個人事業主は小規模企業共済に加入すべき?制度や掛金の種類と注意点を解説!

個人事業主は小規模企業共済に加入すべき?制度や掛金の種類と注意点を解説!
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個人事業主として独立し、日々の業務に追われる中で、「将来のお金の不安」を感じたことはありませんか?会社員時代には当たり前だった退職金や手厚い厚生年金がなく、老後の生活や、万が一事業が立ち行かなくなった時のことを考えると、漠然とした不安に駆られる方も少なくないでしょう。

しかし、そんな個人事業主や小規模企業の経営者のために、国が用意してくれた「最強のセーフティネット」が存在します。それが小規模企業共済制度です。

この制度は、単なる積立ではありません。毎月の掛金が全額所得控除になり、劇的な節税効果を生み出しながら、将来の退職金を着実に準備できるという、まさに一石二鳥の仕組みです。

この記事では、実際に小規模企業共済に加入して5年目になる筆者が、自らの経験と専門家への取材に基づき、制度の基本から、知られざるメリット、そして加入前に必ず確認すべきデメリットまで、どこよりも分かりやすく徹底的に解説します。読了後には、あなたが今すぐ何をすべきかが明確になっているはずです。


目次

第1章 個人事業主が加入すべき「小規模企業共済」とは?

第1章 個人事業主が加入すべき「小規模企業共済」とは?

まずは、小規模企業共済が一体どのような制度なのか、その全体像を掴むところから始めましょう。この制度の本質を理解することが、賢く活用するための第一歩です。

1-1. 小規模企業共済とは個人事業主の退職金制度

小規模企業共済制度とは、簡単に言えば「国が運営する、個人事業主や会社の役員のための退職金制度」です。独立行政法人中小企業基盤整備機構(通称:中小機構)が運営しており、法律に基づいて作られた安心・安全な制度です。

事業をやめたり、役員を退職したりした場合に、それまで積み立ててきた掛金に応じた「共済金」を受け取ることができ、廃業後の生活資金や、事業を再建するための資金として活用することを目的としています。

1-2. 共済金は4種類!受け取り方の違いを理解しよう

小規模企業共済で受け取れるお金(共済金)は、請求する理由によって大きく4つの種類に分かれます。どの種類で受け取るかによって、もらえる金額が大きく変わるため、この違いを理解しておくことは非常に重要です。

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共済金の種類主な請求事由特徴
共済金A・個人事業の廃業・法人の解散掛金納付月数が6ヶ月以上あれば受け取れる。最も給付率が高い。
共済金B・老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上納付)共済金Aとほぼ同等の高い給付率で受け取れる。
準共済金・個人事業を法人成りし、役員にならなかった場合・65歳未満での任意解約掛金納付期間に応じて給付されるが、共済金A/Bよりは給付率が低い。
解約手当金・任意解約・掛金を12ヶ月以上滞納した場合最も給付率が低く、特に20年未満での任意解約は元本割れする。12ヶ月未満の解約では0円。

【この章のチェックポイント】 
小規模企業共済は国が運営する経営者のための退職金制度であり、受け取りは「廃業」か「65歳以上の老齢給付」が最も有利である、と覚えておきましょう。


第2章 個人事業主が小規模企業共済に加入する6つのメリット

第2章 個人事業主が小規模企業共済に加入する6つのメリット

この制度の真価は、その圧倒的なメリットにあります。ここでは、個人事業主が加入することで得られる6つの大きなメリットを、具体的な数値や事例を交えて徹底的に掘り下げていきます。

2-1. メリット①:掛金の全額が所得控除の対象になり、高い節税効果を発揮

小規模企業共済最大のメリットは、支払った掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となる点です。これにより、課税対象となる所得を直接減らすことができるため、所得税と住民税が大幅に安くなります。

例えば、課税所得金額が500万円の個人事業主が、上限額である月7万円(年84万円)を拠出した場合の節税額を見てみましょう。

所得税率:

  • 20%

住民税率:

  • 10%(一律)

節税額の計算式: 

  • 掛金年額×(所得税率+住民税率)
  • 掛金年額×(所得税率+住民税率)

具体的な節税額: 

  • $840,000×(20%+10%)=$252,000
  • $840,000×(20%+10%)=$252,000

つまり、年間で25.2万円もの税金が安くなる計算です。これは、単にお金を貯めるだけでなく、実質的に約30%の利回りで運用しているのと同じ効果があると言えます。

2-2. メリット②:将来の退職金・年金として老後の生活資金を準備できる

会社員と違い、個人事業主には退職金がありません。この制度は、その不足を補うための私的な退職金準備として最適です。毎月コツコツと積み立てることで、事業を辞めた後の生活を支える大きな資産を築くことができます。

加入5年で実感する資産形成の効果 

私は月5万円(年60万円)の掛金で加入して丸5年が経過しました。これまでの掛金総額は300万円です。先日、中小機構のサイトでシミュレーションしたところ、もし今事業を廃業して「共済金A」を受け取った場合、約321万円が受け取れる計算になりました(2025年1月時点の予定利率で計算)。わずか5年で、掛金総額を21万円も上回っています。これを普通預金で積み立てていても、利息は数百円程度。この差は歴然です。

2-3. メリット③:掛金の月額を500円単位で柔軟に変更できる

2-3. メリット③:掛金の月額を500円単位で柔軟に変更できる

個人事業主の収入は、月や年によって変動が大きいもの。小規模企業共済は、その点にも配慮されています。掛金は月額1,000円から70,000円までの範囲内で、500円単位で自由に設定・変更が可能です。

  • 売上が好調な時期: 掛金を増額して節税効果を最大化
  • 資金繰りが厳しい時期: 掛金を減額して無理なく継続

このように、事業の状況に合わせて柔軟に対応できるため、安心して長く続けることができます。

2-4. メリット④:最大で掛金総額の120%程度の共済金が受け取れる

長期的に加入を続けると、その恩恵はさらに大きくなります。20年以上掛金を納付し、事業の廃業(共済金A)や老齢給付(共済金B)で受け取る場合、掛金の総額を大きく上回る共済金が支給されます。

中小機構のモデルケースによると、月額1万円を30年間(総額360万円)納付した場合、共済金Aとして受け取れる金額は約443万円となり、受取額は掛金総額の約123%にもなります。これは、国の制度ならではの高い安定性と利回りの良さを示しています。

2-5. メリット⑤:低金利の貸付制度で事業資金を調達できる

小規模企業共済は、万が一の際の「お守り」としても機能します。納付した掛金の範囲内で、事業資金等を低金利で借り入れできる「契約者貸付制度」が用意されています。

知らなかったでは済まされない貸付制度 

独立2年目のこと。メインのノートPCが突然故障し、30万円を超える急な出費が必要になりました。手元資金に余裕がなく、頭をよぎったのは消費者金融のカードローン(年利15%前後)。まさにその時、顧問税理士に相談したところ、「共済の貸付制度があるじゃないですか!金利1.5%ですよ!」と教えられました。この制度を知っていたおかげで、無駄に高い利息を払わずに済みました。まさに「知は力なり」を痛感した出来事です。

2-6. メリット⑥:共済金の受け取りは「退職所得控除」で税負担が軽減

将来、共済金を一括で受け取る際の税金面でも、大きな優遇措置があります。共済金は「退職所得」として扱われ、給与所得や事業所得とは別に計算されます。その際に適用されるのが「退職所得控除」です。

この控除額は勤続年数(掛金納付期間)に応じて大きくなり、控除後の金額のさらに2分の1だけが課税対象となります。

課税退職所得金額の計算式

課税退職所得金額 = ( 共済金収入額 退職所得控除額 ) ×
1 2

例えば、30年間加入して2,000万円の共済金を受け取った場合、退職所得控除額は1,500万円。課税対象はわずか250万円となり、税負担を劇的に抑えることができるのです。

【この章のチェックポイント】
 6つのメリットの中でも、特に「掛金の全額所得控除」と「受取時の退職所得控除」という、入口と出口の両方で受けられる税制優遇が、この制度を最強たらしめている理由です。


第3章 加入前に必ず確認!小規模企業共済の3つのデメリットと注意点

第3章 加入前に必ず確認!小規模企業共済の3つのデメリットと注意点

これほどメリットの多い小規模企業共済ですが、もちろん良いことばかりではありません。加入してから「こんなはずではなかった」と後悔しないために、知っておくべきデメリットと注意点を正直にお伝えします。

3-1. デメリット①:加入後12ヶ月未満の解約は「掛け捨て」になる

最も注意すべき点がこれです。万が一、掛金の納付月数が12ヶ月に満たないうちに任意で解約した場合、解約手当金は1円も支払われず、全額が掛け捨てとなってしまいます。

「お試し加入」は絶対にNG! 

「とりあえず始めてみて、合わなかったらやめればいいや」という軽い気持ちでの加入は非常に危険です。この制度は長期的な資産形成を目的としています。加入を検討する際は、最低でも1年間は支払いを継続できるか、事業の見通しと照らし合わせて慎重に判断してください。

3-2. デメリット②:20年未満の任意解約は「元本割れ」のリスクがある

小規模企業共済は、あくまで事業の廃業や退職時のための制度です。そのため、事業が順調であるにもかかわらず、自己都合で任意解約する場合、掛金納付期間が20年(240ヶ月)未満だと、受け取れる解約手当金が支払った掛金の総額を下回る「元本割れ」を起こします。

中小機構が公表しているデータによると、任意解約時の支給割合は以下の通りです。

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納付月数支給割合(任意解約時)
12ヶ月~83ヶ月(約7年未満)80.0%
84ヶ月~143ヶ月(約7年~12年未満)85.0%
144ヶ月~239ヶ月(約12年~20年未満)90.0%~99.5%
240ヶ月(20年)以上100.0%~103.0%

出典:中小機構ウェブサイト「解約手当金の額」より作成

見ての通り、7年未満で任意解約すると、掛金の2割も失うことになります。この制度は「長期継続」が大前提であることを肝に銘じておきましょう。

3-3. デメリット③:受け取る共済金・解約手当金は課税対象

メリットの章で「税負担が軽減される」と説明しましたが、「非課税」ではない点には注意が必要です。受け取った共済金は、受け取り方に応じて課税対象となります。

  • 一括受取の場合: 退職所得として課税
  • 分割受取の場合: 公的年金等の雑所得として課税

一括か分割か、それが問題だ 

「どちらの受け取り方が有利かは、その方のライフプランや他の年金収入の額によって異なります。一般的には退職所得控除の恩恵が大きい一括受取が有利なケースが多いですが、例えば他に大きな退職金を受け取る予定がある方や、公的年金の受給額が少ない方は、あえて分割で受け取り『公的年金等控除』を活用する戦略も考えられます。加入時だけでなく、受取時にも専門家へ相談することをお勧めします。」(ファイナンシャルプランナー 鈴木氏)

【この章のチェックポイント】
 小規模企業共済は「短期解約」に厳しいペナルティが課せられる制度です。長期的な視点を持ち、無理のない範囲で始めることが、デメリットを回避する最大の防御策となります。

第4章 あなたは対象?個人事業主の小規模企業共済の加入資格と加入できないケース

「こんなに良い制度なら、すぐにでも加入したい!」と思った方も多いでしょう。しかし、小規模企業共済は誰でも加入できるわけではありません。ここでは、あなたが加入対象者かどうかを明確に判断できるよう、具体的な加入資格を詳しく解説します。

4-1. 加入資格は常時使用する従業員数で決まる

個人事業主の場合、加入できるかどうかは、主に「常時使用する従業員の数」によって決まります。ご自身の事業がどの業種に該当し、従業員数の条件を満たしているかを確認してみましょう。

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業種常時使用する従業員数具体例
商業(卸売業・小売業)、サービス業5人以下飲食店、美容室、学習塾、Web制作、コンサルタントなど
製造業、建設業、運輸業、不動産業、農業など20人以下町工場、工務店、運送業、不動産仲介業、農家など
宿泊業、娯楽業20人以下旅館、ホテル、映画館など

ここで言う「常時使用する従業員」とは、正社員やフルタイムで働くパート・アルバイトを指します。期間を定めて雇用される人や、家族従業員、共同経営者は、この人数には含まれません。

従業員5名の飲食店オーナーAさんのケース 

Aさんは都内で小さなカフェを経営しています。正社員2名、週5日勤務のアルバイト3名の合計5名を雇用しており、ギリギリのラインだと感じていました。しかし、税理士に確認したところ、この条件であれば問題なく加入できると判明。早速手続きを進め、将来への備えをスタートさせました。

4-2. 共同経営者や法人の役員も加入できる

この制度は個人事業主だけのものではありません。以下の方々も加入対象となります。

  • 個人事業主の共同経営者:
    • 1つの事業につき、2名まで加入できます。事業主と同様の条件(従業員数など)を満たす必要があります。
  • 会社の役員:
    • 株式会社、合同会社、有限会社などの常勤役員も対象です。この場合も、会社の常時使用する従業員数が上記の業種別条件を満たしている必要があります。

4-3. 【要注意】加入資格を失うケースと加入できない人

一方で、加入できない、または途中で資格を失うケースもあります。

【加入できない主なケース】

  • 会社員や公務員(副業で事業を行っていても、主たる所得が給与所得の場合は対象外)
  • 事業を営んでいない配偶者などの家族従業員
  • 生命保険外務員など、事業主とみなされない方
  • すでに小規模企業共済に加入している方(重複加入は不可)

【加入資格を失う主なケース】

  • 常時使用する従業員数が、上記の基準を超えた場合
  • 会社役員の方が、役員を退任した場合
  • 個人事業を法人成りし、その法人の役員にならなかった場合

事業拡大で卒業!でも掛金は無駄にならない 

「Web制作事業が軌道に乗り、正社員が6名になりました。サービス業なので従業員数の上限を超えてしまい、共済の加入資格は失ってしまいましたが、これは嬉しい悲鳴です。資格喪失の時点で『準共済金』としてそれまでの掛金に応じたお金を受け取れたので、何も無駄にはなりませんでした。」(30代・IT企業経営者)

【この章のチェックポイント】
 自分の事業の「業種」と「常時使用する従業員数」を正確に把握することが、加入資格を確認する上での最重要ポイントです。


第5章 3ステップで完了!個人事業主の小規模企業共済の加入手続きと必要書類

第5章 3ステップで完了!個人事業主の小規模企業共済の加入手続きと必要書類

加入資格を満たしていることが確認できたら、次はいよいよ具体的な手続きです。難しそうに感じるかもしれませんが、実際には3つのステップで簡単に完了します。ここでは、私が実際に行った手順に沿って、分かりやすく解説します。

5-1. ステップ①:申込窓口を選ぶ(商工会・金融機関など)

小規模企業共済の申し込みは、中小機構の直接の窓口ではなく、委託された以下の機関で行います。

  • 商工会・商工会議所、青色申告会:
    • 地域の経営者コミュニティと繋がりが持てるのがメリット。経営相談なども併せて行いたい方におすすめです。
  • 取引のある金融機関(銀行、信用金庫、信用組合など):
    • 普段から利用している金融機関であれば、口座情報などが連携しやすく手続きがスムーズです。
  • 中小企業団体中央会:
    • 中小企業の組合などを支援する団体です。

メインバンクでの申し込みが一番スムーズだった 

私の場合、事業用の口座を開設しているメインの信用金庫で申し込みを行いました。窓口担当者の方も手続きに慣れており、「小規模企業共済の加入をしたいのですが」と伝えると、すぐに必要書類を案内してくれ、申込書の書き方も丁寧に教えてくれました。所要時間は約30分ほど。特にこだわりがなければ、普段から取引のある金融機関が最も手軽で確実だと感じました。

5-2. ステップ②:必要書類を準備する(確定申告書・開業届など)

申し込みの際には、あなたが事業を営んでいることを証明する書類が必要です。個人事業主の場合、主に以下のいずれかの書類の控えを準備しましょう。

【個人事業主の必要書類(いずれか1点)】

  • 所得税の確定申告書の控え(受付印のあるもの):
    • 最も確実な書類です。e-Taxで申告した場合は「受信通知」も併せて提出します。
  • 開業届の控え(受付印のあるもの):
    • 事業を開始したばかりでまだ確定申告をしていない場合に必要です。

これらに加えて、掛金の振替に使う預金口座の情報と口座の届出印が必要になります。

5-3. ステップ③:申込書を提出し、中小機構からの書類を待つ

申込書に必要事項を記入し、準備した書類と共に窓口へ提出すれば、あなたの手続きは完了です。

その後、申込書は窓口から中小機構へ送られ、審査が行われます。審査には少し時間がかかり、申し込みから約40日後に、中小機構から「契約締結証書」と「小規模企業共済手帳」「加入者のしおり」が郵送されてきます。この手帳が、あなたが正式に加入者となった証です。

【この章のチェックポイント】
 手続きは「窓口選び→書類準備→提出」の3ステップ。個人事業主は「確定申告書の控え」と「銀行印」を準備して、最寄りの金融機関に行くのが最も簡単な方法です。


第6章 加入後も安心!掛金の変更・確定申告・貸付制度などの活用方法!

小規模企業共済は、加入して終わりではありません。事業の成長やライフステージの変化に合わせて、制度を賢く活用していくことが大切です。ここでは、加入後に必要となる手続きや、知っておくと得する活用法について解説します。

6-1. 掛金の増額・減額手続きの方法とタイミング

事業の売上が安定してきたら掛金を増やして節税効果を高め、逆に厳しい時期には減額して負担を軽くすることができます。手続きは、加入時と同じ申込窓口で行います。

  • 手続き:
    • 窓口にある「掛金月額変更申込書」に記入し、提出するだけ。
  • タイミング:
    • 増額も減額も、いつでも可能です。変更した掛金額は、申込月の翌月または翌々月から適用されます。

年収UPに合わせて掛金もMAXに増額! 

私は当初、月3万円でスタートしましたが、事業が軌道に乗り年収が800万円を超えた3年目のタイミングで、掛金を上限の月7万円に増額しました。これにより、年間の所得控除額が36万円から84万円にアップ。節税額も約11万円から約25万円へと倍以上に増やすことができました。収入が増えた分だけ税負担も増える個人事業主にとって、掛金の見直しは必須の節税対策です。

6-2. 確定申告での「小規模企業共済等掛金控除」の書き方

年に一度の確定申告では、支払った掛金額を申告して所得控除を受けるのを忘れてはいけません。毎年11月頃に中小機構から「小規模企業共済掛金払込証明書」というハガキが届くので、これを基に申告書を作成します。

【確定申告書の記入箇所】

  • 第一表:
    • 「所得から差し引かれる金額」の欄にある「⑭小規模企業共済等掛金控除」に、証明書に記載されている年間の掛金合計額を記入します。
  • 第二表:
    • 「⑭小規模企業共済等掛金控除」の欄に、支払った掛金の合計額を再度記入します。

6-3. 掛金の仕訳で使う勘定科目は?経費にはならない点に注意

日々の経理処理で迷うのが、掛金の仕訳です。ここで絶対に間違えてはいけないのが、小規模企業共済の掛金は「経費」ではないという点です。

これは事業の支出ではなく、あくまで事業主個人のための積立(貯蓄)だからです。そのため、会計処理上は、事業用資金から事業主個人へお金を支払ったものとして、「事業主貸」という勘定科目で処理するのが正解です。

(仕訳例)普通預金から掛金1万円が引き落とされた場合

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借方貸方
事業主貸 10,000円普通預金 10,000円

【この章のチェックポイント】 
加入後は「確定申告での控除忘れ」と「経理処理での勘定科目間違い」に注意しましょう。会計ソフトの活用がミスを防ぐ鍵です。

第7章 iDeCo・国民年金基金との違いは?個人事業主に最適な制度の選び方

第7章 iDeCo・国民年金基金との違いは?個人事業主に最適な制度の選び方

個人事業主が利用できる節税効果の高い積立制度は、小規模企業共済だけではありません。代表的なものに「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「国民年金基金」があります。ここでは、これらの制度と小規模企業共済を徹底比較し、あなたにとって最適な組み合わせを見つける手助けをします。

7-1.【徹底比較】小規模企業共済 vs iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で選んだ金融商品で運用しながら、将来の年金を形成していく私的年金制度です。小規模企業共済と並び、個人事業主の節税対策として非常に人気があります。両者の違いを比較してみましょう。

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項目小規模企業共済iDeCo(個人型確定拠出年金)
目的経営者の退職金・事業資金老後の年金資産形成
掛金上限(月額)70,000円68,000円(国民年金基金と合算)
所得控除全額所得控除全額所得控除
運用方法中小機構による元本確保型の安定運用自分で投資信託などを選び自己責任で運用
途中引出・貸付貸付制度あり。原則、途中引出は不可。貸付制度なし。原則60歳まで引出不可。
受取時の税制退職所得控除 or 公的年金等控除退職所得控除 or 公的年金等控除
向いている人安定志向。万一の事業資金も備えたい人。投資志向。より高いリターンを狙いたい人。

7-2. 小規模企業共済 vs 国民年金基金を徹底比較

国民年金基金は、自営業者など国民年金の第1号被保険者が、基礎年金に上乗せして加入できる公的な年金制度です。老後の年金額を確実に増やしたい場合に有効な選択肢となります。

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項目小規模企業共済国民年金基金
目的経営者の退職金・事業資金老齢基礎年金への上乗せ年金
掛金上限(月額)70,000円68,000円(iDeCoと合算)
給付形態一括(退職金)または分割(年金)終身年金が基本
掛金の柔軟性500円単位で自由に増減可能原則、一度決めると口数の変更は不可
貸付制度ありなし
向いている人まとまった退職金が欲しい人。事業の状況に応じて柔軟に対応したい人。生涯にわたって受け取れる年金を確実に増やしたい人。

専門家が語る制度の性格の違い 

「国民年金基金の最大の魅力は『終身年金』である点です。長生きリスクに備え、生涯にわたって安定した収入を確保したい方には最適です。一方、小規模企業共済は『退職金』としての性格が強く、受け取り方の自由度や貸付制度など、現役時代の経営者を支える機能が充実しています。どちらが良いというより、ご自身のライフプランで何を重視するかで選ぶべき制度です。」(専門家 斎藤氏)

7-3. iDeCo・国民年金基金は併用は可能?

はい、これらの制度は併用が可能です。そして、併用することで節税効果(所得控除)を最大化できます。「小規模企業共済等掛金控除」という一つの大きな枠の中に、これらの掛金が合算されるイメージです。

  • 小規模企業共済: 上限 月7万円(年84万円)
  • iDeCo + 国民年金基金: 合算で上限 月6.8万円(年81.6万円)

つまり、理論上は年間で最大165.6万円もの所得控除を受けることが可能です。

【この章のチェックポイント】
小規模企業共済は「守りの退職金」、iDeCoは「攻めの年金」、国民年金基金は「終身の年金」と性格が異なります。自分のリスク許容度やライフプランに合わせて、最適な組み合わせを考えましょう。


第8章 個人事業主の小規模企業共済の加入に関してよくある質問

ここでは、これまでの解説で触れられなかった、読者の皆様からよく寄せられる疑問について、Q&A形式で簡潔にお答えします。

8-1. Q. 個人事業を廃業した場合、掛金はどうなりますか?

A. 事業の廃業は「共済金A」の請求事由に該当し、最も有利な条件で共済金を受け取れます。掛金納付月数が6ヶ月以上あれば、掛け捨てになることはありませんのでご安心ください。廃業手続き後に、申込窓口で共済金の請求手続きを行ってください。

8-2. Q. 個人事業主から法人成りした場合、契約は引き継げますか?

A. はい、引き継げます。個人事業主としての契約を解約せず、新設した法人の役員として加入資格を継続する「個人事業の法人成りによる契約の継続」手続きを行えば、それまでの掛金納付期間や金額も通算することが可能です。

8-3. Q. 掛金の経理処理で使う勘定科目は何ですか?

A. 掛金は経費ではなく、事業主個人の所得控除の対象です。そのため、会計処理では、事業用の口座から事業主個人のためにお金を引き出したものとして「事業主貸」の勘定科目で処理するのが一般的です。経費として計上しないようご注意ください。

8-4. Q. 途中で掛金が払えなくなったら、どうすれば良いですか?

A. 売上の減少などにより支払いが困難な場合、掛金の月額を最低1,000円まで減額できます。また、どうしても支払いが難しい場合は、一時的に支払いを中断する「掛止め」の手続きをすることも可能です。ただし、掛止め期間は納付期間に通算されない点に注意が必要です。


第9章 個人事業主の未来を守る!小規模企業共済を活用した賢い資産形成を進めよう!

ここまで、小規模企業共済の全貌について、メリット・デメリットから具体的な手続き、他の制度との比較まで詳しく解説してきました。最後に、この記事の要点をまとめ、あなたが次にとるべきアクションを提示します。

9-1. まとめ:小規模企業共済は個人事業主にとって必須のセーフティネット

小規模企業共済は、単なる積立制度ではありません。

  • 【入口の節税】 掛金が全額所得控除になり、現役時代の税負担を大きく軽減する。
  • 【将来の資産】 国が運営する安心感のもと、着実に退職金を準備できる。
  • 【万一の備え】 低金利の貸付制度で、急な資金需要にも対応できる。
  • 【出口の節税】 受取時は退職所得控除で、税負担を抑えて受け取れる。

もちろん、短期解約のリスクなどのデメリットも存在しますが、長期的な視点で事業を営む個人事業主にとって、そのメリットは計り知れないほど大きいと言えます。

9-2. まずは資料請求から!今日から始める第一歩

この記事を読んで、「自分も加入を検討してみよう」と感じたなら、ぜひ今日から第一歩を踏み出してみてください。いきなり窓口に行くのが不安な方は、まずは公式サイトで詳しい資料を請求したり、シミュレーションを試してみたりすることから始めるのがおすすめです。

あなたの事業と未来を守るための賢い選択。その一歩を、この記事が後押しできたなら幸いです。

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この記事を書いた人

鵜飼 あきひろのアバター 鵜飼 あきひろ 株式会社Grill 取締役/店舗経営・集客コンサルタント

2014年にオイシックス株式会社で海外事業を担当後、香港・中国現地法人の社長に就任。
2017年に起業した株式会社Emooveでは代表として事業を成長させ売却・EXIT。
現在は株式会社Grillの取締役COOとして複数の飲食店舗を経営する傍ら、現場目線で成果の出る集客支援に取り組んでいる。
豊富な実践経験と経営視点を活かし、小さなお店の“ファンづくり”をサポートするのが信条。