必要な情報やノウハウをどん欲に取り入れる姿勢です。まだまだ時代は変わり続けますが、食という絶対的なニーズはなくなりません。賢く経営を進め、常に新しいアイデアを取り込む意欲があれば、“儲からない”どころか大きく成長できる余地が十分にあるのが飲食業界の魅力なのです。今がどんな状況であれ、次のアクションを起こすことで未来は必ず変わります。ぜひ自分の店舗の強みを再確認し、今日から試せる施策を始めてみてください。小さな一歩の積み重ねが、やがて「儲かる飲食店」への大きな一歩になるでしょう。