飲食店の忘れ物の正しい対応方法!保管や管理はいつまで?警察に届けるべき?

飲食店の忘れ物の正しい対応方法ガイド!保管や管理はいつまで?警察に届けるべき?
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目次

第1章. 飲食店の忘れ物が重大トラブルに!?

飲食店の忘れ物が重大トラブルに!?

1-1. お客様目線の「うっかり」だけでは片づけられない実情

忙しいランチやディナータイムの最中、ふとテーブルを見ると「財布」が置き去り…という場面に遭遇した経験はありませんか。飲食店における忘れ物は、単なるお客様の“うっかり”で終われば良いのですが、実際には「紛失した」と疑われたり「保管してもらっている間に破損した」とクレームを受けたりと、店舗として大きなトラブルにつながる恐れがあります。

忘れ物対応は、店舗にとって「お客様対応の品質」が問われる瞬間でもあります。うっかり置きっぱなしにした品物をスムーズに返却できれば信頼を得ますが、逆に杜撰な管理で紛失すればトラブルとなり、お店の評判も落としかねません。

筆者が以前運営していた居酒屋でも、深夜帯の来客が多かったためか、意外なほど忘れ物が多発していました。最初は「お客様が取りに来るだろう」と軽く考えていましたが、連絡が来ないうちに紛失リスクが高まるケースも。結果として遺失物として警察に相談する手間が増え、対応に時間を取られて接客が疎かになったこともあります。


1-2. 短時間の回転率が「すぐ立ち去る」意識を生む背景

特にファストフードやランチタイム重視の飲食店では、回転率を高めるために「食べ終わったらすぐ立ち去る」空気が自然に生まれます。この短時間利用が増えるほど、座席周辺をゆっくり見回す余裕がないまま退店するお客様が増え、忘れ物がそのまま置き去りにされるパターンが多発します。

また、お客様の視点では「急いでいる」時ほど置き忘れが増えるのは当然ですが、店舗としては「店内を早く片付けないと次のお客様を案内できない」という事情もあります。この両者のあわただしさが重なることで、遺失物の発見や返却が後回しになり、深刻なクレームへ発展するリスクが高まるのです。


第2章. 飲食店の忘れ物対応は「遺失物法」を正しく理解する必要がある

法的観点から見る遺失物と店舗の義務

2-1. 飲食店が負う法的義務と罰則リスク

飲食店で発見した忘れ物は、単なる善意で保管すればよいわけではありません。法的には「遺失物法」が適用され、発見者(ここでは店舗やスタッフ)には正当な管理義務が生じます。万が一、誤った対応で紛失や破損が起きると、店舗が「過失」を問われ、賠償を請求される可能性もゼロではありません。

私が以前、弁護士に確認したところ、「発見した遺失物を放置していた結果、第三者に持ち去られたり、店舗が勝手に廃棄したりすれば、法的責任が問われる可能性がある」との回答を得ました。特に、財布やブランドバッグなど高額な品物ほど、店舗側の管理責任が厳しく見られます。


2-2. 警察への届け出タイミングをどう設定する?

遺失物法では、発見した品物を一定の条件下で警察へ届ける義務があります。とはいえ、必ずしも「見つけたその場ですぐ警察に届ける」必要があるわけではありません。多くの飲食店では「1週間くらい店内で保管し、持ち主からの連絡がなければ警察へ届ける」運用を取るケースが一般的です。

筆者が都内の警察署に問い合わせたところ、「とくに高価品の場合、早めに届け出てもらうほうが安全。盗難や紛失を疑われる恐れが減るため」との意見でした。一方で、店舗側にとっては「利用直後にお客様が気づいて連絡してくる」事例も多く、即座に警察に持ち込むと手間が増える面もあるでしょう。そこでおすすめなのが、週1回や月2回などの一定ペースを決めて届け出る運用です。


第3章. 飲食店での紛失からクレームまで発展する事例も

忘れ物がトラブルになる要因と具体的事例

3-1. 廃棄ミスや他の客への誤渡しで起こった損害

飲食店の現場で最も多いのが、「紙袋や小物をゴミと誤認して廃棄してしまう」ケースです。私が経営していた店舗でも、書類入りの封筒を丸めた紙ゴミと勘違いし、忙しい時間帯にスタッフが処分してしまったことがありました。運悪くその書類は契約関連の重要書類で、後日「失くされた!」とお客様から強い抗議を受ける結果になりました。

これらの紛失対応は、従業員の確認不足や引き継ぎのミスが一番の原因です。最初に「発見」したスタッフが記録しないまま、次のシフトに移ると管理が曖昧になり、誤廃棄や誤渡しが起こりやすくなります。


3-2. 高額品や個人情報が絡む忘れ物のリスク

財布、スマホ、ブランドバッグといった高額品は、店舗での保管が不十分だと紛失だけでなく盗難にもつながりやすい品物です。あるレストランでは、忘れ物として発見した財布を一時的にレジ横に置きっぱなしにしていたところ、他のお客様が気づかないうちに持ち去ってしまいました。結果として、お店が弁償を求められそうになり、最終的には警察沙汰に。

また、個人情報が入っているスマホを紛失すると、持ち主がデータ漏洩を懸念して店舗に補償を求めるケースも見受けられます。筆者の店舗でも、置き忘れられたスマホが消えてしまった際に「個人情報を悪用されたらお店に責任があるのではないか」と指摘を受けた例がありました。最終的には交番への届け出と協力で解決できましたが、数日間にわたってスタッフや従業員が説明に追われるなど大きな負担となりました。

忘れ物対応から悪評が付いた際の対策を知るには、『【完全版】口コミで悪い評価がついた時の対処方法!返信の仕方から削除依頼まで徹底解説!』の記事も併せてお読みください。


第4章 忘れ物は発見した瞬間が勝負!飲食店がやるべきスムーズな対応フロー

発見直後から返却までの基本的な対応フロー

4-1. 「発見→記録→保管→共有」の基本4ステップ

飲食店で忘れ物を見つけた際、最も重要なのは初動です。ここでの対応を誤ると、後々紛失やトラブルに発展しやすくなります。まず「発見」したスタッフが、品物の種類や場所、時刻を記録し、安全な保管場所に移動し、責任者へ報告するという流れを確立しましょう。店長や管理者が確認していない状態でレジ横に放置してしまうと、他のお客様に誤って手渡したり第三者に持ち去られたりというリスクが高まります。

「発見→記録→保管→共有」の基本4ステッププラス1

多くの飲食店では、レジカウンター付近に一時的に置く習慣がありますが、そこは必ずしも安全な場所ではありません。鍵付きロッカーやスタッフルームの棚など、他人が勝手に触れにくいエリアに移動するのが理想的です。さらに、繁忙時でも「メモや写真で記録を残す」ことで、あとから誰がいつ何を保管したかを追跡しやすくなります。


4-2. お客様から問い合わせが入ったときの迅速な回答法

お客様から連絡が来た際のスムーズな回答と返却方法

忘れ物に気づくタイミングは、お客様が帰宅してから数時間後や、翌日になることがよくあります。連絡を受けたスタッフは、品物の特徴や置き忘れた可能性の高い時間帯・座席などをヒアリングし、店内で保管している忘れ物と照合しましょう。もし該当する物が見つかったら、来店受け取りか郵送などの返却方法を提案します。

ただし、「本当にそのお客様の忘れ物か?」は慎重に確認すべきポイント。筆者が運営する店舗でも、問い合わせを受けた際に「色や形、ブランド名、入っているアイテムの特徴」を細かく聞き取り、合致すれば返却の手順へ進むようにしました。本人確認を疎かにすると、不正受け取りのリスクがあるため注意が必要です。郵送の際には、免許証や保険証などのコピー提出を求めると、トラブルを回避しやすくなります。


第5章. 忘れ物別に見る!飲食店での保管期間と扱い方のコツ!

忘れ物の管理と保管期間の考え方

5-1. 財布・スマホ・ブランド品など高額アイテム

高額品や個人情報を含むアイテム(財布、スマートフォン、ブランドバッグ等)は、飲食店にとってリスクが最も高い忘れ物です。保管時に放置してしまうと、盗難やスタッフの誤廃棄などで店舗側が賠償を負う可能性すらあります。そのため、発見時点で「すぐに責任者に報告」し、鍵付きロッカーや金庫で保管する運用を整えましょう。


5-2. 傘・マフラーなどの放置されやすい小物類

雨の日に集中するのが「傘」の忘れ物です。ビニール傘など安価なものはお客様自身も取りに戻らないことが多いため、店内バックヤードを圧迫しやすい厄介な存在になりがち。そこで有効なのが、定期的に警察署へ届けるスケジュールを設けることです。


5-3. 食べ物・書類・微妙な品物の判断はどうする?

開封済みの食品や飲みかけのドリンク、紙袋に入った書類などは、捨てるべきか保管すべきか迷うケースがあります。衛生的な観点から食品類は早々に廃棄してしまいがちですが、後から「特別なサンプルだった」とクレームを受ける可能性もゼロではありません。最初から「迷ったら捨てずに一定期間保管する」が鉄則です。書類や雑貨類の場合、個人情報が含まれていると本人から連絡が来たときに発生するリスクが大きいです。

アイテム別保管ルール

筆者は一度、「領収書の束が入った封筒をゴミと間違えて廃棄しそうになった」経験があります。ギリギリのところでスタッフが気づき、重大クレームに発展するのを免れました。万が一判断に困る場合、警察へ連絡して相談するのも選択肢の一つです。


第6章 飲食店での忘れ物対応に関するスタッフ教育とマニュアルの整備

店舗全体での管理方法と従業員教育

6-1. 店舗独自のルールブック作成と共有のコツ

忘れ物対応は、一部のベテランスタッフだけが把握していても意味がありません。全員が同じ基準・フローで動けるよう、店舗独自のマニュアルやルールブックを作成し、共有することが非常に大事です。オープン当初や新メニュー導入時と同じように、忘れ物対応も研修の一環として扱いましょう。

飲食店オペレーションの整備で忘れ物トラブルを防ぐには、『飲食店のオペレーションを劇的に効率化!マニュアルの作成方法まで徹底解説!』の記事も併せて参考にどうぞ。


6-2. チェックリストで属人化を防ぎ、事故をゼロに近づける

口頭でルールを伝えるだけでは、人によってバラつきが出やすく、忙しいときほど対応が後回しになることがあります。そこで有効なのが、紙やデジタルのチェックリストを導入し、誰が見ても同じプロセスを踏める状態を作ることです。

  • テーブルリセット時の忘れ物チェック項目
  • シフト交代前後の「保管物リスト」確認
  • 毎週○曜日に警察へ届ける物の分類と担当者の明確化

筆者がコンサルした店舗では、スマホやタブレットで共有できる管理アプリを使って、忘れ物を撮影→クラウド上にアップ→店長やマネージャーがチェックという流れを作りました。結果、「あの忘れ物、どうなった?」というやり取りが減り、問い合わせにも即座に回答できるようになっています。スタッフ個人の判断に依存しないシステムこそ、忙しい飲食店には必要でしょう。


第7章. 飲食店での忘れ物についてのよくある質問

飲食店で忘れ物を防ぐための予防策

7-1. Q.「保管期間はどれくらい設定すればいいの?」

A. 多くの店舗では1週間程度を目安にし、持ち主の連絡がなければ警察へ届け出ます。スマホや財布など高額・個人情報系は早めに警察に届けるのが無難です。


7-2. Q.「本人確認を拒まれたら返却していいの?」

A. 原則NG。色やブランドなど特徴が一致しても、本人確認が不十分だと不正受取のリスクがあります。拒否が続く場合は警察や専門家への相談を検討しましょう。


7-3. Q.「捨てるか迷う品物はどうすればいいの?」

A. 食べ物や開封済み商品など衛生面が気になる物でも、すぐ廃棄せず一時保管が無難。迷ったら警察に相談するのもアリです。


7-4. Q.「他店舗と共有スペースがある場合、誰が管理する?」

A. ショッピングモール内のフードコートや共同フロアなどは、基本的には「発見した店舗」が一次保管し、後日管理者と警察の間で調整します。責任所在を明確にしておくとスムーズです。


7-5. Q.「返送依頼があった場合、送料は店が負担する?」

A. 必ずしも店舗負担でなくてもOK。事前に「着払いで送りますね」と伝えて了承を得るか、状況に応じて店舗が負担するかをケースバイケースで判断しましょう。


第8章. 飲食店の忘れ物対応はサービス品質を高めるチャンス!

飲食店の忘れ物対応はサービス品質を高めるチャンス!

忘れ物対策は、飲食店のサービス品質を高める絶好のチャンスです。忙しさに紛れがちな細かいルールを「マニュアル化」「チェックリスト化」し、スタッフ全員が当たり前に取り組める仕組みを作ることで、大きなクレームを未然に防ぎながら、お客様の安心感と満足度も高められます。

たった一言の声掛けがトラブルを回避し、初動フローや保管ルールの徹底が「この店は信頼できる」という印象を生み出します。店舗経営においては、「忘れ物対策」は単なる業務負担ではなく、顧客満足度とスタッフの自信を高める投資と考えましょう。結果的にリピーターが増え、売上にも良い影響をもたらすはずです。

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この記事を書いた人

鵜飼 あきひろのアバター 鵜飼 あきひろ 株式会社Grill 取締役/店舗経営・集客コンサルタント

2014年にオイシックス株式会社で海外事業を担当後、香港・中国現地法人の社長に就任。
2017年に起業した株式会社Emooveでは代表として事業を成長させ売却・EXIT。
現在は株式会社Grillの取締役COOとして複数の飲食店舗を経営する傍ら、現場目線で成果の出る集客支援に取り組んでいる。
豊富な実践経験と経営視点を活かし、小さなお店の“ファンづくり”をサポートするのが信条。

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