QRコード注文システムのやり方と手順を解説!簡単にできる導入方法からメリット・デメリットまで!

QRコード注文システムのやり方と手順を解説!簡単にできる導入方法からメリット・デメリットまで!
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目次

1章. そもそもQRコードオーダー(注文)とは?

QRコード注文の概要と飲食業界の接客力

1-1. 飲食店の接客業務と接客力の重要性

飲食店における接客業務は、お客様を席に案内し、注文を取り、料理を提供して会計を済ませるという一連の流れを担当するだけではありません。実際には、お客様が来店した瞬間から退店するまでの体験すべてをカバーするのが接客です。たとえば「笑顔での挨拶」や「声掛け」、さらには「オーダー内容の正確な把握」「おすすめメニューの提案」なども含まれます。こうした総合的な対応が店舗のイメージを左右し、顧客満足度やリピーター数を大きく左右します。

接客力が高い店舗は、一度訪れた顧客が「また来たい」と思うほどのサービスを提供できるため、売上の安定や口コミでの集客につながります。逆に接客力が低い場合は、いくら料理がおいしくても、スタッフの態度やオーダーミスなどで不満を抱えさせてしまい、二度と来店してもらえない可能性が高まります。飲食店にとって接客力は、店舗の成長やブランド向上に欠かせない要素といえるでしょう。

1-2. アンケートから考える理想の接客

多くの飲食店が実施している顧客アンケートでは、「スタッフが親切であること」や「注文対応がスムーズであること」が高い評価を得るポイントになりやすいと報告されています。一方で、「メニューの説明不足」「スタッフとのコミュニケーション不足」などが不満につながりやすい項目としてよく挙げられます。

こうした結果を踏まえると、理想の接客は「お客様に寄り添い、必要なときだけ声をかける」「間違いのないオーダー対応」を実現することに尽きるといえます。近年ではQRコード注文のようなシステムを導入し、スタッフが煩雑な作業から解放されることで、よりきめ細やかな接客に専念できる体制を作る飲食店が増えています。テクノロジーを活用して接客の質を保ちつつ、顧客の快適な食事体験をサポートするのが理想的な形です。

1-3. 飲食業界の現状とDXの必要性

飲食業界では人材不足が深刻な課題になっています。特にピークタイムには、スタッフが少ないことで対応が追いつかず、注文ミスや接客の質が低下しやすい状況が生まれます。そこで注目されているのが、デジタル技術を活用した業務効率化、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れです。接客を全面的に機械化するわけではなく、QRコード注文やタブレットオーダーのようなシステムを取り入れ、人的サービスと連携させることで無理のない作業フローを構築します。

DXによってスタッフの業務負担が軽くなれば、テーブルを回る回数に余裕が生まれ、顧客の要望に素早く対応する時間ができます。さらに、売上や在庫を管理するPOSシステムともシームレスに接続できれば、店舗全体のオペレーションがスムーズに回り、正確なデータをもとにした経営判断も可能になります。こうした取り組みが、今後の飲食店運営には不可欠だと考えられています。

1-4. QRコード注文(QRオーダー)の基本

QRコード注文(QRオーダー)とは、テーブルやカウンターに貼り付けられたQRコードを、顧客がスマホのカメラや専用アプリで読み取ることでメニューを表示し、オーダーを完結させるシステムです。紙のメニューを使わずにスマホ画面から直接注文が送れる点が最大の特徴で、セルフオーダーの一種として注目されています。

操作の流れとしては以下のようになります。

  1. テーブルのQRコードをスマホで読み取る
  2. 専用サイトやアプリ画面にメニューが表示される
  3. 注文したい商品をタップして数量やオプションを選ぶ
  4. 確定ボタンでオーダーを送信

このとき、オーダー情報はリアルタイムでキッチンや店舗システムに連携されるため、スタッフが手動で入力する手間を省けます。さらに、写真付きメニューやおすすめ商品をわかりやすく提示する機能を備えたシステムもあり、顧客にとっては直感的にオーダーしやすいメリットがあります。

1-5. セルフオーダーとテーブルオーダーの違い

同じように「テーブルで完結する注文システム」としてタブレット端末や卓上の注文端末を置くスタイルも存在します。これは一般的に「テーブルオーダーシステム」と呼ばれ、セルフオーダーの一種ではありますが、店舗側が端末機器を用意する点がQRコード注文との違いです。

QRコード注文の場合、顧客自身のスマホを使うため、店舗は大規模な機器投資をしなくて済みます。一方、卓上端末を設置するタイプは、お客様のスマホ利用に左右されないという強みがあります。ただし端末のメンテナンスや故障対応、清掃などの手間が発生します。どちらを選ぶかは、店舗の予算や客層、導入の目的によって大きく異なるでしょう。

1-6. QRオーダーとタブレットオーダーの比較

タブレットオーダーは端末を店舗側で一括して管理し、統一されたUIを提供できる利点があります。特にファミリーレストランや大手チェーンなどでよく導入されています。メニュー画面が大きく、動画で料理説明が表示できるシステムなど機能面が豊富なケースも多いです。

一方、QRコードオーダーの利点は「店舗負担の軽減」と「更新やカスタマイズが容易」な点にあります。店舗側は大型の専用機器を購入する必要がなく、メニューを変更するときも管理画面でデータを更新するだけで済むことが多いです。また、顧客が自分のスマホを使用するため、操作に慣れているケースが多く、導入初期からスムーズに受け入れられる場面も多いようです。

1-7. QRコード注文の仕組みと社会的背景

QRコード注文のアイデア自体は以前から存在していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に急速に広がりました。非接触のニーズが高まり、「対面での会話を減らしたい」という顧客心理が後押ししたのです。さらに、「スタッフが店内を動き回る負荷を減らしたい」「人手不足をテクノロジーで解消したい」といった店舗側の要望ともマッチし、利用が拡大しています。

社会全体がキャッシュレス化やスマホ決済に慣れてきている今、スマホでQRコードを読み取り、オーダーから決済までを一気通貫で完結させる仕組みはますます注目を集めています。特に飲食店では、回転率アップや人的ミスの軽減など大きな導入メリットがあるため、今後も普及が進むと見込まれます。


2章. 飲食店がQRコード注文を利用するメリット

QRコード注文を利用するメリット

2-1. 業務効率化・スタッフ負荷軽減

QRコード注文を導入する最大のメリットのひとつは、スタッフの負担を大幅に軽減できることです。従来、ホールスタッフはテーブルを回り、手書きやハンディ端末で注文を取り、キッチンに伝票を回す作業が必要でした。しかし、QRコード注文によってオーダー情報がシステムに直接送られるため、その手間が省けます。結果として、スタッフはお客様への接客や料理の提供に集中しやすくなり、接客品質の向上にもつながります。

また、QRコード注文では注文ミスも減るため、クレーム対応が少なくなる点も見逃せません。スタッフの書き間違いや聞き取りミスが激減し、顧客に対して安定したサービスを提供できます。さらに、混雑時にスタッフがバタバタ走り回る必要が減るため、ホール内の安全確保や事故防止にも寄与します。

2-2. 売上拡大とリピーター集客

売上拡大とリピーター集客

セルフで注文を行うメリットとして、顧客のタイミングで追加オーダーを入れやすいという点が挙げられます。スタッフを呼びづらい場合でも、スマホからサッと注文できるため、追加ドリンクやデザートの注文が増える傾向が確認されています。これにより、客単価の向上が期待できます。

また、QRコード注文のシステムには、期間限定メニューを目立つ位置で表示する機能やおすすめ商品をポップアップで提案する機能を搭載していることも多いです。こうした機能を活用すれば、季節限定のアイテムや店舗独自のセットメニューを効果的にアピールでき、売上拡大につながります。さらに、オーダーした情報をもとにクーポンを発行し、次回の来店を促す仕組みを作れば、リピーター増加にも貢献するでしょう。

メニュー写真でQRオーダーの訴求力を高めたいけど良い写真が撮れないと言う方は専門業者に依頼することをおすすめします。『飲食店が写真撮影を依頼する際の業者の選び方のコツと注意点!料理撮影に強いおすすめな会社も厳選してご紹介!』の記事にまとめていますので、併せて確認ください。

2-3. メニュー管理と柔軟なカスタマイズ

メニュー管理と柔軟なカスタマイズ

QRコード注文システムの多くは、管理画面からメニューの追加・変更・削除が簡単に行えるよう設計されています。従来の紙メニューを入れ替える場合、印刷コストやデザイン修正に時間がかかりましたが、デジタルメニューならその場で反映できるため、店舗経営者にとって大きなメリットです。

たとえば季節限定メニューを追加する際にも、写真や説明文をアップロードすれば即座に顧客のスマホ画面に表示されます。価格変更や在庫切れに対しても即時対応が可能なので、誤注文を防ぎ、スムーズな運用が実現します。カラオケボックスなどフード以外の分野でも、QRコードを使ったセルフオーダーシステムを導入し、商品ラインナップを頻繁に更新している事例が増えてきています。

2-4. 顧客満足度を高める仕組み

顧客満足度を高める仕組み

顧客側としては、スタッフを呼ぶ手間が省けるうえに「今すぐ注文したい」というタイミングでオーダーを確定できるため、ストレスが軽減されます。人見知りの方や、スタッフとの会話が煩わしいと感じる層にとっては特にメリットが大きいでしょう。注文後の待ち時間やメニュー選択時間を顧客自身の自由なペースでコントロールできるのも好評です。

加えて、写真付きの商品一覧は視覚的にわかりやすく、テーブル上の紙メニューより情報量を多く掲載できるため、顧客の選択肢が広がります。これらの要素がトータルで顧客満足度を押し上げ、SNSなどでポジティブな口コミを得るきっかけにもなるのです。

2-5. セルフオーダーシステムに共通する利点

QRコード注文だけでなく、セルフオーダー全般にはいくつか共通する利点があります。たとえば「オーダーミスを削減する」「在庫状況をリアルタイムに反映できる」「英語や多言語対応がしやすい」などです。飲食店においては外国人観光客が増加しているエリアでは特に、多言語での注文画面を準備するシステムが好評を得ています。

また、セルフオーダーを導入することで、テーブルごとのオーダー状況を一元管理しやすくなり、スタッフが混雑状況を把握しやすくなります。結果として、必要なタイミングでスムーズに商品提供を行うことが可能になり、お客様の満足度アップにつながるでしょう。

2-6. 飲食店と顧客それぞれのメリット

飲食店側では、ホールスタッフの数を最小限に抑えながらも、高品質なサービスを提供できる体制を作りやすくなります。特に人手不足で困っている店舗にとっては、限られたスタッフで売上を伸ばすチャンスです。さらに、売上データや顧客の注文履歴をシステムで管理できるため、POSや会計システムとの連携がスムーズになり、経営判断に活用できるのも利点といえるでしょう。

顧客側から見ると、「注文ミスが減る」「アレルギー情報やカロリー表記などの詳細をしっかり確認できる」「深夜など人手が少ない時間帯でも確実にオーダーできる」など多くの利点があります。どちらの視点から見ても、QRコードを使ったオーダーシステムは今後ますます進化していくと考えられています。

2-7. QRコード対応オーダーシステムの主要機能

具体的な機能としては、以下のようなものが挙げられます。

  • メニュー管理機能:在庫切れ時の自動非表示、価格変更の即時反映など
  • POS連携機能:オーダー内容が自動的にレジに反映され、会計とスムーズにつながる
  • 分析レポート:人気メニューや時間帯別売上を可視化し、経営改善に役立つ
  • 多言語対応:英語・中国語などに切り替え可能で、インバウンド顧客を取り込みやすい
  • クーポン・キャンペーン表示:追加注文を促すポップアップで客単価アップを狙う

こうした幅広い機能を活用すれば、テーブルやバックヤードの管理だけでなく、SNSやLINEなどとの連携によるプロモーション展開も視野に入れられます。店舗規模や業態を問わず、より効率的かつ魅力的な「店舗体験」を提供するうえで重要なツールとなるでしょう。


3章. QRコード注文を導入するデメリットと課題

QRコード注文のデメリットと課題

3-1. QRコード注文の主なデメリット

メリットが多いQRコード注文ですが、導入にあたっていくつかのデメリットや課題も存在します。まず考えられるのが「スマホを使いこなせない顧客への対応」です。高齢者やスマホ操作が苦手な方、ガラケーしか持っていない人などにとっては、QRコードを読み取って注文するという行為自体がハードルになることがあります。

また、セルフオーダーという形式は「スタッフに直接おすすめを聞きたい」「コミュニケーションを楽しみたい」という層にとっては物足りなさを感じるケースもあります。店舗が目指すサービスコンセプトによっては、スタッフとのやり取りを大切にしたいところもあるでしょう。そのため、すべてのお客様に合うシステムとは限らない点を認識しておく必要があります。

3-2. 店舗側が抱える課題

店舗側としては、導入費用やシステム利用料が発生するのが一番の課題となりやすいです。QRコード注文システムはタブレット端末を導入するよりはコストが抑えられる場合が多いものの、無料で使えるプランは機能が制限されていることもあります。また、運用開始後に不具合が生じたときのサポート体制や、追加機能をカスタマイズする際の費用なども考慮しなければなりません。

さらに、QRコード注文を活用するには、ある程度インターネット回線やWi-Fi環境が安定していることが望ましいです。店舗立地によっては回線が不安定な場合があり、ピークタイムに通信障害が起きるとお客様のフラストレーションにつながるおそれがあります。こうした環境面の整備コストも見落とさないようにしましょう。

3-3. 顧客側が抱える課題

顧客にとっての最大のハードルは、やはり「スマホ操作への不安」や「通信料の負担」です。通信環境が悪い店舗や地下フロアなどでは、読み取りがスムーズにいかない可能性があります。また、スマホのバッテリーが切れそうなときにQRコード注文を求められると不便だという声もあります。

注文画面のUIが複雑すぎると、操作に迷ってしまう顧客が出てきます。特に初めて利用するシステムの場合、最初の画面での説明不足が「もうやめてしまおう」という離脱に直結しやすいです。顧客が感じるストレスをできるだけ減らすために、わかりやすい案内やスタッフのフォローが求められます。

通信環境整備でQRオーダーの不満を防ぐためには、店舗にWi-Fiを整備してQR注文をスムーズに行うことが重要です。『店舗・飲食店におすすめのフリーWi-Fi徹底比較!導入に必要な準備から設置方法まで大公開!』の記事におすすめWi-Fiをまとめていますので参考にしてください。

3-4. システム障害と導入コストの問題

システムがダウンしたときに備えたバックアップフローを用意しておかないと、現場が混乱に陥ります。紙のメニューを併設したり、口頭オーダーを復活させたりするオペレーションをあらかじめ決めておくことが重要です。導入コストについても、毎月のランニング費用だけでなく、定期的なアップデートやメンテナンス料を視野に入れる必要があります。

また、QRコードのステッカーや卓上POPが汚れたり剥がれたりした場合、再発行や再配置が必要です。小さな費用かもしれませんが、長期運用する中でこまめにケアしていく手間がかかります。

3-5. 口頭提案が減るリスク

スタッフがおすすめメニューや新商品の情報を直接伝える機会が減るのも、QRコード注文の課題のひとつです。顧客とのコミュニケーションを重視する飲食店では、単なる注文作業だけでなく、お話しすること自体が付加価値と考えられています。そのため、接客力を活かした「一言のおすすめトーク」が減ってしまうことを懸念する声もあります。

こうしたリスクを補うためには、画面上でのおすすめ表示やポップアップ機能を活用して「スタッフから口頭で伝えるような情報」をデジタルでも補完する工夫が必要になります。さらに、スタッフは注文以外の部分、たとえばドリンクの追加タイミングや料理を下げるタイミングなどで積極的に声掛けする形に移行すると、顧客に対して「スタッフの存在感」を感じてもらうことが可能です。

3-6. QRオーダー導入時の注意点

QRコード注文のシステムを導入するときには、まずスタッフが操作方法をしっかり把握しておく必要があります。顧客から質問されたときにスムーズに答えられないと、不信感を招きかねません。また、テーブルレイアウトや店舗の雰囲気に合った形でQRコードを配置しないと、顧客にとって発見しづらく、利用ハードルが上がってしまいます。

さらに、ピークタイムの運用を想定してシミュレーションを行うことも大切です。回線が混み合う時間帯に注文が集中すると、システムが一時的に重くなる場合があります。テスト導入を経て問題点を洗い出し、適切な回避策を講じましょう。

3-7. 導入を見送る理由とその検討ポイント

最後に、あえて導入を見送るケースについても触れておきましょう。店舗のコンセプトとして「人の手で丁寧にもてなすこと」を強く打ち出している場合、完全セルフ方式の注文は雰囲気に合わない可能性があります。また、客単価が高く、スタッフによるプレゼンテーションが価値となる高級店では、QRコードによるオーダーを積極的に採用しないところもあるでしょう。

導入を検討する際には、あらためて「なぜQRコード注文を取り入れたいのか」という目的を明確にして、コスト・客層・ブランドイメージとの兼ね合いを総合的に判断することが重要です。もし目的に合わない場合は、タブレットオーダーや従来どおりの口頭注文など、別の方法を選択するのも合理的な結論となり得ます。


4章. QRコードオーダーの導入がおすすめな店舗と特徴

4-1. QRコード注文の導入がおすすめな店舗の特徴

QRコード注文(QRオーダー)は、あらゆる飲食店に有効なシステムですが、特に導入効果が高い店舗にはいくつかの共通した特徴があります。まず挙げられるのが人手不足に悩んでいる店舗です。スタッフ数が十分に確保できず、ピークタイムになるとオーダー対応に時間がかかってしまうケースでは、QRコード注文が大きな助けになります。顧客がセルフで注文を完結できるため、ホールスタッフは接客や料理提供に集中しやすくなり、サービスの質が向上するメリットも得られます。

次に、メニュー数や追加トッピングが多い店舗もQRコードを活用しやすいでしょう。たとえば居酒屋や焼肉店など、料理やドリンクの種類が幅広い業態では、紙メニューだけで伝えきれない情報が多く存在します。QRコード注文なら写真付きでわかりやすくメニューを提示でき、顧客が細かい追加注文を行いやすいのがメリットです。しかも、店舗側でメニューを更新する際にも印刷費がかからず、リアルタイムで新メニューを追加できる強みがあります。

さらに、回転率を上げたい店舗にとっても導入を検討する価値は高いです。オーダーがスムーズに処理されることで、料理の提供スピードやテーブルの回転率が上がり、売上増につながる可能性が高まります。忙しい時間帯にスタッフがオーダー取りに追われてしまうと、どうしてもミスや遅延が発生しがちですが、QRコード注文が導入されていれば顧客が思い立った時点で追加オーダーできるため、スタッフが接客に回れる時間が増えます。

一方、「接客が売り」の高級レストランや、オープンキッチンでシェフとの対話を重視しているようなお店では、必ずしもQRコード注文がベストとは限りません。こうした場合は店舗イメージやコンセプトとの相性を最優先に考慮する必要があります。総じて、人手不足の解消や業務効率化、メニューの多様性への対応、回転率の向上などを重視する店舗にとって、QRコード注文は非常に有力な選択肢と言えるでしょう。

4-2. QRオーダーを導入した方が良いお店は?

QRオーダーを導入すると特に恩恵を受けやすいのが、ファミリーレストランや居酒屋チェーンなどの中〜大規模店舗です。メニュー数が多い業態ほど、セルフオーダーによる注文ミスの減少や、追加注文のしやすさが顕著に出ます。たとえば居酒屋の場合、お酒を飲んでいる間にドリンクやフードを追加したくなる場面が多いですが、スタッフを呼びづらい雰囲気だったり、混雑していて呼んでも来てもらえなかったりという不満が起こりがちです。QRコード注文ならスマホからボタンひとつでオーダー完結できるため、顧客も気兼ねなく追加できて客単価が上昇しやすくなります。

また、テイクアウトやデリバリーと併用している店舗にも適しています。店内オーダーだけでなく、テイクアウト用の料理をQRコードシステム内で受け付けることも可能なため、複数の販売チャネルを一元管理しやすい利点があります。たとえば昼はランチ営業、夜はデリバリー対応という二つの顔を持つ店舗でも、QRコードオーダーとPOSとの連携でスムーズに売上や在庫を管理できます。

さらに、若年層が多く訪れるカフェやダイニングバーでも、スマホ操作に慣れたお客様が多いため、導入がスムーズです。SNSとの連動機能を備えたシステムを使えば、友人同士のシェアや口コミ促進にもつながるでしょう。一方で、高齢者が多い地域や、スマホ非所持の顧客が頻繁に訪れる場合は、スタッフのフォロー体制や紙メニューの併設が欠かせません。

最終的には、自店舗の客層やブランドイメージ、メニュー特性を総合的に考慮して導入可否を判断するのがベストです。十分に運用シミュレーションを行ったうえで、少しずつ試験導入してみるアプローチも有効です。

4-3. QRコード注文以外に最適な注文方法

QRコード注文が便利な一方、ほかの注文方法が合うケースもあります。まず挙げられるのがタブレット端末をテーブルに設置する「テーブルオーダーシステム」です。こちらは、お客様がスマホを持っていなくても利用できるという利点があり、特にファミリー層や高齢者層にも使いやすいという評価を受けることが多いです。一方で、端末のコストやメンテナンス・清掃の手間が発生します。

次に、ハンディ端末をスタッフが持ち歩くスタイルも依然として根強く使われています。スタッフが注文を受けるという対面接客が重視されるため、口頭でおすすめを伝えたい高級店や個人経営の店舗などではこちらが好まれる傾向があります。スタッフとのコミュニケーションを重視することで、顧客満足度を高めることができるのが魅力です。

また、タッチパネル式の券売機を導入している店舗もあります。特にラーメン店やセルフサービスのカフェなど、食券スタイルが定着している業態では、オーダーと支払いを同時に済ませられるため、スタッフの負荷を大きく軽減できます。ただし、券売機は初期投資が高額になりやすく、メニューの追加・変更の際にもコストがかかる点には注意が必要です。

結局のところ、どのシステムが最適かは店舗の規模やサービス方針、客層によって異なるため、一概に「QRコード注文だけが正解」というわけではありません。店舗側がどのような課題を解決したいのか、どんな顧客体験を提供したいのかをはっきりさせたうえで、それぞれの注文方法のメリットとデメリットを比較検討することが重要です。


5章. QRコード注文の具体的なやり方と手順を解説!

QRコード注文の具体的なやり方

5-1. QRコードを使用した注文方法と具体例

QRコード注文のやり方を具体的にイメージするため、まずは標準的なオーダーフローを見てみましょう。典型的にはテーブルに設置されたQRコード(ステッカーや小さな立て札など)を、顧客がスマホのカメラや専用アプリで読み取ります。読み取り後、ブラウザやアプリ上で店舗のメニュー画面が表示される仕組みです。

たとえば居酒屋チェーン「A店」の場合、以下のような手順となります。

  1. テーブルに着席後、QRコードが印刷された卓上POPを発見
  2. スマホでQRコードを読み取る(カメラアプリやQRコードリーダーを使用)
  3. ブラウザ画面に自動で移動し、飲食店のトップページが表示
  4. メニュー一覧からカテゴリを選択(フード、ドリンク、デザート など)
  5. 商品を選択して数量を入力し、注文をカートに追加
  6. 注文内容を確認し「オーダーを確定」ボタンをタップ
  7. キッチンやPOSシステムに情報がリアルタイムで連携される

このように、全行程をスマホ操作だけで完結できます。飲食店によっては、トップページで「日本語/英語/中国語」などの言語を選ぶケースや、初回アクセスで会員登録を促すケースもあります。メニュー表示もテキストだけでなく、写真やカロリー表記を載せるなど工夫次第で自由度が高いのが特徴です。

5-2. スマホ画面でのメニュー選択と操作

QRコード注文の要となるのが「スマホ画面の使いやすさ」です。たとえばカテゴリー分けをわかりやすく配置し、欲しい商品を素早く探せるUIにすることが大切です。おすすめ商品にはバナーやアイキャッチを設置すると、顧客が見逃しにくくなります。ビジュアルを重視したい場合は、サムネイル画像を並べるスタイルにして、メニューをスクロールできるようにするとよいでしょう。

また、オプションやトッピングが多い場合は、チェックボックスやラジオボタンでシンプルに選択可能にしておくと、顧客のストレスが減ります。カフェであれば「ミルク追加」「シロップ追加」「氷の量」などの細かい選択肢を用意することが多いですが、その際にあまりにも画面遷移が多いと操作が煩雑になります。1~2画面で必要項目をまとめられるUIを設計することで、スムーズな注文体験を提供できるはずです。

さらに、誤タップ防止の仕組みも大事です。「削除」ボタンと「確定」ボタンが近い場所にあると操作ミスが起きやすくなるため、余白を十分取るか、確認ダイアログを表示するなどの工夫をしましょう。飲食店としては、「お客様の使いやすさ」を最優先に考えた画面設計を目指すのが成功のカギとなります。

5-3. 決済方法と支払いオプション

決済方法と支払いオプション

QRコード注文の場合、注文だけでなく支払いまでセルフで完結させる仕組みを導入する店舗も増えています。たとえばクレジットカードや電子マネー、QR決済(PayPayなど)と連携し、オーダーと同時に決済を済ませる方式です。これにより、スタッフがテーブル会計を行う手間が削減され、顧客側もレジ待ちの行列を回避できます。

一方で、現金払いしか使わない層にも対応したい場合は、会計だけは従来どおりレジで行う方式も選択可能です。つまり「オーダーはセルフ、支払いはスタッフ対応」というハイブリッドな運用です。飲食店としては、どこまでシステム化するかを決める際に「客層の支払い手段」「店内レジの混雑状況」「スタッフ人数」などを総合的に考慮します。

また、QRコード注文と連携することでポイントサービスやクーポン発行を簡単に行えるケースもあります。たとえば、デジタル会員証を読み込むと自動的にポイント加算される仕組みを作ったり、次回利用時に割引になるクーポンを注文完了画面に表示したりすることが可能です。こうした施策はリピーター獲得に有効なため、多くの飲食店が活用を検討しています。

5-4. スマホ未所持・ガラケー利用者への対策

QRコード注文が広がる一方で、依然としてスマホを持っていない方や、ガラケーしか使えない方が一定数存在するのも事実です。特に高齢者が多い地域や、ファミリー層で子どもがお小遣い用にガラケーを使っている場合など、さまざまな状況が考えられます。こうした顧客に対しては、スタッフの口頭オーダーを残しておくか、紙メニューを併設するなどのフォローが必要となります。

いくつかのセルフオーダーシステムでは、ガラケーでも読み取り可能な簡易サイトを用意しているケースがあります。テキスト主体で軽量なページを表示し、最低限のオーダー操作だけ可能にする仕組みです。ただし、多くの場合はスマホ前提の設計が主流なため、ガラケー対応は限定的となるでしょう。店側としては「スタッフが直接注文を伺いますので、お気軽にお声がけください」などの案内表示をしておくことで、顧客が遠慮せず口頭オーダーを頼めるようにしておくことが大事です。

また、障がい者支援の観点から、視覚や聴覚に不便を感じる方への対応も視野に入れる必要があります。音声読み上げ機能に対応したUI設計を導入するシステムもあるため、店舗の方針や客層に合わせて検討すると良いでしょう。

5-5. 店舗オペレーション全体での活用ポイント

QRコード注文を導入する場合、単に「テーブルにQRコードを貼る」だけではなく、店舗全体のオペレーションを最適化することが成功のカギです。たとえば、オーダー情報がキッチンに即座に伝わる仕組みに加え、調理完了後はスタッフのスマホまたはハンディ端末に通知が飛ぶように設定すると、料理提供までの動線がスムーズになります。これにより、料理ができあがってから放置されることが減り、顧客満足度が上がるでしょう。

また、POSシステムと連携している場合、リアルタイムで売上や在庫管理を把握できるのも利点です。メニュー在庫が尽きたら画面上で販売停止に切り替えることで、オーダーが入ってから「実は売り切れでした」というトラブルを防げます。さらに、売上データを分析することで「どの時間帯にどのメニューがよく注文されるのか」「客単価はどれぐらい変動するのか」といった経営指標を得ることができます。

総合的に見ると、QRコード注文の導入によってスタッフは煩雑なオーダー作業から解放され、より質の高い接客や店舗演出に注力できるようになります。その結果、売上向上だけでなく、ブランドイメージの向上やリピーター創出にもつながる好循環が生まれるでしょう。


6章. システム導入までのステップと成功のポイント

導入までのステップと成功のポイント

6-1. QRコード注文導入の全体像

QRコード注文を導入する際は、計画段階から運用開始までの流れを明確にし、スムーズに進めることが重要です。おおまかなステップとしては以下のようになります。

  1. 導入の目的を明確化(人手不足解消、顧客満足度向上、売上アップなど)
  2. システム・サービス選定(各社の機能やコストを比較検討)
  3. 契約・初期設定(店舗データ登録、メニュー作成、QRコード作成など)
  4. スタッフ研修・試験運用(店内オペレーションの確認・改良)
  5. 正式導入・運用開始(顧客向け告知やサポート体制の整備)
  6. 改善・アップデート(顧客フィードバックをもとにUIやサービスを改良)

このような流れで導入を進めれば、大きなトラブルやスタッフの混乱を最小限に抑えられます。特にスタッフが慣れないシステムを使う場合は、試験運用の期間をしっかり確保し、実際のピークタイムを想定したリハーサルを行うのが効果的です。顧客への告知も重要で、「QRコード注文を導入しています」「スマホで簡単に注文できます」などをポスターやメニュー表に書いておくと、スムーズに浸透しやすくなります。

6-2. 導入目的の明確化と効果測定

QRコード注文を導入するにあたっては、なぜ導入するのかという目的をはっきりさせることが成功への第一歩です。たとえば「オーダーミスを減らしたい」「スタッフの人件費を削減したい」「顧客の追加注文を増やしたい」など、目的によって注力すべき機能や運用フローが変わってきます。

目的がはっきりしていれば、導入後の効果測定(KPI設定)もしやすくなります。たとえば、「導入前後でオーダーミスがどれくらい減ったか」「客単価がどの程度上がったか」「スタッフの残業時間がどれほど削減されたか」といった定量的な指標を追うことで、システム導入が本当に有効だったかを客観的に判断できます。もし期待する成果が得られなければ、画面レイアウトやスタッフの声掛け方法などを再度見直す材料になります。

また、顧客満足度や口コミ評価などの定性的な指標も見逃せません。SNSやグルメサイトのレビューをチェックすることで、実際の顧客がどのようにQRコード注文を捉えているのかを把握できます。こうした声を拾い上げることで、店舗独自の改善ポイントが見えてくるでしょう。

6-3. サービス選定と比較検討のポイント

QRコード注文システムやセルフオーダーシステムを提供する企業は数多く存在します。料金プランの形態もさまざまで、月額固定費売上連動型などがあります。選ぶ際には以下のポイントを確認すると良いでしょう。

  • 初期費用・月額料金:機材費やサーバー利用料、サポート費用などが含まれるか
  • 機能面:POS連携、在庫管理、クーポン発行、多言語対応など必要な機能が揃っているか
  • 操作性・UI:スタッフや顧客が直感的に操作できる画面設計か
  • サポート体制:トラブル時の問い合わせ対応やアップデートの頻度、マニュアルの充実度
  • 拡張性・カスタマイズ性:将来的にメニュー拡大や店舗展開をする際に対応できるか

事前にデモや無料トライアルを活用すると、実際の運用イメージをつかみやすくなります。特に操作性やUIは、店舗のイメージと顧客層に合うかどうかが大きな分かれ目になるため、実機を試すことが成功への近道です。また、導入後の保守やアップデートがどれだけ頻繁に行われるかも重要です。システムが古くなるとスマホOSのバージョンアップに追随できなくなる恐れがあるため、定期的にメンテナンスを行ってくれるサービスを選ぶと安心です。

6-4. 契約・システム設定・スタッフ研修

システムの導入が決まったら、契約から実際の運用開始までの段取りを詰めます。契約時には利用規約や料金体系、契約期間などをしっかり確認しておきましょう。その後、管理画面でメニュー登録価格設定在庫数の設定を行い、店舗情報を反映します。多店舗展開の場合は、店舗ごとにメニューや価格が異なるケースもあるため、きめ細かくデータを入れる必要があります。

QRコードの印刷や卓上POPの設置も重要な作業です。たとえば、テーブルごとに異なるQRコードを貼ることで「どの席からの注文か」が自動判別できるようになります。印刷物は耐久性やデザインにこだわって作成する店舗が多く、長期間利用できるようラミネート加工やアクリルスタンドなどを用意しておくとよいでしょう。

スタッフ研修では、システムの基本操作に加え、想定される顧客からの質問への回答方法も周知します。たとえば「注文がうまく通らない」「画面がフリーズした」などトラブルが起きた際の手順をマニュアル化しておけば、スタッフが落ち着いて対処できます。研修後に実際のピークタイムを想定したロールプレイを行い、オペレーションの隙間を洗い出すステップを踏むのがおすすめです。

6-5. 運用開始後のトラブル対策と改善

運用を開始すると、想定外のトラブルや改善点が見えてくる場合があります。たとえばネット回線が不安定であったり、顧客が操作方法を誤って違うテーブルのメニューを注文してしまったり、細かな問題が発生することは珍しくありません。こうした状況に備えるためには、トラブル発生時の連絡体制バックアップ手段を明確にしておく必要があります。紙のメニューやハンディ端末を一部残しておくのも、緊急時のリスク回避につながります。

また、顧客やスタッフからのフィードバックをもとに、UIの改善やマニュアルの改訂を行うことが大切です。システム提供会社に要望を伝えれば、定期アップデートで機能追加してくれるケースも多いため、積極的にコミュニケーションを取ると良いでしょう。さらに、売上データや追加注文の傾向を分析し、新メニューの開発やキャンペーンの企画に活かせるのもQRコード注文の強みです。

継続的にPDCAサイクルを回して、問題点を少しずつ改善していけば、スタッフも顧客もストレスなく使いこなせるシステムへと進化していきます。その結果、顧客満足度の向上やリピーターの増加など、導入のメリットがいっそう大きくなるでしょう。

6-6. 接客力強化と集客への応用

QRコード注文を導入すると、スタッフがこれまでオーダー対応に割いていた時間が減り、顧客へのホスピタリティに注力する余裕が生まれます。たとえば料理の提供タイミングを見計らっておすすめのドリンクを案内したり、お子様連れに対して丁寧に声をかけたりといった、人間ならではのきめ細やかな接客が可能になります。こうした接客力の向上は、飲食店のイメージアップやリピーター獲得に直結します。

また、QRコード注文のシステムを使って、季節ごとのキャンペーンやLINE連携クーポンの発行など集客施策を展開することも考えられます。顧客がスマホを使ってオーダーする流れの中で、自然にSNSやメルマガ会員登録を促す仕組みを入れ込むと、効率的にリストを集めることが可能になります。そのままPOSと連携して購買データを分析すれば、さらに的確なマーケティングを行えるでしょう。

このように、単なる「注文システムの置き換え」にとどまらず、DXを取り入れながら接客力や集客力を高める視点を持つことで、店舗全体の競争力が大きく高まります。上手に使いこなす店舗が増えるほど、顧客側も「セルフオーダーが当たり前」と感じるようになり、飲食店のスタンダードが変化していくかもしれません。


7章. 主要なQRコード対応オーダーシステム一覧と選び方

主要なQRコード対応オーダーシステムと選び方

7-1. 飲食店向けシステムの概要とタイプ

QRコード注文(QRオーダー)を本格導入する際に検討すべきなのが、どのシステムを使うかという点です。飲食店向けのシステムには、大きく分けてクラウド型オンプレミス型の2タイプがあります。クラウド型はシステム提供会社のサーバーを利用するため、店舗側で大がかりなサーバー設備を用意する必要がありません。更新やメンテナンスも提供会社が行うケースが多く、導入ハードルが低いのが特徴です。一方、オンプレミス型は店舗側でサーバーを設置し、自社で管理・運用する方式。高いカスタマイズ性を求める大手チェーンや、独自要件の多い飲食店ではオンプレミス型を選ぶこともありますが、一般的にはクラウド型が主流となりつつあります。

また、決済機能が標準で搭載されているシステムと、決済は別サービスと連携するシステムも存在します。自前で決済機能まで備えているサービスは、導入後すぐにクレジットカードやQR決済が使えるようになる反面、手数料体系やサポート範囲がやや複雑になりがちです。一方、既存のPOSやキャッシュレス決済サービスと連動できるシステムでは、すでに利用している決済インフラを活かせるメリットがあります。

さらに、多店舗展開に特化したシステムもあり、各店舗のメニューや売上データを一括管理できる機能が充実している場合があります。フランチャイズやチェーン店運営では、全店共通のメニュー設定や在庫管理、データ分析を行いやすくなるため、店舗経営者にとって大きなメリットです。このように、目的や規模に合わせて適切なタイプを選ぶことが、QRコード注文システムを成功に導くカギといえます。

7-2. 比較のポイント:コスト・機能・サポート

QRコード注文システムを選ぶ際には、コスト機能サポート体制の3つが大きな比較ポイントとなります。まずコスト面では、初期導入費用(システム設定やQRコード作成など)と月額利用料、さらにトランザクションベースや売上連動型の手数料が発生する場合があるかなど、料金体系を細かくチェックすることが重要です。無料プランを提供する会社もありますが、多くの場合は機能に制限があったり、サポートが限定的であったりするので、自店舗の規模に合うかを吟味しましょう。

機能面では、POS連携の可否をはじめ、メニュー管理のしやすさやカスタマイズ性、多言語対応、クーポン発行・会員管理といったマーケティング機能が充実しているかどうかがポイントになります。特に在庫管理やデータ分析を重視する飲食店では、リアルタイムに売上・在庫の連携ができるシステムかどうかが導入効果を左右します。

サポート体制も軽視できません。導入直後は操作方法や不具合対応など、細かな問い合わせが頻繁に発生しがちです。トラブルが起きても、メールや電話、チャットなどで迅速にサポートしてくれる会社であれば安心して長く使えます。アップデートの頻度や、新機能の追加・改修にどれだけ柔軟に対応してくれるかもチェックポイントです。結局のところ、長期的に見て自店舗の運営スタイルや顧客層にフィットし、かつ必要な機能と安定したサポートを提供してくれるシステムが理想といえます。

7-3. 決済対応やメニューデザインなど主なシステムの特徴

QRコード注文システムの特徴として、キャッシュレス決済対応がますます重要視されています。クレジットカードや各種QR決済(PayPay、楽天ペイなど)、電子マネー(交通系ICカードなど)をまとめて利用できる仕組みを備えているシステムが増えており、店舗と顧客双方の利便性向上に寄与しています。こうしたオールインワンの決済対応システムを選ぶと、会計時のオペレーションが大幅に簡素化されるメリットが得られます。

また、メニューデザインを柔軟にカスタマイズできるかどうかも重要です。写真やアイコンを多用したデザインであれば、顧客が直感的に商品を選びやすくなりますし、ブランドイメージを反映したレイアウトを作ることで、店舗の個性をデジタル空間にも演出できます。一部システムでは、飲食店向けのテンプレートやドラッグ&ドロップ操作で簡単にレイアウトを変更できる機能を提供しているところもあります。

さらに、飲食店が活用したい機能としてクーポン配信おすすめ商品のポップアップなどがあります。顧客がメニュー画面を開いた際に「期間限定セール」や「人気メニューランキング」などの情報を提示する仕組みがあれば、追加注文を促進しやすくなるでしょう。こうしたマーケティング機能の有無や使いやすさによって、導入後の売上アップやリピーター獲得に大きな差が出てきます。

7-4. 無料プランがあるサービスのメリットと制限

近年、QRコード注文システムを扱う会社の中には、無料プランを用意しているところも出てきています。初期費用や月額料金を0円に抑えつつ、基本的なセルフオーダー機能を試せるのは、特に小規模店舗や個人経営者にとって魅力的でしょう。飲食店のDX(デジタル化)に踏み切る敷居が下がるため、まずは様子見で導入してみたい店舗にとっては大きなメリットです。

ただし無料プランには、メニュー数の上限クーポン配信などの追加機能が使えないといった制限が設けられている場合が多いです。さらに、サポート対応がメールのみだったり、問い合わせ対応の時間に制限があることもあります。もし導入後に「やはりもっと高度な機能が必要だ」という局面になれば、有料プランへの移行が必要になる点を想定しておきましょう。導入コストを抑えつつ、本格的なセルフオーダーシステムを試してみたい人には、無料プランはよい入り口となる一方、長期的・大規模な運用を視野に入れている飲食店の場合は、有料プランや他社サービスを含めた総合的な比較検討が欠かせません。

7-5. 代表的なサービス例1:「QR注文くん」「タップ&オーダー」

導入を検討している店舗にとって、具体的なサービス事例を知るのは非常に参考になります。まず「QR注文くん」は、月額980円(税込)という低価格で利用できるのが最大の魅力です。基本的なQRコード注文機能に加え、メニュー追加や価格変更などが比較的簡単に行えるため、飲食店初心者でも扱いやすいと評判です。サポート面もオンラインマニュアルや問い合わせ窓口を設けており、導入に必要なQRコードステッカーの作成方法なども丁寧に案内してくれます。

「タップ&オーダー」は、スマホでのユーザー体験を重視した設計が特徴です。メニュー画面が直感的に見やすく、タップ操作だけでスムーズに注文を完了できるため、スマホ慣れしている若年層の利用者が多いカフェやレストランに向いています。飲食店によっては、写真や動画を組み込んで商品の魅力を強調するケースもあり、ビジュアルを活かした販促に強みがあります。LINE連携やポイントサービスとも相性が良いため、顧客へのリピート促進施策を考える店舗にも有効です。

これら2つのサービスは、比較的導入ハードルが低く、必要最低限の機能をカバーしているのが特徴です。店舗の規模やオペレーションに合わせてカスタマイズできる余地もあるため、導入前にデモ版やトライアルを試してみるとよいでしょう。

7-6. 代表的なサービス例2:LINE連携・スマレジ・Square・stera pack

次に紹介したいのが、LINE連携などの外部サービスとの連動を強化しているシステムです。LINE公式アカウントを活用して顧客を友だち登録してもらい、そのままトーク画面やLINEミニアプリから注文してもらう形式を採ると、ユーザーが慣れたLINEアプリ上で完結できる利点があります。特に、クーポンやポイントカードを送付しやすく、リピート顧客を囲い込む施策を打ちやすいのが魅力です。

また、POSとして有名な「スマレジ」は、クラウド型のレジシステムとして多くの飲食店に採用されていますが、QRコード注文やセルフオーダーとの連携も積極的に行っています。売上データや在庫管理を一元化できるため、日々の店舗管理が楽になると高評価を得ています。少し規模が大きい飲食店や、複数店舗を運営している場合には、こうした総合的な管理機能を重視すると良いでしょう。

「Square」はクレジットカード決済に強みがあり、キャッシュレス時代を見据えた店内オペレーションの最適化に役立ちます。タブレットやスマホをPOSレジとして活用できるため、スペースの限られた店舗でも柔軟に対応できます。さらに「stera pack」は、店頭決済端末やオンライン決済などをパッケージ化して提供しており、QRコード注文と一体化することでフルキャッシュレスを実現しやすいシステムです。大手決済会社のブランド力やセキュリティ水準が高いことも安心材料と言えます。

7-7. システム導入で店舗運営がどう変わるか

QRコード対応オーダーシステムを導入することで、店舗運営のスタイルそのものが変化する可能性があります。まず、スタッフの配置やシフトの組み方を見直せる点が大きいです。従来はオーダーテイクに多くの人手が必要でしたが、セルフオーダー化で余裕が生まれると、スタッフをより接客力向上や料理提供の質向上に振り向けることができます。顧客とのコミュニケーションが深まれば、自然とリピーターが増えやすくなるでしょう。

また、POS連携が進むことで、経営者や店長が売上や在庫をリアルタイムで確認できるようになります。データに基づく発注計画やメニュー改訂が可能になり、無駄な廃棄や機会損失を減らせるのもメリットです。さらに、複数店舗のデータを一元管理できるシステムであれば、店舗ごとの売れ筋分析を行い、それを他店舗のメニュー戦略に活かすこともできます。

最終的には、こうした効率化と顧客満足度の向上が、店舗全体の売上アップやブランド力強化につながります。QRコード注文のシステムを導入し、適切に運用すれば、スタッフ・顧客・経営者の三方にメリットがあるWin-Win-Winの関係を築きやすくなるといえるでしょう。


8章. POS連携とカスタマイズで広がる可能性

8-1. QRコード注文とPOSシステムの連携

飲食店において、オーダー情報とPOS(Point of Sale)システムの連携がスムーズであることは非常に重要です。QRコード注文によって顧客が入力したデータが、そのままPOSに反映される仕組みを作っておけば、二重入力や手動での転記ミスを大幅に削減できます。スタッフはオーダー処理よりも、顧客対応や調理補助、店舗演出などに注力できるようになります。

具体的には、注文データがキッチンプリンターに自動送信され、調理完了時にはPOS側に反映されるなどの流れが一般的です。会計時にはレジ側が自動的にオーダー内容を読み込み、追加注文などがリアルタイムで更新されるため、レジ締め作業が簡単になります。また、POSに集積されたデータを分析することで、どの時間帯にどのメニューが多く出るのか、どの席で客単価が高いのかなど、細かい経営指標を得ることが可能です。これらの分析結果を活かして販売戦略を練ることで、店舗の生産性や売上の向上につなげることができます。

8-2. QRコード注文システムのカスタマイズ事例

飲食店によっては、「標準パッケージをそのまま使うのではなく、独自のオペレーションに合わせてシステムをカスタマイズしたい」という要望が出てくる場合があります。たとえば、特定のメニューを注文した顧客には自動的にサイドディッシュをおすすめ表示する仕組みや、食べ放題コースの残り時間をスマホ上でカウントダウンする機能など、独創的なアイデアを実現することが可能です。

さらに、店舗のイメージに合わせたデザインテーマを作り込んだり、予約システムや会員管理システムとの連携もカスタマイズで対応できます。結婚式場やパーティー会場では、イベント演出の一環としてデジタルメニューを活用する事例があり、招待客がQRコードを読み取ると会場限定の特別メニューや写真投稿機能にアクセスできるなど、ユニークな演出が実現しています。

このようなカスタマイズ事例を積極的に紹介するシステム提供会社も増えており、オーダーだけにとどまらない新たな集客施策やブランディングへと発展させるケースが増えています。ただし、カスタマイズに応じるには追加開発費用がかかる場合もあるため、事前に見積もりを確認しておく必要があります。

8-3. QRコード注文システムの導入事例

近年は、ファミリーレストランやカフェチェーンなど大手飲食店を中心に、QRコード注文の導入事例が次々と増えています。たとえば全国規模の居酒屋チェーンでは、導入後に1テーブルあたりの追加注文頻度が上昇し、実際に客単価が5〜10%ほどアップしたという報告があります。また、スタッフが注文を聞きに行く時間を削減できたことで、料理やドリンクの提供スピードが向上し、顧客満足度が高まったという結果も得られました。

中小規模の個人経営店でも成功例が少なくありません。おしゃれなカフェがQRコードを使ったオーダーシステムを導入したところ、若年層に「スマホでオーダーできるのが面白い」と受け、SNSで話題になったというケースもあります。また、テーブル数が少ないため大きな機器を置くスペースがない店舗などは、タブレット端末型よりもQRコード注文のほうが導入が楽という声もよく聞きます。実際には、運用開始後にスタッフ配置やメニュー構成を最適化することで、より高い効率化と売上アップを狙っている店舗が多いようです。

8-4. チェーン店での成功事例と効果

チェーン店でQRコード注文を導入すると、全店舗でオペレーションを統一できるという利点が大きくなります。各店舗ごとの接客マニュアルが異なる状況だと、スタッフ間の認識のズレやサービス品質の差が生じやすくなりますが、セルフオーダー化によって注文プロセス自体は統一され、顧客体験を標準化しやすくなります。さらに、メニュー変更やキャンペーン情報の配信を本部から一括で行うことができるため、店ごとに紙メニューを印刷し直すコストや手間を削減できます。

大手居酒屋チェーンでは、導入後のアンケート調査によって顧客の8割以上が「QRコード注文をスムーズに使えた」と回答し、顧客満足度向上にも貢献しているというデータがあります。オーダーミスの減少や追加注文の増加に伴い、スタッフのモチベーションも向上し、店舗全体の雰囲気が良くなったとの声も少なくありません。このように、チェーン店ではシステム導入によるスケールメリットが得られるため、本部と現場が協力して適切に運用すれば、想像以上に大きな効果を得られるケースが多いのです。

チェーン化やフランチャイズ運営に興味がある方は、『飲食店のフランチャイズ開業のすべて!儲かる仕組みから成功の秘訣まで大公開!』の記事を確認ください。


9章. QRコード注文が「めんどくさい」と感じる顧客への対応策

9-1. QRコードの注文をめんどくさいと思う人への3つの対策

QRコード注文(QRオーダー)は便利な反面、一部の顧客からは「わざわざスマホを取り出して、カメラを起動して…と一連の流れがめんどくさい」と感じられることもあります。こうした不満を解消するために、以下の3つの対策が挙げられます。

  1. 案内やチュートリアルを充実させる
    QRコードを読み取る手順や、初めて使う顧客向けの説明を卓上POPやメニューに明示しておくと、操作のハードルが下がります。図解や矢印、簡潔な文章でステップを示すと効果的です。必要なら、スタッフが最初の注文だけフォローしてあげるなど、ソフト面でもサポートを行いましょう。
  2. UI/UXを改善して操作をシンプルにする
    スマホ画面で複雑な画面遷移や多すぎるボタンがあると、ユーザーは敬遠しがちです。トップ画面に人気メニューを表示したり、最小限のタップ数で注文が完了するよう設計したりすることで、「めんどくさい」印象を減らせます。特に操作ミスを防ぐための「確認画面」などは、適度に挿入すると安心感も高まります。
  3. 紙メニューや口頭注文の併用
    完全セルフオーダーではなく、紙メニューも置いておく「ハイブリッド運用」を導入すれば、スマホ操作が苦手な顧客を取りこぼさずに済みます。「慣れている人はQRコード注文、そうでない人は紙メニューで口頭注文」という選択肢を提示しておけば、顧客のストレスを最小化できます。

9-2. QRコード注文が嫌いな人への対応策

一方で、単純にスマホ操作が苦手というだけでなく、「スタッフと話すのも楽しみの一つ」と考える人は少なくありません。こうした層に対して「QRコードでセルフオーダーしてください」と一方的に押し付けてしまうと、むしろ不満を生む可能性があります。そこで、スタッフのフォローと接客力の活用が不可欠です。

たとえば、通常の注文対応も残しつつ、QRコード注文はオプション的に用意するスタイルが考えられます。スタッフがテーブルを回ったときに「もしお手元で追加注文が必要なときは、こちらのQRコードからいつでもどうぞ」と軽く案内するだけでも、顧客の負担は大きく軽減されます。実際に、口頭で注文していた顧客が途中からセルフオーダーに切り替えるケースもあり、「便利そうだから使ってみたい」という気持ちを誘発することができます。

また、スタッフの一言が欠かせない場面もあります。QRコード注文のメリット(追加注文のしやすさや待ち時間削減)を簡潔に伝えれば、「やってみようかな」という心理が働くでしょう。逆に、顧客が「やっぱりスタッフとやり取りしたい」と感じたときには、口頭での注文を快く受け付ける柔軟な姿勢が大切です。店舗全体として「QRコード注文はあくまで選択肢の一つ」「何よりも顧客が快適に過ごせるようにする」というスタンスを明確に持つことで、多様なニーズに対応できる飲食店へと進化していきます。


10章. セキュリティ・個人情報保護・通信料などの問題について

10-1. QRコード注文における個人情報の取り扱い

QRコード注文(QRオーダー)を導入する際、飲食店としては個人情報の取り扱いに十分注意を払う必要があります。なぜなら、システムの種類によっては、顧客が会員登録を行ったり、メールアドレスや電話番号といった個人情報を入力したりする場面が生じる場合があるからです。もし個人情報が漏洩してしまうと、顧客との信頼関係が損なわれるだけでなく、店舗にとっても法的リスクや社会的信用の失墜といった深刻なダメージにつながる可能性があります。

基本的に多くのセルフオーダーシステムでは、会員登録不要で注文が可能な設計が主流です。それでも顧客のスマホ端末情報やアクセスログ、購入履歴といったデータはシステム側に蓄積されることがあります。これらのデータはPOSと連携することで売上分析や顧客行動の可視化に役立つ一方、店舗が「どの情報を、なぜ収集しているのか」「どのように管理しているのか」を明確にし、プライバシーポリシーを整備しておくことが重要です。さらに、収集した情報を使ったマーケティング施策(クーポン配信やリターゲティング広告など)を実施する際には、顧客への告知や同意取得を適切に行いましょう。

実店舗とオンラインサービスが融合する時代だからこそ、個人情報保護に対する店舗の姿勢を明確に示すことは、顧客との長期的な信頼構築に不可欠です。特に大手チェーンでは公式サイトやアプリ内でのプライバシーポリシー公開が進んでいますが、中小規模の飲食店や個人経営店も「当店はどのような目的でどの情報を扱い、どのように保護しているか」をホームページや店内掲示などで積極的に周知することをおすすめします。こうした取り組みが、QRコード注文のメリットを最大限活かしつつ、安心して利用してもらう鍵となるでしょう。

10-2. QRコード注文のセキュリティ対策

QRコード注文を導入するうえで見落とせないのが、セキュリティ対策です。通常、QRコードを読み取った先はインターネット上のページやクラウドシステムに接続されます。そのため、通信の暗号化はもちろんのこと、サーバー側での不正アクセス防止策が講じられているかどうかをよく確認する必要があります。たとえば、TLS(Transport Layer Security)などの暗号化プロトコルが適切に導入されているか、管理画面へのログインが多要素認証で守られているかなどが代表的なチェックポイントです。

また、QRコード自体を悪用されるリスクにも注意が必要です。悪意のある第三者が店内のQRコードシールを偽装したものと貼り替え、フィッシングサイトやウイルス配布サイトへ誘導する可能性もゼロではありません。こうした事態を防ぐには、定期的にQRコードの状態を点検し、破損や貼り替えが疑われる場合には速やかに再発行・再設置するフローを整備することが望ましいでしょう。

さらに、セルフオーダーのシステム提供会社が定期的にセキュリティアップデートを実施しているかどうかも確認が必要です。スマホのOSやブラウザは頻繁にバージョンアップされるため、対応しないシステムは脆弱性が生じるリスクがあります。導入前にサービスの実績やサポート体制をチェックし、セキュリティに関する問い合わせへ迅速に対応してもらえるかを見極めることが、店舗としての安心感につながります。

10-3. QRコード注文における通信料の考慮

QRコード注文は顧客のスマホを利用するため、通信料の負担に関する疑問が出てくることがあります。多くの場合、顧客が自分の契約している携帯回線や店舗のWi-Fiなどでデータ通信を行いますが、通信量が大きくなると「店のQRコードを使っているのに通信料がかかるのか?」と不満を抱く顧客もいるかもしれません。これに対しては、店舗が無料のWi-Fi環境を提供しているなら、その存在をわかりやすく案内しておくとスムーズでしょう。

一方、店舗Wi-Fiを導入していない場合は、通信料が発生することを事前に明確化しておくのが望ましいです。とはいえ、QRコード注文程度のデータ通信量は極めて小さいケースがほとんどであり、通常のウェブ閲覧やSNS利用と比べても大差はないことが多いです。実際には、テキストと商品写真が数枚程度表示されるだけで、動画ストリーミングのように膨大な通信が発生するわけではありません。

また、通信速度に関するストレスを減らすために、回線が安定しないエリアであれば店舗側がWi-Fiを整備するという対策も検討できます。地下にある飲食店や電波状況が悪い立地では、顧客が読み取りに苦戦してしまう可能性があるからです。店舗運営者としては、通信環境の整備や利用者への案内を行い、QRコード注文の「手軽さ」をしっかり体感してもらうのが理想といえます。結局のところ、通信費用や接続速度の問題に対して店舗が配慮を示しているかどうかが、顧客の満足度と直結するポイントとなるでしょう。


11章. システム導入後の運用とスタッフの接客力向上

11-1. 飲食店におけるQRコード注文とスタッフの役割

QRコード注文を導入した後、スタッフの業務負担が「ゼロ」になるわけではありません。むしろ、新しい役割や接客スタイルが生まれるのが実情です。たとえばセルフオーダーによってオーダーテイクの手間が減る一方で、お客様のスマホ操作をサポートしたり、テーブルを回って追加注文の状況をさりげなくチェックしたりといったタスクが増えるケースがあります。こうしたスタッフの立ち回りが円滑になれば、顧客は「テクノロジーがあっても、ちゃんと人の温もりを感じられる」と安心できるでしょう。

さらに、従来のオーダー作業に割いていた時間を別のサービス領域に再配分することができるため、接客力向上のチャンスとも言えます。具体的には、料理の詳細な説明やおすすめドリンクの提案、常連客とのコミュニケーションを深めるなど、「人にしかできない」付加価値を追求できるようになるのです。QRコード注文を導入した店舗の中には「顧客満足度が高まり、むしろチップが増えた」という海外事例も存在します。人が行わなくてもいい仕事は機械に任せ、人にしかできない接客に注力することで、ブランドイメージを高められるわけです。

また、スタッフ間の連携がこれまで以上に大切になります。オーダー情報はシステム上で一元管理されるとはいえ、ピークタイムの進捗チェック特別対応が必要なゲスト(アレルギーや誕生日など)のケアなどは人がしっかり確認し合う必要があります。POS管理のデータをリアルタイムで見られるようにしたり、キッチンやホール、レジとのコミュニケーションがスムーズに行える仕組みを整えたりすると、システムとスタッフの両面から顧客満足度を押し上げる効果が期待できます。

オペレーションマニュアルの作り方を詳しく知りたい方は、『飲食店のオペレーションを劇的に効率化!マニュアルの作成方法まで徹底解説!』の記事にまとめています。

11-2. DXを取り入れながら基礎を磨いてさらなる接客力へ

飲食店においては、どんなに便利なQRコード注文システムを導入しても、スタッフの接客レベルが低いままだと顧客満足度は伸び悩むでしょう。接客の基礎とは、挨拶、笑顔、身だしなみ、言葉遣いといった当たり前の要素に加えて、周囲の状況を察知して迅速に動く能力でもあります。DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入したからこそ、「人がやるべき本質的なサービス」に意識を集中できるようになり、さらなる接客力の向上を追求できると考えてみてください。

たとえばスタッフがホールを巡回するとき、これまではオーダーをとるだけで精一杯だったかもしれません。しかしセルフオーダー化でその負担が軽減されれば、テーブルの様子に目配りしながら、ドリンクの追加タイミングを見計らって声をかけるなど、細やかな配慮が可能になります。顧客からの「接客が丁寧」「居心地がいい」というポジティブ評価につながるでしょう。

さらに、店舗全体としてPDCAを回す体制が整いやすくなります。POSやQRコード注文のデータを分析し、繁忙時間帯や人気メニューを把握すれば、シフト調整や仕入れの最適化が行いやすいです。その結果、スタッフに無理なく働ける環境を提供できれば、スタッフのモチベーションや定着率も高まります。優れたスタッフが長く勤務し、お客様との信頼関係を積み重ねていくことで、店舗全体のブランド力が底上げされるという好循環が期待できます。


12章. QRコード注文の今後について

12-1. QRコード注文の導入効果と事例

これまで見てきたように、QRコード注文(QRオーダー)には「スタッフの負担軽減」「オーダーミスの削減」「顧客の追加注文がしやすい」といった多くのメリットが存在します。実際に導入している飲食店の事例を見ると、客単価の向上顧客満足度のアップが目に見えて表れるケースが少なくありません。とくに居酒屋やカフェなどでの追加ドリンクやデザートの注文が増えたという報告は多く、QRコード注文を導入することで「思いついたタイミングで頼める」のが効果を発揮しているようです。

また、忙しい時間帯にスタッフがオーダーを何度も取りに行かなくて済むことから、業務効率が改善され、人件費の削減サービス品質の向上につながったという声もよく聞きます。数値例として、ピークタイムにかかるオーダーテイク時間が平均30%短縮されたり、オーダーミスが半減したりしたというデータも示されています。こうした成果はスタッフのモチベーション維持にもプラスの影響を与え、最終的には「顧客満足度の高い店舗」としての評判を高めることにつながるのです。

海外事例に目を向けると、QRコード注文をいち早く導入したレストランでは、セルフチェックインやモバイル決済、ロボットによる料理運搬などと組み合わせることで、ほぼ完全に非接触のサービスを提供しているところもあります。コロナ禍を経て、安全性や衛生面を重視する顧客が増えたことから、非接触サービスを積極的に導入する店舗はこれからも増えると予測されます。

12-2. QRコード注文システムの今後の展望

QRコード注文システムは、飲食店におけるセルフオーダーという枠を超えて、さまざまな業態に広がる可能性があります。たとえば小売店での商品取り置きや、ホテルのルームサービス、イベント会場でのグッズ購入など、顧客とスタッフの直接的なやり取りを効率化できる場面は数多く存在します。スマホがこれだけ普及している現代において、QRコードを入り口として個別ページへ誘導する仕組みは、まだまだ活用の余地が大きいといえるでしょう。

また、AIやビッグデータの活用が進むことで、より高度なレコメンド機能や需要予測が行われる未来が見えています。顧客の購入履歴や時間帯データを分析し、AIが「このテーブルはあと一杯ドリンクを注文しそうだ」と予測してポップアップを表示するといった、注文促進の最適化がさらに進むかもしれません。さらに、POSとの連携が当たり前になれば、在庫管理だけでなく、廃棄ロス削減や原価計算の高度化といった経営改善にも寄与するでしょう。

このように、QRコード注文システムは単なる「注文のデジタル化」からスタートし、やがて店舗運営全体のDXを推進する強力なツールへと進化していく可能性があります。飲食店としては、単にシステム導入をゴールと捉えるのではなく、自店の未来像を描きながら、システムをどのように活用・発展させていくかを考えることが大切です。

12-3. QRオーダーの重要なポイント総括

ここまで解説してきたQRコード注文の要点を振り返ると、導入の目的を明確化することが最初のステップであり、その上で店舗オペレーション全体との整合性をとる工夫が求められるとわかります。特に、スタッフの動き方やメニュー管理の方法が大きく変わるため、導入前にしっかりと試験運用して不具合や課題を洗い出すことが成功への近道です。

また、顧客が「めんどくさい」と感じないよう、UI・UXを改善したり紙メニューや口頭注文の選択肢も用意したりする柔軟さも重要でした。テーブルやセルフで注文できるメリットは大きい一方、スマホ操作に慣れない層やスタッフとのコミュニケーションを楽しむ層への配慮を疎かにすると、かえって不満を募らせる可能性があります。結果的に、店舗が求める「顧客満足度向上」や「リピーター獲得」が遠のく恐れがあるので、導入前後のサポート体制には特に注意が必要です。

さらに、セキュリティ対策や個人情報保護の観点も忘れてはなりません。システムやサーバーの管理に加え、QRコードの偽装リスクへの対処や、顧客情報をどう扱うかの方針を明確にすることで、店舗への信頼感が高まります。最終的には、適切なシステム導入 + 接客力の向上 + 総合的な運用改善が合わさって、QRオーダーの真のメリットを享受できるようになります。

12-4. 新たなデバイス連動と顧客体験の進化

今後のトレンドとして期待されるのは、新しいデバイスとの連動です。たとえば、ウェアラブル端末(スマートウォッチなど)を使って注文通知をスタッフに送る仕組みが普及すれば、スタッフがホールのあちこちを歩き回らなくても、リアルタイムで追加オーダーを知ることができます。また、音声アシスタント技術を活用して、顧客がスマホに話しかけるだけで注文内容を入力できるようになる可能性もあります。視覚障害をもつ顧客や高齢者にとっては、タッチパネル操作よりもハードルが低いかもしれません。

さらに、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)との組み合わせによって、店舗での食事体験が大きく変化するシナリオも考えられます。ARメガネをかけるとテーブル上にバーチャルな料理の見本が表示され、サイズ感や盛り付けイメージを確認したうえでオーダーする、といった未来が現実になるかもしれません。飲食店のセルフオーダーがここまで進化すれば、まさに「体験そのものを売る」エンターテインメント性の高い店舗が生まれることでしょう。

こうした技術革新が進む一方、全ての店舗にとって最先端技術が必要というわけではありません。重要なのは、自店のコンセプトや客層、オペレーションに合った形でテクノロジーを取り入れることです。QRコード注文を入り口として、必要に応じて他のシステムやデバイスを追加導入していくという柔軟なアプローチが、顧客体験を進化させながら店舗を持続的に成長させる鍵となるでしょう。


13章. QRコードオーダーについてよくある疑問

13-1. 通信料や会計時の負担はどうなる?

スマホを使って注文すると、通信料が顧客側でかかるのではないでしょうか? また、会計は結局どうなるのか、という疑問をよく耳にします。

一般的に、QRコード注文を行う際の通信量はそれほど大きくありません。テキストデータと画像数枚ほどで済む場合がほとんどなので、SNSや動画視聴と比べると負担は軽微です。とはいえ、スマホの電波状況が悪い店舗や地下フロアなどでは不安を感じる顧客もいるかもしれません。その場合は、無料Wi-Fiを整備して案内することでストレスを軽減できます。

また、会計方法は導入するシステムや店舗方針によってさまざまです。キャッシュレス決済までスマホ上で完結させるところもあれば、注文はセルフだが会計は従来通りレジで行うというハイブリッド方式もあります。顧客が望む支払い手段(現金含む)に対応できる柔軟さを保ちながら、店舗のオペレーションを最適化すると良いでしょう。

13-2. スマホ未所持・操作に不慣れな顧客への対応

スマホを持っていない、高齢で操作が難しい方が来店した場合はどうすればよいですか?

ハイブリッド運用を推奨します。スマホを持たない顧客や操作に抵抗を感じる顧客には、スタッフが直接オーダーを取るか、紙メニューを提供する形が無難です。全テーブルを完全セルフ化してしまうと、どうしても「使えない人」を取りこぼすリスクがあり、不満やクレームにつながる可能性があります。あくまで選択肢の一つとしてQRコード注文を提示し、「必要な場合はスタッフを呼んでください」と案内しておくことで、満足度を下げずに運用できるでしょう。

13-3. システムの料金・無料プランはあるのか?

できるだけ低コストで試したいが、無料プランや格安プランはあるのでしょうか?

実際に無料プランや月額数千円以下で利用可能なサービスは複数存在します。前述した「QR注文くん」や他社の無料枠を用意しているシステムなどが代表例です。ただし、無料プランは機能制限やサポートに条件があることが多いため、自店舗の要求仕様と合うかを慎重に確認してください。多店舗展開や本格的なマーケティング機能を利用する際は、有料プランへアップグレードする必要があるかもしれません。

13-4. 「めんどくさい」と感じる顧客への対策

セルフオーダーに抵抗感を持つお客様が、「わざわざスマホを使うのは面倒だ」と言っている場合は?

そのような声は一定数あります。対策としては、まずUIをできるだけシンプルにすることが基本です。トップページに人気メニューをまとめる、カート機能をわかりやすくする、誤操作を防ぐデザインにするなどで、「面倒さ」を減らせます。また、スタッフが初回だけ横でサポートし、「慣れるとすぐですよ」と声をかけるだけでも印象がガラリと変わります。もちろん、「口頭で頼みたい方はお呼びください」と併記しておけば、顧客が強制感を抱かずに済むでしょう。

13-5. 直接注文や併用運用は可能?

QRコード注文を導入しても、希望があれば直接スタッフに注文したいという人もいるはず。その併用はアリ?

十分にアリです。 むしろ、多くの店舗がそうした二本立て運用を選択しています。完全セルフオーダーに振り切る店舗もありますが、「新規顧客や年配の方にはスタッフ対応、慣れている方はセルフオーダー」という柔軟さを持つ店舗のほうが、顧客満足度を幅広い層で確保しやすいです。スタッフ側も導入初期の混乱を減らしながら、徐々にセルフオーダー利用率を高めていくとスムーズでしょう。

13-6. 個人情報保護とセキュリティは大丈夫?

システムにログインさせたり個人情報を扱ったりしているなら、セキュリティ面が心配です。

QRコード注文システムの多くは、会員登録不要でメニューを閲覧できる設計が主流です。そのため個人情報の取り扱いリスクは比較的低めですが、もし何らかの形で顧客情報を集める場合は暗号化通信(HTTPS/TLS)の採用やデータ管理体制の周知、プライバシーポリシーの整備が不可欠です。また、QRコード自体の偽装や貼り替えに備えて、店舗側で定期点検するなどの対策を怠らないようにしましょう。システム提供会社のセキュリティアップデート状況やサポート体制も事前に確認しておくと安心です。

13-7. そのほかのよくある質問

アップデートやシステム保守、バージョンアップ頻度はどうなっている?

ベンダーごとに異なります。クラウドサービスの場合、定期的に機能追加や不具合修正が行われることが多いです。店舗側は最新バージョンを自動的に利用できるメリットがあります。一方、オンプレミス型やカスタマイズが多い場合は、アップデートが有償になるケースもあるので、導入前の契約時にチェックしておきましょう。

多言語対応や写真表示はどこまでできる?

システムによりますが、英語・中国語・韓国語など数か国語に対応しているものも少なくありません。写真や説明文を各言語で切り替えられる機能を持つサービスもあり、インバウンド客が多いエリアでは特に有効です。ビジュアルを重視した「写真ベースのUI」は、言語が読めない人でも直感的に注文できる利点があります。


14章. QRコード注文を活用して飲食店経営をより効率化しよう!

14-1. DXを取り入れながら接客力を高める意義

ここまで見てきたように、QRコード注文(QRオーダー)は飲食店のオペレーションを大きく変える可能性を秘めています。従来の人手がかかるオーダーテイクを省力化することで、スタッフはより付加価値の高い接客や顧客コミュニケーションに専念できるようになります。特にコロナ禍を経て、「非接触ニーズ」が急速に高まった今、セルフオーダーやテーブルオーダーシステムを導入する店舗は増加傾向にあります。

ただし、単にシステムを導入するだけでは不十分です。顧客によっては「めんどくさい」「操作がわからない」「スタッフと話したいのに…」と感じるケースも少なくありません。だからこそ、店舗としてはDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れつつ、接客力の本質を見失わないようにする必要があります。紙メニューや口頭オーダーの選択肢を残したり、スマホ操作のサポートを丁寧に行ったりといった工夫が、お客様満足度を支える要となるでしょう。

結果的に、人がやらなくていい作業はシステムに任せ、人にしかできない心地よい接客を強化するというスタイルが、これからの飲食店の競争力を高める上で不可欠です。DXとスタッフのホスピタリティを両立させることで、他店との差別化を図り、顧客の心をつかむ飲食体験を創造できるでしょう。

14-2. 今後の飲食店経営におけるQRコード注文の可能性

最後に、QRコード注文が切り拓く今後の可能性についてまとめます。すでに述べたように、セルフオーダーシステムは単なるオーダーツールにとどまらず、POSや会員管理、決済サービスとの連携を通じて店舗運営全体のDXを推進する役割を担いつつあります。今後は、AIによる需要予測やレコメンドが加速し、お客様の好みや注文履歴に合わせたパーソナライズされた提案が当たり前になるかもしれません。

また、ウェアラブル端末やAR技術、接客ロボットなどのテクノロジーと連動することで、新たな顧客体験を提供できる可能性も広がっています。たとえば、来店した瞬間にスマートウォッチがメニュー提案を通知する、テーブル上にARで料理の3Dモデルが浮かび上がるなど、飲食店をエンターテインメントの場として捉える発想が進みそうです。コロナ後の世界では、非接触・省人化と、高度なサービス性や楽しさを両立させる飲食店が、より一層注目を集めるでしょう。

一方で、やはり最終的に選択するのは顧客自身です。店舗がいくらテクノロジーを駆使しても、「人との交流を求める」「スタッフの生の声がほしい」というニーズは絶対になくなりません。ですから、QRコード注文を中心に据えながらも、口頭オーダーとの併用やスタッフのプレゼンスを保つハイブリッド戦略が、今後もしばらくは主流になると考えられます。総合すると、QRコード注文は業務効率化や顧客満足度向上、売上アップに寄与するだけでなく、店舗のブランディングやマーケティングを強化する「未来への入り口」として機能するようになってきています。飲食店経営において、導入を慎重に検討し、自社の方針や客層に合った活用方法を見いだすことが、DX時代に生き残るための一つのカギになるでしょう。そして、そこに接客力というアナログ要素を融合させることで、一歩先を行く魅力的な店舗を作り上げることができます。

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この記事を書いた人

鵜飼 あきひろのアバター 鵜飼 あきひろ 株式会社Grill 取締役/店舗経営・集客コンサルタント

2014年にオイシックス株式会社で海外事業を担当後、香港・中国現地法人の社長に就任。
2017年に起業した株式会社Emooveでは代表として事業を成長させ売却・EXIT。
現在は株式会社Grillの取締役COOとして複数の飲食店舗を経営する傍ら、現場目線で成果の出る集客支援に取り組んでいる。
豊富な実践経験と経営視点を活かし、小さなお店の“ファンづくり”をサポートするのが信条。

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