第1章. 自己資金なしで飲食店開業は可能なのか?

1-1. 資金ゼロでの飲食店開業はどこまで現実的か
飲食店を開業するうえで最初に浮かぶ疑問のひとつが、「本当に自己資金なしで始められるのか?」という点です。確かに、テレビ番組やSNSなどで「資金ゼロでラーメン店を立ち上げた!」といった成功ストーリーを耳にすることがあります。しかし、実際に資金調達なし、つまり自己資金なしで開業するのは容易ではなく、リスクも相応に高いのが現実です。
とはいえ、「資金ゼロ」とはいっても、初期費用を徹底的に抑えながら最低限の開業資金を用意し、公的融資や補助金を活用することでスタートラインに立つオーナーは確かに存在します。重要なのは、「運転資金」や「当面の生活費」を含めた総合的な資金計画と、物件や設備への出費をどう最小化していくかという戦略です。
開業経験者の声:最初の敷金礼金をどう用意した?
一方で、資金不足のため生活費が確保できず、オープン後すぐに資金ショートしてしまう人も見受けられます。そうした人は「店の家賃と光熱費、仕入れの支払いが重なり、1か月で貯金が底をついた」という声を上げています。
1-2. 飲食店開業で資金以外に必要な要素とは?
自己資金が少ない状態で飲食店を始める場合、物件探しの方法や集客戦略、事業計画など、お金以外の要素が成功を左右します。とくに、限られた資金を効率よく使うためには「どの立地で、どんなコンセプトの店を作るか」を徹底的に考え抜くことが大事です。
物件選びで費用を圧縮
- 自己資金なしでも、良い居抜き物件を見つけることができれば、内装工事費を数十万円単位で削減できます。物件によっては厨房設備やカウンター、客席のテーブル・椅子までそのまま使えるケースもあるでしょう。
- スケルトン物件であっても、極力シンプルな内装にして「素材感」を活かす形なら、過度なデザイン費を抑えられます。DIYで仕上げる方法も選択肢のひとつです。
集客戦略と運営ノウハウ
- 資金が少ないからこそ、広告費をかけずSNSや口コミで話題を作る工夫が求められます。オープン前からInstagramやTwitterで店のコンセプトやメニューの魅力を発信するオーナーも増えています。
- 開業後の運営ノウハウとして、メニュー構成を限定して食材ロスを最小化する、忙しい時間帯だけアルバイトを投入して人件費を抑える、など細かな工夫が安定経営に直結します。
第2章. 飲食店開業に必要な資金の種類と支払いタイミング

飲食店の開業には、思った以上に多くの費用がかかります。「開業資金」とひとくくりに言っても、その内訳は細分化されるため、まずはどんな資金がどのタイミングで必要となるのかを正確に把握しておきましょう。本章では、①物件取得費、②内装工事費・設計費、③厨房設備・備品、④運転資金、⑤生活費、⑥その他(フランチャイズなど)といった6つのカテゴリーに分け、支払いの流れを解説します。
2-1. 物件取得費(敷金・礼金・仲介手数料など)
開業資金の中でまず大きくのしかかるのが、物件契約時に支払う初期費用です。敷金・礼金・保証金・仲介手数料などが代表的で、地域や物件オーナーによって呼び名や金額が異なる場合もあります。
- 敷金/保証金:家賃の滞納や原状回復に備えてオーナー側が預かる費用。退去時に全額あるいは一部が返還されるケースが多いです。
- 礼金:オーナーへの謝礼金として支払うもので、一般的には返還されません。地方や物件によってはゼロ円の場合もあり。
- 仲介手数料:不動産会社が仲介に入る場合に支払う費用で、家賃1か月分程度が相場です。
支払いのタイミング
多くの場合、契約締結時にまとめて支払う必要があります。「家賃◯か月分+仲介手数料◯か月分+礼金◯か月分」という形で一気に数十万円~100万円近くになることも。
資金不足、特に自己資金なしだと契約自体を結べないため、まずはここの費用をどう捻出するかが大きな壁になります。
2-2. 内装工事費・設計費

物件を借りた後に必要なのが、店舗として整えるための内装工事や設計費です。内装費は物件の状態次第で大きく変わります。とくにスケルトン物件の場合、床や壁、天井、換気・排水などをゼロから作り込むため、工事費が高額になりがちです。
- 居抜き物件の内装:前の店舗が利用していた設備や内装を再活用できるため、費用を抑えやすい半面、老朽化部分の修繕が必要だったり、撤去義務が契約書に記載されている場合もあるので注意しましょう。
- DIYの範囲:壁のペンキ塗りや簡単な装飾などであれば自力で行い、工務店への依頼範囲を減らすことが可能です。防火対策や電気・ガス工事はプロに任せるのが基本です。
筆者の実践談:内装費の現実
2-3. 厨房設備・備品購入費
飲食店には、調理に必須の厨房設備(冷蔵庫、製氷機、ガスレンジ、オーブンなど)がそろわないと始まりません。新品で一気に買いそろえると高額になりがちですが、中古やアウトレット品を賢く活用すれば半額以下に抑えられるケースもあります。
- 新品 vs 中古の違い:新品は性能保証や修理サポートがついていることが多い反面、費用が高い。中古品は初期投資が少なくて済むが、保証期間やメンテナンスの不安が残る。
- リサイクルショップの狙い目:閉店した店舗がまとめて処分した厨房機器が安価で出回る場合がある。内見可能なショップを選び、動作確認をするのがおすすめです。
設備費の支払いタイミング
多くは契約時または納品時に支払う形となります。一部リース契約にするオーナーもいますが、リースの場合は毎月の支払いが生じるため、「ランニングコストを重視したいのか、一括で設備を持ちたいのか」を検討して決めると良いでしょう。
2-4. 運転資金(仕入れ・光熱費・人件費など)
開業前の初期投資だけでなく、開業後の仕入れや光熱費、人件費をまかなうための資金も不可欠です。特に初月や2か月目は売上が安定しにくく、仕入れ費が先にかかるのに対して売上が入金されるのは後になるため、キャッシュフローがカツカツになりがちです。
- 仕入れ費:食材の発注サイクルによって費用が先行する。とくに生鮮食品を扱う業態は在庫管理を慎重に行わないとロスが増える。
- 人件費:アルバイトやパートを雇用する場合、時給や社会保険、労働保険の負担が発生する。開業初期はオーナー1人や家族で回すケースもあるが、繁忙時には助っ人が必要な場合もある。
- 光熱費:飲食店は冷蔵庫や換気扇を常に稼働させるため、家庭の光熱費よりも高くなる傾向にある。
また意外と気にしない人が多いのが経費です。ここを削減する方法としては、『飲食店の経費削減完全マニュアル!すぐに効果が出るコスト最適化のアイデアをすべて大公開!』の記事でまとめていますので参考にどうぞ。
2-5. 当面の生活費
意外と見落とされがちなのが、オーナー自身の生活費です。飲食店を開業したからといって、すぐに安定した売上を得られる保証はありません。むしろ最初の数か月は赤字になりやすく、その間の家賃や食費、通信費などをどう確保するかが大きなポイントになります。
- 「自己資金なしの状態では、開業後3~6か月の無収入期間をしのぐ貯蓄」を勧める専門家は多いです。筆者の知り合いの居酒屋オーナーは、`自宅の部屋をシェアハウスにして家賃収入を得ながら`開業初期を乗り切ったという極端な例もあります。
- 生活費と店舗運営資金が一緒になってしまうと、会計管理が曖昧になり、気づいたときに借金が膨らんでいたというケースもあります。個人用の銀行口座と店舗用の口座を分けるなど、明確に区別するのが望ましいでしょう。
2-6. その他(フランチャイズ加盟金・ロイヤリティなど)
もしフランチャイズ(FC)方式で飲食店を始めるなら、本部へ支払う加盟金や保証金、研修費、ロイヤリティといったコストも想定しなければなりません。一般的にフランチャイズはブランド力やノウハウを活用できる半面、本部への支払い負担が続くため、自己資金なし、ゼロに近い場合ほどは事前に条件をよく確認する必要があります。
- 加盟金:最初に支払う一時金で、数十万~数百万円と幅があります。
- ロイヤリティ:毎月の売上に対して一定%を本部に支払う形が主流。売上規模が大きくなるほど本部への支払いも増える点に留意しましょう。
自己資金ゼロから開業を目指す方に、フランチャイズ開業の全容を解説した『飲食店のフランチャイズ開業のすべて!儲かる仕組みから成功の秘訣まで大公開!』記事もぜひご覧ください。
第3章. 飲食店を自己資金なしで開業する際の8つの資金調達手段

上章で見たように、飲食店の開業には物件費や内装費、厨房設備、運転資金、そして生活費など、まとまった資金が必要です。自己資金なしで飲食店を開業するには、なんらかの形で資金を調達しなければなりません。本章では、代表的な8つの調達手段を順に紹介します。
3-1. 日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫は、国が出資する金融機関で、新創業融資制度など創業者向けの商品を用意しています。自己資金が少なくても利用しやすい仕組みになっており、開業資金の調達先として多くの飲食店オーナーが検討します。
- メリット:金利が比較的低く、担保や保証人がない場合でも相談の余地がある。
- デメリット:事業計画書や面談での説得力が必須。書類準備に時間がかかる。
審査のポイント
担当者は、「売上見込みが現実的か」「返済の余力があるか」を最も厳しく見ます。とくに自己資金なしで申し込む場合は、「なぜ自己資金がないのか」「不足分はどうカバーするか」を説明できないと審査が厳しくなるでしょう。
3-2. 信用金庫からの融資
信用金庫は地域密着型の金融機関です。事業者向けの小口融資も多く扱っており、地元の経済活性化を目的として、比較的親身に相談に乗ってくれるケースも見られます。
- メリット:支店長や担当者が地域事情に詳しく、地元商店街などとのつながりを紹介してくれることもある。
- デメリット:審査基準は金融機関によって異なるため、自己資金なしの場合は保証人や担保が必要となる場合あり。
3-3. 制度融資(自治体や商工会議所の支援)
自治体や商工会議所が提供する制度融資は、公的機関が金融機関の融資を保証したり、利子の一部を補給してくれる仕組みです。地域によっては「空き店舗活用支援」「創業支援補助金」など独自の制度が用意されているため、まずは地元の商工会議所や信用保証協会に問い合わせてみるとよいでしょう。
- メリット:利子補給や返済条件の優遇がある場合があり、結果的に借りやすくなる。
- デメリット:申し込み時期や募集枠に限りがあったり、書類手続きが煩雑になりやすい。
3-4. カードローン
「すぐに数十万円単位でお金が必要」という場合、カードローンを活用する選択肢もあります。大手消費者金融や銀行カードローンであれば、最短即日で借り入れが可能なケースもありますが、金利は高めです。
- メリット:審査結果が早い、無担保・保証人不要で融資が受けられる。
- デメリット:年利10%~15%以上になることも珍しくなく、長期的に借りると利息負担が大きい。
カードローンに依存しすぎると、返済が追いつかなくなり経営を圧迫します。緊急時のつなぎ資金として短期的に利用する程度に留めましょう。
3-5. 第三者からの出資
エンジェル投資家や投資ファンドなど、第三者から出資を受ける方法もあります。出資を受けると「返済義務」はない一方、経営への口出しや配当の要請が出てくる可能性がある点には注意が必要です。
- メリット:負債ではなく出資金なので、返済が必要ない。事業拡大の際に追加出資を受けられる可能性がある。
- デメリット:店舗経営方針やメニュー構成などに投資家が意見を言うこともあり、オーナーの自由度が下がる場合がある。
3-6. クラウドファンディング

近年、飲食店開業で注目されているのがクラウドファンディングです。店舗のコンセプトやメニューへの思いをインターネット上で発信し、賛同してくれる支援者から資金を集めます。リターンとして食事券や限定グッズを提供する「購入型」が主流です。
- メリット:支援者が初期顧客になるため、オープン時からファンを抱えられる。宣伝効果も高い。
- デメリット:目標額に達しないと集まった資金が受け取れない方式(All or Nothing)だとリスクがある。事前のPRやページ作りに手間がかかる。
3-7. 資産の現金化
もし自宅や車、不要なブランド品などを保有していれば、資産の現金化で初期資金を作る方法もあります。大きな金額が必要な場合、不動産を売却またはリバースモーゲージを検討する人もいます。
- メリット:借金にならないので、返済リスクがない。
- デメリット:大事な資産を失うので、経営がうまくいかなかった場合のセーフティネットが減る。
3-8. 家族や知人からの支援
最後に、家族や友人・知人から資金を借りたり出資してもらう方法があります。大きな利子が発生しにくい一方で、人間関係のトラブルリスクには注意が必要です。
- メリット:融資審査や担保が不要で、条件を柔軟に設定しやすい。
- デメリット:口約束だけでお金をやり取りすると後々トラブルになりがち。書面で返済計画を明確にしておくのが望ましい。
第4章. 飲食店開業のコストを徹底的に抑える具体的な方法5選

飲食店を開業するうえで、初期費用をどれだけ削減できるかは極めて重要です。とくに自己資金ゼロに近い状態でスタートするなら、無駄な出費を抑えるノウハウを知っておかないと、開業後すぐに資金ショートするリスクも高まります。本章では費用削減に直結しやすい5つの方法を紹介し、各手法の特徴や注意点を整理します。
4-1. 居抜き物件を探す
前テナントの内装や調理設備を流用できるため、内装工事費を最小限に抑えられます。物件によっては机や椅子がそのまま残されているケースもあり、開業スピードを上げつつ費用をカットできるのが魅力です。ただし、厨房機器が老朽化している場合や前テナントの内装がコンセプトに合わない場合は、結局追加工事が必要になることもあります。契約前に現地確認を入念に行い、修繕義務や撤去費用の有無を不動産会社やオーナーと確認しておきましょう。
4-2. 中古・アウトレットの設備を調達する
調理台や冷蔵庫、製氷機など業務用の新品機器は高額です。そこでリサイクルショップやネットオークション、アウトレット品を活用すれば、一度使われた型落ち品でも十分性能を発揮するケースが多いです。ただし、購入後のメンテナンスや保証の範囲は必ずチェックしてください。故障時に修理代がかさむと、結果的に新品購入より割高になってしまう可能性もあります。
4-3. スケルトンを活かす
スケルトン物件は何もない状態で借りるため、一見すると工事費が膨大になりがちです。しかし、逆手に取ってコンクリ打ちっぱなしの壁や天井をインテリアの一部として活用すれば、意外なほど内装費を削減できます。厨房や排水設備の工事は必要ですが、内装仕上げを最小限にとどめることでデザイン性とコストダウンの両立も可能です。
4-4. DIYで内装を施す
壁のペンキ塗りや簡単な家具の組み立てをオーナー自身で行うと、人件費が減り工事費全体を抑えられます。塗料代や工具代だけで済むので、業者見積りの数分の一になることも。ただし、防火区画やガス管工事など専門性がいる領域はプロに任せるのが原則。DIY範囲を明確にしておかないと、品質上の問題や後々の修繕トラブルにつながります。
4-5. 補助金・助成金制度を活用する
国や自治体が実施する創業支援策には、内装費や設備費の一部を補助する制度があります。商工会議所や地方自治体のサイトを確認し、自分の事業計画が当てはまるかチェックしてください。申請書類や経営計画を作り込む手間がかかりますが、採択されれば大きな財政的メリットを得られます。

実例:開業のコスト抑えた話
開業準備だけでなく、その後の販促戦略についても知っておく必要があります。『【完全版】飲食店の販促方法をすべて大公開!売上や来店効果の高い手法を徹底解説!』の記事で詳しく解説しています。
第5章. 資金が確保できたらコンセプト設計と事業計画

コストを抑えるだけでなく、開業後にしっかり売り上げを確保しなければ経営は成り立ちません。自己資金なし、ゼロに近い場合ほど、広告費や運転資金に余裕がないため、明確なコンセプトと計画性が大きな武器になります。
5-1. 差別化コンセプトが集客を左右する
飲食店市場は競合が多く、特に駅前や繁華街で同ジャンルの店が乱立している場合、独自の強みがないと埋もれがちです。「何を、どのように、誰に提供するか」を明確化することで、SNSや口コミでの拡散力も高まります。たとえば、「地元食材に特化」「ヴィーガンメニュー専門」「昭和レトロ風内装」など、店のテーマや世界観を打ち出すだけで“行ってみたい”と思わせるきっかけを作れるでしょう。
差別化のポイントとしては、
- 料理そのもの(オリジナルレシピや地産地消)
- 店の雰囲気(内装デザインや音楽)
- 接客スタイル(セルフ式、対面調理など)
の3つを掛け合わせるのがおすすめです。地域のターゲット客層との相性を考えて、他の店が真似しにくい要素を見つけ出しましょう。

5-2. 事業計画書で融資と経営を安定させる
開業後に安定経営を実現するには、事業計画書の存在が欠かせません。金融機関から融資を受ける際も、「具体的な売上予測や損益分岐点の計算ができているか」「ターゲットと集客方法が明確か」を厳しく見られます。
- 売上予想:1日あたりの客数、客単価、月間売上見込を算出。立地条件や営業時間を踏まえて現実的な数字を設定します。
- 経費試算:家賃・人件費・光熱費・仕入れ費などの固定費と、メニューごとの原価率をまとめ、損益分岐点を把握しておきましょう。
- 資金繰り計画:開業後の運転資金が不足しないよう、開店直後の現金フローを想定しておくと安心です。
開業準備と同時に、ブログを活用した集客ノウハウを知っていると経営安定化がよりスムーズに目指せます。『飲食店のブログ集客の方法を大公開!来店や売上に繋げる上手な活用方法!』の記事で詳しく解説しています
第6章. 開業前の手続き:保健所・消防・税務周りをスムーズに

飲食店を開業するには、衛生管理や防火対策など、他業種よりも厳しい法的要件をクリアしなければなりません。各種届け出を怠ると開店を許可されず、家賃や準備費用だけがかさんでしまう恐れがあります。本章では、最低限押さえておきたい手続きとその流れをまとめます。
6-1. 食品衛生責任者・防火管理者、これがないと営業NG
- 食品衛生責任者:店舗ごとに1名以上の配置が義務づけられ、各自治体の講習会(1日程度)を受講すると取得できます。日程が限られており、早期に申し込まないと希望日が埋まるリスク大。
- 防火管理者:火を扱う飲食店は防火管理者の選任も基本的に必須です。建物の延べ面積や用途によって講習区分が変わるため、消防署に事前相談するとスムーズです。
これらが未取得のままだと営業許可申請すら受理されないケースもあり、オープン時期がズレ込む要因になります。
6-2. 営業許可や深夜酒類提供の届出、税務関係の流れ
- 営業許可申請(保健所):店舗の平面図や設備図面、食品衛生責任者の資格証などを揃え、保健所に提出。店舗の実地検査で基準を満たせば許可証が発行されます。
- 深夜酒類提供の届出(警察):居酒屋やバーなど0時以降にお酒を提供する場合は、警察への届出が必要です。違反すると処分対象になる可能性があるので注意してください。
- 税務署・自治体への開業届:個人事業として始める場合は開業から1か月以内に税務署へ、法人形態なら法務局の登記手続きなどが必要。
- 労働保険・社会保険:従業員を雇用する場合は雇用保険や労災保険への加入手続きを行い、人数や賃金条件によっては健康保険・厚生年金も義務となります。

実例:手続きの落とし穴
第7章. 自己資金なしの飲食店開業に関してよくある質問
7-1. Q1:フランチャイズで本当に開業費ゼロってあるの?
A. 広告では「初期費用ゼロ」など魅力的な文言を見かけますが、実際には加盟金やロイヤリティ、本部への広告費分担などが別途必要になるケースが大半です。加盟金ゼロのプランを用意している本部もありますが、代わりにロイヤリティが高めに設定されていることもあり、最終的には「完全なゼロ」とはほど遠い出費になることがあります。フランチャイズ契約を検討するなら、契約書に明記された各種費用や支払い条件をしっかり読み込み、複数社を比較して総額やランニングコストを把握してから決断するのが賢明です。
7-2. Q2:融資審査に落ちたらもうチャンスはない?
A. 一度落ちたからといって完全に道が閉ざされるわけではありません。とくに日本政策金融公庫や銀行などは、事業計画書の内容や売上根拠、自己資金の定義が甘いと判断されると不採択になる可能性が高いですが、そこを練り直して再申請する人は少なくありません。たとえば、間借り営業やキッチンカーで実績を積んだ売上データを示すと再評価されやすくなる傾向があります。また、税理士や経営コンサルタントにアドバイスを求めると、計画書のブラッシュアップに役立つため、再挑戦へのハードルも下げられます。
7-3. Q3:カードローンで設備資金を賄うのはアリ?
A. 短期間のつなぎ資金としては選択肢になりますが、年利10〜15%程度になることが多いため、長期利用すると利息負担が大きく経営を圧迫しかねません。すでに公的融資の審査待ちで、一時的に内装費や仕入れ費をカバーするだけなら有効ですが、その間に売上が十分に立たなかった場合、返済スケジュールが狂うリスクも伴います。可能な限り他の低金利融資や制度融資を検討し、カードローンはあくまでも「緊急時の保険」的な位置づけにとどめるほうが安全です。
7-4. Q4:親族や友人からの支援はトラブルにならない?
A. 人間関係を前提にした借入れは、金銭条件が曖昧になりがちでトラブルの火種にもなりやすいです。「家族だから大丈夫」「友達だから口約束でOK」と思いがちですが、後々返済時期や利息の有無で揉めるケースが少なくありません。借用書を作成し、金額・返済計画・利子などを明文化することが必須です。また、融資ではなく出資として扱う場合は経営への口出しや配当の問題も出るため、どのような形で資金が提供されるのかを最初にはっきりさせておきましょう。
7-5. Q5:居抜き物件だけ選べば内装費は安く済むの?
A. 居抜き物件は前テナントの設備や内装を流用できるため、たしかに大幅な工事費削減が見込めます。しかし、老朽化した厨房機器や空調設備をそのまま使うと故障リスクが高まり、修繕費が想定外にかかることも珍しくありません。また、以前の業態と違うレイアウトが必要なら、結局大がかりな改修が必要になる可能性もあります。契約前の内見で入念にチェックし、修繕義務や撤去費用の負担についても不動産会社やオーナーに確認してから判断してください。
7-6. Q6:DIYで全部内装をやるのはOK?
A. 塗装や簡単な什器の組み立てなどはDIYでコストを下げられますが、防火区画や換気ダクト、電気工事などは専門知識が不可欠です。無理に全てDIYを行うと、法的基準を満たせなかったり、後から修繕費ややり直し費用が膨れ上がるリスクがあります。内装全般をDIYで行う場合は、消防や保健所の基準を十分把握したうえで、必要に応じてプロに協力を仰ぐのが理想です。大掛かりな工事とDIY部分を明確に線引きしておきましょう。
第8章. 結論!自己資金なしでも飲食店開業はできる!
自己資金なしで飲食店を開業するのは一筋縄ではいきませんが、物件選びや費用削減策、公的融資や助成金の活用などを組み合わせれば、初期費用を大きく抑えることも十分に可能です。とはいえ、開業後の売上確保と運営の安定がなければ、せっかくの開業が失敗に終わる危険もあります。
少ない資金だからこそ、しっかりとした事業計画やリスク管理を行い、何よりも「小さく始めて徐々に拡大する」戦略を意識しましょう。大規模投資が難しいからこそ、SNSや地元連携、間借り営業など柔軟な手段が生まれるのも事実。まずは最初の一歩を踏み出し、そこで得た情報と実績を足がかりに、安定した飲食店経営を目指してください。