「いつか自分のサロンを持ってみたい…」 「家事や育児と両立しながら、好きなことで収入を得たい」
そんな想いを胸に、自宅サロンの開業を夢見ているあなたへ。
「でも、何から始めたらいいかわからない」「資金はどれくらい必要?」「本当に私でもできるのかな…」といった不安で、一歩を踏み出せずにいませんか?
ご安心ください。この記事は、かつて6畳の自室からエステサロンを始め、今では予約の取れないサロンへと成長させた私自身の経験と、多くの成功事例・失敗事例の分析に基づき、あなたの夢を実現するための具体的で実践的なロードマップを余すところなくお伝えします。
第1章 自宅サロンとは?基本から種類までを徹底解説

自宅サロン開業の旅を始める前に、まずはその定義と全体像を正しく理解しましょう。「自宅サロン」と似た言葉との違い、あなたに合った業種、そして開業の可否を左右する「物件」という土台について、基本からしっかりと解説します。
1-1. 「おうちサロン」「プライベートサロン」との違いは?
「自宅サロン」と一言で言っても、「おうちサロン」や「プライベートサロン」といった様々な呼び方があり、混乱してしまう方も少なくありません。それぞれの言葉が持つニュアンスを理解し、あなたの目指すサロンのコンセプトに合わせて使い分けることが重要です。
自宅サロン:
自宅の一部を利用して運営するサロンの総称。最も一般的で、幅広い業種を含みます。
おうちサロン:
「自宅サロン」とほぼ同義ですが、よりアットホームで親しみやすい、温かみのある雰囲気を強調したい場合に使われることが多い言葉です。
プライベートサロン:
「お客様一人ひとりのための、貸し切り空間」という意味合いが強い言葉です。自宅サロンの多くはこれに該当しますが、店舗を借りてマンツーマンで運営している場合も「プライベートサロン」と呼びます。特別感や高級感を演出したい場合に効果的です。
サロンコンサルタントからのアドバイス
名称 | 主な特徴 | 与える印象 |
---|---|---|
自宅サロン | 自宅の一部で運営するサロンの総称 | 一般的、ニュートラル |
おうちサロン | 親しみやすさ、アットホーム感を強調 | 温かい、親近感が湧く |
プライベートサロン | 貸し切り、マンツーマンでの施術を強調 | 特別感、高級感、安心感 |
1-2. 自宅で開業できるサロンの種類一覧

自宅サロンで提供できるサービスは多岐にわたります。ここでは代表的な業種と、それぞれの特徴、開業のしやすさなどを比較します。ご自身のスキルや興味、そして市場の需要を照らし合わせて、最適な業種を見つけましょう。
業種 | 仕事内容 | 開業のしやすさ | 必要な資格 | 平均単価(目安) |
---|---|---|---|---|
ネイルサロン | ネイルケア、ジェルネイル、ネイルアート等の施術 | ★★★★★ | 不要 | ¥5,000~¥12,000 |
エステサロン | フェイシャル、ボディトリートメント、脱毛等の施術 | ★★★★☆ | 不要(※1) | ¥8,000~¥20,000 |
リラクゼーション | アロママッサージ、整体、リフレクソロジー等 | ★★★★☆ | 不要(※2) | ¥6,000~¥15,000 |
まつげエクステ | まつげエクステ、まつげパーマの施術 | ★★☆☆☆ | 美容師免許(必須) | ¥5,000~¥10,000 |
カウンセリング | 心理カウンセリング、コーチング、占い等 | ★★★★★ | 不要(※3) | ¥10,000~¥30,000 |
(※1)ただし、専門的な脱毛(医療脱毛等)は医師法に抵触します。
(※2)「マッサージ」を謳うには「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要です。
(※3)臨床心理士など信頼性の高い民間資格は多数存在します。
1-3. 持ち家?賃貸?物件タイプ別の開業可否と注意点
「私の家でサロンってできるのかな?」これは誰もが最初に抱く疑問です。物件のタイプによってクリアすべき条件が異なるため、必ず事前に確認しましょう。
持ち家(一戸建て)の場合:
最も自由度が高いですが、注意点もあります。「第一種低層住居専用地域」など、用途地域によっては事業用として使用できる面積に制限がある場合があります。また、増改築を行う場合は建築基準法や消防法の確認が必要です。
賃貸物件(アパート・マンション)の場合:
最重要確認事項です。賃貸借契約書に「事業利用不可」「住居専用」といった記載がないか必ず確認してください。無断で営業を開始すると、契約違反で退去を求められる最悪のケースも。必ず事前に大家さんや管理会社に相談し、許可を得る必要があります。
分譲マンションの場合:
マンションの「管理規約」が法律よりも優先されます。管理規約で事業活動が禁止されている場合、開業はできません。不特定多数の人の出入りを禁じているケースが多いため、管理組合への確認が必須です。
第2章 自宅サロンを開業する4つの大きなメリット
なぜ多くの人が店舗ではなく「自宅サロン」という形を選ぶのでしょうか。それは、他にはない大きなメリットがあるからです。ここでは、実際に自宅サロンを運営しているからこそ語れる、4つの魅力について、具体的な数値や事例を交えながらご紹介します。
2-1. メリット①:時間の制約が少なく、自由な働き方ができる
会社員時代、あなたは自分の時間をコントロールできていましたか?自宅サロン最大の魅力は、なんといっても「時間の自由」です。
- 営業時間を自分で決められる: 子供の送り迎えや通院など、ライフスタイルに合わせて営業時間を設定できます。
- 休日を自由に設定できる: 土日を休みにしたり、逆に平日を休みにしたりと、自分のペースで働けます。
- 予約のコントロールが容易: 1日に受け入れる人数を制限すれば、体力的な負担も調整可能です。
2-2. メリット②:開業資金が少なく、低リスクで始められる

開業したくても、一番のハードルになるのが「資金」の問題。自宅サロンは、この初期投資を劇的に抑えることができます。
店舗サロンの場合、数百万円の開業資金が必要になることも珍しくありません。しかし、自宅サロンなら、家賃や保証金、高額な内装工事費が不要なため、数十万円からでもスタートが可能です。
店舗サロン vs 自宅サロン 初期費用比較
これは、私が開業時にシミュレーションした都内でのエステサロン開業費用の比較表です。
費用項目 | 店舗サロン(10坪想定) | 自宅サロン(6畳想定) | 差額 |
---|---|---|---|
物件取得費(保証金等) | ¥1,200,000 | ¥0 | – ¥1,200,000 |
内装・設備工事費 | ¥1,500,000 | ¥100,000(DIY) | – ¥1,400,000 |
施術ベッド・什器 | ¥500,000 | ¥300,000 | – ¥200,000 |
広告宣伝費 | ¥300,000 | ¥50,000 | – ¥250,000 |
合計 | ¥3,500,000 | ¥450,000 | – ¥3,050,000 |
ご覧の通り、その差は歴然です。この「低リスクで始められる」という点が、失敗を恐れずに挑戦できる大きな後押しになりました。
2-3. メリット③:家事や育児と両立しやすい
「仕事と家庭、どちらも大切にしたい」。これは多くの女性が抱える願いではないでしょうか。自宅サロンは、その願いを叶えるための最適な働き方の一つです。
- 通勤時間ゼロ: 往復の通勤時間がなくなるだけで、1日1〜2時間の余裕が生まれます。この時間を家事や自己投資に充てることができます。
- すきま時間を有効活用: お客様との予約の合間に夕食の準備をしたり、洗濯物を畳んだりと、時間を効率的に使えます。
- 子供のそばにいられる安心感: 子供が急に熱を出した時など、緊急時にも対応しやすいのは大きなメリットです。
1日のタイムスケジュール
子供の育児とサロンワークを両立させていた方の、とある一日のスケジュールです。通勤時間がないだけで、ここまで時間に余裕が生まれます。
- 7:00 起床・朝食準備
- 8:30 子供を保育園へ送る
- 9:00 掃除・サロン準備
- 10:00 お客様①施術
- 12:00 昼食・休憩・SNS更新
- 13:30 お客様②施術
- 15:30 事務作業・明日の準備
- 16:30 子供のお迎え
- 17:00〜 家族との時間
2-4. 【新規追加】メリット④:お客様と深い関係性を築きやすい
流れ作業になりがちな大型サロンと違い、自宅サロンは完全なプライベート空間。これが、お客様との間に特別な絆を生み出します。
マンツーマンでじっくりと時間をかけてカウンセリングを行い、お客様一人ひとりの悩みやストーリーに深く寄り添うことができます。この丁寧な関わりがお客様の心に響き、「私のことを一番わかってくれるサロン」という絶対的な信頼に繋がるのです。結果として、価格競争に巻き込まれない、熱心なリピーター(ファン)の獲得が実現します。
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第3章 自宅サロン開業の4つのデメリットと対策

夢のようなメリットがある一方で、自宅サロンには見過ごせないデメリットも存在します。しかし、事前にこれらを理解し、正しい対策を講じておけば、何も恐れることはありません。ここでは、私が経験した失敗談も交えながら、4つのデメリットとその具体的な乗り越え方を解説します。
3-1. デメリット①:立地を選べない
自宅サロン最大の弱点は、集客に有利な駅前や商業地などに場所を「選べない」ことです。自宅が駅から遠かったり、分かりにくい場所にあったりする場合、それだけでお客様の足は遠のいてしまいます。
【対策】 立地の不利は、情報発信力でカバーするしかありません。
- Web集客の徹底: Instagramやブログで専門的な情報を発信し、「この人に施術してもらいたい」と思わせる魅力を伝える。
- アクセスの丁寧な案内: Webサイトに写真付きで最寄り駅からの道順を載せる、動画で案内するなど、お客様が不安なく辿り着ける工夫を凝らす。
- 送迎サービスの提供: 最寄り駅まで車で送迎するサービスも、立地の不利をカバーする強力な武器になります。
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3-2. デメリット②:仕事とプライベートの区別が難しい
生活空間と仕事場が同じだと、どうしてもオンとオフの切り替えが曖昧になりがちです。「お客様が帰った後も、なんとなく仕事のことを考えてしまう」「休日なのに、つい事務作業をしてしまう」…これでは心身ともに休まりません。
【対策】 意識的に「公私混同」を断ち切るルール作りが必要です。
- 空間を分ける: サロン専用の部屋を設けるのが理想。難しい場合は、パーテーションやカーテンで施術スペースを区切るだけでも効果があります。
- 時間を区切る: 「18時以降は絶対に仕事をしない」など、営業時間を厳守する。仕事用のスマートフォンを用意し、時間外は電源を切るのも有効です。
- 仕事着に着替える: 仕事の前に制服やユニフォームに着替えることで、気持ちのスイッチを切り替えることができます。
3-3. デメリット③:周囲の理解が必要
自宅サロンは、あなた一人だけのものではありません。同居する家族、そしてご近所さんの理解と協力があって初めて成り立ちます。
【対策】
- 家族へのプレゼン: なぜサロンをやりたいのか、どれくらいの収入を見込んでいるのか、家事や育児との両立プランなどを具体的に説明し、応援してもらえる関係を築きましょう。
- 近隣への事前挨拶: 開業前に必ず挨拶に伺い、「完全予約制であること」「静かな環境を保つこと」などを丁寧に説明します。良好なご近所付き合いが、無用なトラブルを防ぎます。
3-4. デメリット④:集客や経営もすべて自分で行う必要がある
「好きな施術だけしていればいい」というわけにはいかないのが、一人オーナーの現実です。お客様を施術する技術者であると同時に、あなたは「経営者」でもあります。
【対策】 全ての業務を一人で完璧にこなそうとせず、効率化とアウトソーシングを考えましょう。
- 集客: Instagramやブログでの情報発信、チラシ作成など。
- 経理: 日々の売上管理、経費計算、確定申告。
- 総務: 備品の発注・在庫管理、予約管理、顧客管理。
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第4章 自宅をサロンとして開業するために必須な8つのステップ
ここからは、いよいよ自宅サロン開業に向けた具体的な行動計画です。「何から手をつければいいの?」という疑問が、この章を読み終える頃には「次に何をすべきか」という明確なTODOリストに変わっているはずです。8つのステップを一つずつ、着実にクリアしていきましょう。
4-1. 【STEP1】事業計画書を作成する
「なんとなく」で始める事業は、必ず「なんとなく」で終わります。事業計画書は、あなたのサロンの成功を左右する最も重要な「設計図」です。融資を受ける際の必須書類であることはもちろん、あなた自身の思考を整理し、進むべき道を照らす羅針盤となります。
【事業計画書に盛り込むべき主な項目】
事業概要(サロンのコンセプト): 誰に(ターゲット)、何を(サービス)、どのように(価値提供)提供するのか。
開業の動機: なぜこのサロンを始めたいのか、あなたの情熱を言語化する。
セールスポイント: 他のサロンにはない、あなたのサロンだけの強みは何か。
販売・集客戦略: どのようにお客様に知ってもらい、予約してもらうか。
必要な資金と調達方法: 開業にいくら必要で、そのお金をどう用意するのか。
収支計画: 開業後の売上、経費、利益の見通しを立てる(最低でも1年分、できれば3年分)。
4-2. 【STEP2】開業資金を用意する
設計図が完成したら、次はその実現に必要な「資金」の準備です。自己資金だけで足りない場合は、賢く外部資金を活用しましょう。
自己資金: まずは、ご自身で用意できる金額を確定させます。
融資: 個人事業主の強い味方が、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。無担保・無保証人で最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)までの融資が可能で、多くのサロンオーナーがこの制度を利用しています。
補助金・助成金: 返済不要の資金として、ぜひ活用したいのが補助金・助成金です。代表的なものに「小規模事業者持続化補助金」があり、チラシ作成やホームページ制作費などが対象になります。公募期間が限られているため、中小企業庁のサイトなどで常に最新情報をチェックしましょう。
4-3. 【STEP3】什器をそろえる
施術ベッドやチェア、ワゴン、タオルウォーマーなど、サロン運営に必要な備品(什器)を揃えます。すべてを新品で揃えると高額になるため、賢くコストを抑える工夫が必要です。
新品で購入すべきもの: お客様の肌に直接触れるタオル類や、衛生管理に関わる器具。
中古品で十分なもの: ワゴンや椅子、ちょっとしたインテリアなど。中古品専門サイトやリサイクルショップを活用しましょう。
レンタルを活用する: 高額な美容機器などは、まずレンタルで試してみて、導入効果が見込める場合に購入を検討するのも賢い方法です。
先輩オーナーが語る備品投資の成功・失敗
4-4. 【STEP4】内装を整える

自宅サロンの空間は、あなたのサロンのコンセプトを表現する「顔」です。生活感を完全に消し去り、お客様が「また来たい」と思える非日常的な空間を演出しましょう。
生活感を隠す: 生活感が出やすいテレビや私物は、布で覆うか、見えない場所に移動させます。
色使い: ベースカラー(壁・床)、メインカラー(カーテン・ベッドカバー)、アクセントカラー(小物)の3色にまとめると、統一感のある洗練された空間になります。
五感を刺激する: 心地よいBGM、コンセプトに合わせたアロマの香り、間接照明の柔らかな光などを活用し、リラックスできる雰囲気を五感で演出します。
4-5. 【STEP5】許可や届出を申請する
事業を開始するためには、法的に定められた手続きが必要です。これを怠ると、後々大きなトラブルになりかねません。
開業届(全員必須): 事業を開始した日から1ヶ月以内に、管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。同時に、節税メリットの大きい「青色申告承認申請書」も提出するのが鉄則です。
美容所開設届(まつエク・美容師など): まつげエクステや、美容師免許が必要な施術を行う場合は、保健所の検査を受け、「美容所」としての登録が必須です。施設の構造や衛生管理に厳しい基準があるため、内装工事の前に必ず保健所に相談しましょう。
その他: 深夜0時以降に営業する場合は「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」が必要になるなど、業種によって必要な許認可が異なります。
4-6. 【STEP6】集客を行う
どんなに素晴らしいサロンを作っても、お客様にその存在を知ってもらえなければ予約は入りません。オンラインとオフライン、両輪での集客戦略を立てましょう。
オンライン集客:
Instagram: 施術風景やビフォーアフター写真、お客様の声などを投稿し、サロンの魅力を視覚的に伝える。
Googleビジネスプロフィール: 「地域名+業種(例:渋谷 ネイルサロン)」で検索した際に、地図上に表示されるための必須ツール。無料で登録できます。
ブログ/ホームページ: 専門的な知識やサロンへの想いを発信し、信頼性を高める。
オフライン集客:
チラシのポスティング: 商圏内のターゲット顧客が住んでいそうなマンションや地域に絞って配布する。
近隣店舗への設置依頼: ターゲット層が同じ近所のカフェや美容室に、チラシを置かせてもらう。
オープン前から予約満席にしたSNS戦略
4-7. 【STEP7】キャッシュレス決済に対応する
「現金しか使えない」は、今やお客様がサロンを選ばない理由になり得ます。お客様の利便性を高め、機会損失を防ぐためにも、キャッシュレス決済の導入は必須と考えましょう。
スマートフォンやタブレットと、数千円のカードリーダーがあれば簡単に導入できるサービスが主流です。代表的なサービスには「Square」「STORES決済」「Airペイ」などがあり、決済手数料や導入スピードを比較して選びましょう。
自宅サロンでもキャッシュレス決済は必須です。各サービスの違いや選び方を『個人事業主のキャッシュレス決済導入なら!絶対おすすめな端末5選と選び方を徹底解説!』で解説しています。


4-8. 【STEP8】予約システムを導入する
施術中に予約の電話が鳴って集中できない、営業時間外の問い合わせに対応できない…。そんな一人オーナーの悩みを解決するのが「予約システム」です。
- 24時間365日、自動で予約受付: お客様は思い立った時にいつでも予約でき、あなたは機会損失を防げます。
- スケジュール管理の自動化: ダブルブッキングの心配がなくなります。
- 顧客情報の蓄積: お客様の来店履歴や施術内容がデータとして蓄積され、カルテとしても活用できます。
無料から使えるサービスも多く、「Square予約」「STORES予約」「tol(トル)」などが個人サロンに人気です。
第5章 開業後に後悔しない!重要な5つの注意点!
開業準備が整い、いよいよオープン!しかし、その前に、そして運営を始めてからも、常に心に留めておくべき重要な注意点があります。これらを知っているかどうかで、サロンを長く安定して続けられるかが決まります。
5-1. 注意点①:契約を確認する(賃貸・マンションの場合)
第1章でも触れましたが、何度でも強調したい最重要項目です。賃貸物件や分譲マンションで開業する場合、契約書や管理規約の内容が絶対です。
- 確認事項: 「事業利用不可」「住居専用」「不特定多数の人の出入り禁止」といった条項がないか。
- 怠った場合のリスク: 近隣からの通報により発覚し、管理会社や大家さんから営業停止や強制退去を求められる可能性があります。これは、サロンの死活問題に直結します。
- 対策: 必ず事前に管理会社や大家さん、管理組合に相談し、書面で許可を得ましょう。口約束はトラブルの元です。
不動産管理のプロからの警告
5-2. 注意点②:近所へ挨拶をする
あなたのサロンは、地域社会の一部です。良好なご近所付き合いは、無用なトラブルを避けるための最高の保険になります。
- 挨拶のタイミング: 開業の1〜2週間前がベスト。
- 挨拶の範囲: 両隣、上下階、そしてよく顔を合わせる地域の班長さんなど。
- 伝えるべき内容: 自分の名前、どのようなサロンを始めるのか、完全予約制で静かな環境を保つこと、ご迷惑をおかけしないよう細心の注意を払うこと。
- 手土産: 500円〜1,000円程度のタオルや焼き菓子などが無難です。
5-3. 注意点③:家族の理解を得る
自宅サロンは、あなた一人の城ではありません。同居する家族の生活空間に、お客様という「他人」を招き入れることになります。家族の理解と協力なくして、サロンの成功はありえません。
- 事前に決めておくべきルール:
- お客様がいる時間帯に、家族が通る動線はどうするか。
- 生活音(テレビの音、子供の声など)への配慮。
- 家族がサロンの備品に触れない、など。
- 感謝を伝える: 協力してくれる家族への感謝の気持ちを、言葉や形で定期的に伝えることも大切です。
5-4. 注意点④:セキュリティーに配慮する
お客様の安全はもちろん、あなた自身の安全を守ることは、経営者の最も重要な責務の一つです。特に女性一人で運営する場合、セキュリティ対策は万全を期してください。
- 物理的な対策:
- 玄関の鍵をオートロックやスマートロックにする。
- 玄関や施術スペースが見えない場所に、ダミーでも良いので防犯カメラを設置する。
- 運用上の対策:
- 予約は身元が確認できる紹介者や、事前決済が完了したお客様のみに限定する。
- 男性のお客様を受け入れる場合は、紹介のみにするなどのルールを設ける。
- 万が一に備え、緊急ブザーや警察にすぐ連絡できる体制を整えておく。
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5-5. 注意点⑤:キャンセルに備える
個人サロンにとって、無断キャンセルや直前のキャンセルは、売上に直接響く深刻な問題です。感情的にならず、仕組みで対策しましょう。
- キャンセルポリシーの明記:
- 「前日キャンセルは料金の50%、当日・無断キャンセルは100%」など、明確なルールを定めます。
- 予約時やホームページ、リマインドメールなど、お客様の目に触れる全ての場所に明記し、事前に同意を得ます。
- 事前決済の導入:
- 最も効果的な対策です。予約時にクレジットカードで決済してもらうことで、無断キャンセルの発生率を劇的に下げることができます。
第6章 自宅サロンでの予約・決済システムの活用方法!

一人サロンオーナーは、技術者であり、経営者であり、経理担当であり、広報担当でもあります。限られた時間の中で最大の成果を出すためには、「やらなくていい仕事」を徹底的に手放すことが重要です。ここでは、あなたの右腕となるITツール(予約・決済システム)の活用法を解説します。
6-1. 予約システム導入で、顧客管理を効率化
「予約したい」と思ったお客様の熱量を逃さないこと。それが予約システム最大のメリットです。
- 24時間365日、予約の取りこぼしゼロ: あなたが施術中であろうと、睡眠中であろうと、システムが自動で予約を受け付けてくれます。電話やDMでのやり取りにかかっていた時間を、丸ごと削減できます。
- 顧客管理(CRM)の自動化:
- お客様の名前や連絡先、来店日、施術メニューなどの情報が自動で蓄積されます。
- 「最後の来店から3ヶ月経ったお客様に、自動でリマインドメールを送る」といった設定も可能で、リピート率向上に直結します。
Square予約でリピート率が20%向上!
6-2. 事前決済で無断キャンセル対策と会計の手間を削減
第5章でも触れましたが、事前決済は単なるキャンセル対策にとどまらない、多くのメリットをもたらします。
- 無断キャンセルの強力な抑止力: 事前に支払いが発生することで、お客様の予約に対する責任感が格段に高まります。
- 当日の会計業務がゼロに: 施術後のお会計や、お釣りの計算といった手間が一切なくなります。その分、お客様との会話や、お見送り、次の準備に時間を充てることができ、顧客満足度の向上にも繋がります。
- スマートなサロン体験の提供: 事前に支払いが済んでいることで、お客様は施術が終わればそのままスムーズに退店できます。このスマートな体験が、サロンのブランドイメージを高めます。
第7章 理想の自宅サロンの開業に向けて一歩を踏み出そう
ここまで、自宅サロン開業のための具体的なロードマップを、ステップバイステップで解説してきました。開業のメリット・デメリットから始まり、計画、資金調達、空間づくり、法的手続き、そして集客と運営の効率化まで、網羅的に学んできましたね。
たくさんの情報に、「やっぱり大変そう…」と感じたかもしれません。しかし、一つ一つのステップは、決して乗り越えられない壁ではありません。大切なのは、完璧を目指すことではなく、まずは最初の一歩を踏み出す勇気です。
この記事で解説した全てのステップを、一度にやろうとする必要はありません。まずは、あなたが「これならできそう」と思えることから始めてみましょう。
- 今日のTODOリスト案
- ノートを1冊用意する: これから、そのノートがあなたの「事業計画書」の第一稿になります。
- この記事の第4章【STEP1】を参考に、あなたのサロンのコンセプトを書き出してみる:
- あなたは、誰に喜んでもらいたいですか?(ターゲット)
- あなたは、何(どんなサービス)でその人を幸せにしたいですか?(提供価値)
- あなたのサロンに来たら、お客様はどんな気持ちになれるでしょうか?(コンセプト)
- あなたの家の、どの部屋をサロンにするか決めて、写真を撮ってみる: そこから、どんな空間にしたいか、夢を膨らませてみましょう。
この小さな一歩が、あなたの夢を現実へと動かす、大きな原動力になります。計画はいつでも修正できます。大切なのは、頭の中だけで終わらせず、手を動かし、形にし始めることです。