第1章 店舗の改装で失敗しないための基礎知識

店舗の改装を検討している経営者の方にとって、最初に気になるのは「いったいいくらかかるのか」という費用の問題ではないでしょうか。
2025年現在、物価上昇や人手不足の影響もあり、店舗改装の費用相場は年々変動しています。適切な予算設定ができなければ、工事の途中で資金が足りなくなったり、想定外の追加費用が発生したりするリスクがあります。
また、業者選びを誤ると、予算オーバーだけでなく、工期の遅れや仕上がりの品質低下など、さまざまなトラブルに発展する可能性も。
あなたの店舗が「選ばれる店舗」になるためには、改装という大きな投資を確実に成功させる必要があります。
本記事では、2025年最新の店舗改装費用相場と、失敗しない業者選びのポイントを徹底解説します。改装を成功させるための具体的なステップや、コストを抑えるテクニックも紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
第2章 実際に店舗を改装する場合の費用相場はいくら?

店舗改装の費用相場は、物件の状態や業種によって大きく異なります。まずは基本的な費用の目安を把握しておきましょう。
2-1. 物件タイプ別の改装費用相場
店舗改装の費用を考える上で最も重要なのが、物件のタイプです。居抜き物件とスケルトン物件では、必要な工事内容が大きく異なるため、費用にも差が出ます。
居抜き物件
前のテナントが使用していた内装や設備をそのまま引き継いで利用できる物件のことです。壁や床、照明、空調設備などがすでに整っているため、必要な工事が少なく済みます。
スケルトン物件
内装や設備が全くない骨組みだけの状態の物件を指します。自由にデザインできる反面、すべての内装工事を一から行う必要があります。
2025年現在の物件タイプ別の坪単価相場は以下の通りです:
居抜き物件:坪単価30万~70万円程度
スケルトン物件:坪単価60万~100万円程度
居抜き物件は初期費用を大幅に抑えられるのが最大のメリットです。また、すぐに営業を始められるので開業までの時間も短縮できます。
ただし、デザインやレイアウトの自由度は低くなります。前テナントの業種や内装が、自身の開業したい店舗のイメージに合っているかどうか、しっかりと確認することが重要です。
2-2. 業種別の改装費用相場
店舗の業種によっても、改装費用は大きく変わってきます。特に設備の有無や複雑さが費用に影響します。
2025年現在の業種別の坪単価相場は以下の通りです。
業種 | 居抜き物件 | スケルトン物件 |
---|---|---|
飲食店 | 約35万円~65万円 | 約75万円~120万円 |
美容室・ヘアサロン | 約32万円~50万円 | 約63万円~100万円 |
アパレル | 約28万円~47万円 | 約58万円~95万円 |
ジム・フィットネス | 約40万円~65万円 | 約80万円~120万円 |
飲食店では、本格的な厨房設備が必要な店舗ほど設備費用がかさみます。ドリンクメインや軽食程度のカフェなら、飲食店の中でも比較的費用は抑えられるでしょう。
美容室やサロンは、シャンプー台などの水回り設備やドライヤーなどの電気設備が必要となるため、坪単価がやや高めになります。
アパレルショップは専用設備が少なく比較的内装工事費用は安い業種ですが、店舗やブランドのイメージを伝える空間づくりが重要なため、内装へのこだわり具合によって費用が変動しやすい傾向があります。
第3章 店舗改装における費用内訳と目安

店舗改装の費用をより具体的に理解するために、内訳と相場の詳細を見ていきましょう。
3-1. 内装工事費用の主な内訳
店舗改装における内装工事費用は、大きく分けて以下の項目に分類されます:
- 解体・撤去工事
- 既存の内装や設備の解体・撤去
- 基礎工事
- 床や壁、天井などの下地工事
- 内装仕上げ工事
- 壁紙や床材の施工、塗装など
- 電気設備工事
- 配線、コンセント、照明器具の設置など
- 給排水設備工事
- 水道管の配管、排水設備の設置など
- 空調設備工事
- エアコンや換気設備の設置
- 店舗専門設備
- 業種に応じた専門設備(厨房機器、美容設備など)
これらの工事費用は、店舗の規模や業種、デザインの複雑さによって大きく変動します。例えば、10坪の小規模な飲食店と、50坪の大型レストランでは、必要な設備や工事の規模が異なるため、単純に坪数比で費用が増えるわけではありません。
特に水回りや電気設備の工事は、配管や配線の状況によって費用が大きく変わることがあります。古い物件では、配管の老朽化や電気容量の不足などの問題が見つかり、追加工事が必要になるケースもあるので注意が必要です。
3-2. 外装工事の費用相場
店舗の外観も改装する場合は、内装工事に加えて外装工事の費用も考慮する必要があります。
2025年現在の外装工事の費用相場は、工事内容にもよりますが、一般的に150~250万円程度が目安です。具体的な工事内容としては、以下のようなものが含まれます:
- 外壁塗装・修繕
- 看板・サイン工事
- ファサード(建物正面)のデザイン変更
- 外部照明の設置
- エントランス改修
外装は店舗の第一印象を決める重要な要素です。特に路面店の場合、通行人の目を引く外観デザインは集客に直結するため、予算に余裕があれば検討する価値があります。ただし、テナントビルに入居している場合は、外装の変更に関して建物のオーナーや管理会社の許可が必要なケースが多いので、事前に確認しておきましょう。
店舗の外観は、あなたのブランドの顔です。内装だけでなく、外装にもこだわることで、通りすがりの人の目を引き、新規顧客の獲得につながります。
外装デザインを検討するなら、入口の印象づくりも重要です。詳しい改善ポイントは『集客が増える店舗の入口とは?入りたくなる飲食店の外観の特徴や共通点を徹底解説!』の記事をご覧ください。
第4章 店舗の改装費用を抑える3つのコツ
店舗改装は大きな投資ですが、賢い選択をすることで費用を抑えることも可能です。ここでは、改装費用を効果的に抑えるためのコツをご紹介します。
4-1. 居抜き物件の活用
改装費用を大幅に抑えるなら、居抜き物件の活用が最も効果的です。特に同業種で使われていた物件であれば、そのまま使える設備も多く、初期投資を最小限に抑えられます。
例えば、前テナントがカフェだった物件を活用してカフェを開業する場合、厨房設備や水回り、空調設備などがそのまま使えるため、大幅なコスト削減が可能です。ただし、居抜き物件を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
- 設備の状態や老朽化の程度を専門家に確認してもらう
- 前テナントの業種と自分の業種の相性を考慮する
- 必要な改修工事の範囲と費用を事前に見積もる
「安いから」という理由だけで居抜き物件を選ぶと、後から大規模な修繕が必要になり、結果的にコストがかさむケースもあります。慎重に物件を選びましょう。
4-2. 中古設備・什器の活用

新品にこだわらず、状態の良い中古設備や什器を活用するのも、コスト削減の有効な手段です。特に厨房機器や空調設備、照明器具などは、中古品でも十分に機能するものが多くあります。中古設備を探す方法としては、以下のようなものがあります。
- 専門の中古厨房機器販売店
- オンラインのリサイクルショップやオークションサイト
- 閉店する店舗からの直接購入
- リース終了品を扱う業者
中古品を購入する際は、動作確認や保証の有無、メンテナンス履歴などをしっかり確認することが重要です。安さだけで選ぶと、すぐに故障して結局は新品を購入することになり、二重のコストがかかる可能性もあります。
4-3. 補助金・助成金の活用
店舗改装には、国や自治体が提供する補助金や助成金を活用できる場合があります。2025年現在、以下のような制度が利用可能です:
- 省エネ関連の補助金:LED照明や高効率空調設備の導入
- バリアフリー化の助成金:段差解消や多目的トイレの設置
- 地域活性化関連の補助金:商店街の空き店舗活用など
例えば、省エネリフォームでは最大120万円、バリアフリー工事では最大20万円の補助金が支給される制度があります。
補助金や助成金は申請期間や予算枠が限られていることが多いため、改装計画の早い段階から情報収集を始め、申請のタイミングを逃さないようにしましょう。また、申請には一定の条件を満たす必要があり、工事後の申請では対象外となるケースも多いので注意が必要です。
申請手続きは複雑なことが多いため、補助金申請のサポートを行っている業者や専門家に相談するのも一つの方法です。
第5章 失敗しない改装業者の選び方とは

店舗改装の成功は、適切な業者選びにかかっています。費用面だけでなく、デザイン力や施工品質、アフターフォローなど、総合的に評価して業者を選ぶことが重要です。
5-1. 業者の種類と特徴を理解する
店舗改装を依頼できる業者は、大きく分けて以下の3種類があります:
内装業者
店舗やオフィスなどの内装工事を専門に行う業者。デザインから設計、施工までをワンストップで対応できることが多い。
デザイン事務所(デザイン会社)
空間デザインや設計を専門とする会社。デザイン性の高い内装を求める場合に適しているが、施工は外部業者に依頼するケースが多い。
工務店
地域密着型で住宅や店舗の新築・リフォームを行う業者。デザインから施工、アフターサポートまで一貫して対応できるケースが多い。
それぞれに強みと弱みがあるため、自分の店舗改装の目的や予算、重視するポイントに合わせて選ぶことが大切です。例えば、高いデザイン性を求める場合はデザイン事務所、コストパフォーマンスを重視するなら工務店、専門的な店舗づくりを求めるなら内装業者が適しているでしょう。
業者選びと合わせて、理想の内装設計ポイントも押さえておきましょう。詳細は『https://tenpolab.jp/article/2468』の記事で解説しています。
5-2. 信頼できる業者を見極めるポイント
信頼できる業者を見極めるためには、以下のポイントをチェックしましょう:
- 施工実績や事例:自分の業種に近い店舗の施工実績があるか確認する
- デザイン力や提案力:ポートフォリオや過去の事例を見て、センスやアイデアを評価する
- 見積もりの明瞭さ:詳細な内訳が記載された見積書を提示してくれるか
- 施工後のアフターサポート:保証期間や修理対応などのサポート体制
- 担当者の人柄・対応力:質問や要望に丁寧に応えてくれるか
特に重要なのが施工実績です。開業するのが飲食店なら飲食店、美容室なら美容室の施工実績が豊富な業者を選ぶことで、業種特有の知識やノウハウを活かした提案が期待できます。
また、見積もりの明瞭さも重要なポイントです。「一式」という表記だけで詳細な内訳が不明な見積書を出す業者は要注意。後から追加費用が発生するリスクが高くなります。
5-3. 相見積もりの重要性
店舗改装業者を選ぶ際は、必ず複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」を行いましょう。相見積もりには以下のメリットがあります:
- 費用相場を把握できる
- 各業者の提案内容や対応の違いを比較できる
- 見積もり内容の妥当性を判断できる
- 交渉の材料になる
一般的には2〜3社程度から見積もりを取るのが適切です。ただし、単純に金額だけで比較するのではなく、提案内容や工事範囲、使用する材料の品質なども含めて総合的に判断することが重要です。
最も安い見積もりを出した業者が必ずしも最適とは限りません。安さの裏に隠れた問題(品質の低下や追加費用の発生など)がないか、しっかり見極めることが大切です。
第6章 店舗改装の基本的な流れとスケジュール

店舗改装を成功させるためには、全体の流れを把握し、適切なスケジュール管理を行うことが重要です。ここでは、改装工事の一般的な流れと、スケジュール管理のポイントを解説します。
6-1. 店舗改装の基本的な流れ
店舗改装の基本的な流れは以下の通りです:
- 構想・企画段階:改装の目的や予算、コンセプトの明確化
- 業者選定・打ち合わせ:複数の業者から見積もりを取り、最適な業者を選定
- 設計・デザイン:店舗のレイアウトやデザインの詳細を決定
- 契約:工事内容や費用、工期などを明記した契約書の締結
- 施工準備:必要な許認可の取得や資材の発注
- 解体・撤去工事:既存の内装や設備の解体・撤去
- 基礎工事:床や壁、天井などの下地工事
- 設備工事:電気、給排水、空調などの設備工事
- 内装仕上げ工事:壁紙や床材の施工、塗装など
- 検査・引き渡し:工事完了後の検査と引き渡し
- オープン準備:什器や商品の搬入、スタッフトレーニングなど
各工程にかかる期間は物件の状態や工事の規模によって異なりますが、一般的なスケルトン物件の場合、設計から工事完了まで2〜3ヶ月程度を見込んでおくとよいでしょう。居抜き物件の場合は、工事の範囲が限定されるため、1〜2ヶ月程度で完了することも多いです。
6-2. スケジュール管理のポイント
店舗改装のスケジュール管理で重要なポイントは以下の通りです:
- 余裕を持ったスケジュール設定:予期せぬトラブルに備えて、オープン予定日から逆算して余裕を持ったスケジュールを組む
- マイルストーンの設定:工事の節目ごとに進捗確認のポイント(マイルストーン)を設定する
- 定期的な現場確認:週に1回程度は現場を訪れ、進捗状況や問題点を確認する
- 業者との密なコミュニケーション:工事の進捗や問題点について、業者と定期的に情報共有を行う
特に注意したいのが、許認可の取得や設備の納期です。飲食店の場合、保健所の営業許可取得に時間がかかることがあります。また、特注の設備や輸入品は納期が長くなる傾向があるため、早めに発注することが重要です。
さらに、オープン前の準備期間も考慮しておきましょう。工事が完了してからオープンまでには、什器や商品の搬入、POSシステムの設置、スタッフのトレーニングなど、さまざまな準備が必要です。通常、これらの準備には1〜2週間程度かかることを見込んでおくとよいでしょう。
第7章 店舗の改装で失敗しないための注意点
最後に、店舗改装で失敗しないための重要な注意点をまとめます。これらのポイントを押さえることで、トラブルを未然に防ぎ、満足のいく改装を実現できるでしょう。
7-1. 契約前の確認事項
契約前には、以下の点をしっかり確認しておきましょう:
- 見積書の詳細:工事内容や使用材料、数量などが明確に記載されているか
- 追加費用の可能性:どのような場合に追加費用が発生するのか
- 支払い条件:着手金、中間金、完了金の金額と支払いタイミング
- 工期:着工日と完了予定日、遅延した場合の対応
- 保証内容:工事後の保証期間や保証範囲
- キャンセル条件:契約後のキャンセルが可能か、その場合の違約金
特に重要なのが、追加費用の可能性についての確認です。「壁を剥がしてみたら配管の老朽化が見つかった」「床下の構造補強が必要になった」など、工事を進める中で予期せぬ問題が発見されることは少なくありません。
そのような場合にどの程度の追加費用が発生する可能性があるのか、事前に業者と話し合っておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
7-2. 工事中のチェックポイント
工事が始まったら、定期的に現場を訪れ、以下のポイントをチェックしましょう:
- 進捗状況:予定通りに工事が進んでいるか
- 施工品質:仕上がりの品質に問題はないか
- 設計図との整合性:設計図通りに施工されているか
- 追加工事の有無:予定外の工事が発生していないか
問題を発見したら、すぐに業者に伝えて対応を協議することが重要です。工事が完了してからでは修正が難しくなったり、追加費用がかさんだりする可能性があります。
修正するには追加費用がかかるため、結局そのまま使い続けることになりましたが、日々の営業に支障をきたし、数年後に再度改装することになりました。この経験から、工事中の確認がいかに重要かを痛感しました。
7-3. 引き渡し時の最終確認
工事完了後の引き渡し時には、以下の点を入念にチェックしましょう:
- 設計図との整合性:当初の設計図通りに施工されているか
- 仕上がりの品質:壁や床の仕上がり、設備の動作など
- 不具合の有無:水漏れや電気系統のトラブルなどがないか
- 清掃状態:工事の残材や汚れが適切に処理されているか
- 必要書類の受け取り:保証書や取扱説明書などの必要書類
最終確認で問題が見つかった場合は、引き渡しを受ける前に業者に修正を依頼しましょう。引き渡し後に問題が発覚した場合でも、保証期間内であれば対応してもらえますが、早期発見・早期対応が基本です。
店舗改装は一度きりの大きな投資です。妥協せず、納得いくまで確認と修正を重ねることが、長く使い続けられる理想の店舗づくりの秘訣です。
店舗の改装で経営を成功に導くために
店舗改装は、ビジネスの成長と発展のための重要な投資です。2025年の最新相場を踏まえた適切な予算設定と、信頼できる業者選びが成功への鍵となります。
本記事でご紹介した内容をまとめると、以下のポイントが重要です。
- 費用相場を把握する
- 物件タイプや業種別の費用相場を理解し、現実的な予算を設定する
- コスト削減の工夫をする
- 居抜き物件の活用や中古設備の導入、補助金の活用などでコストを抑える
- 適切な業者を選ぶ
- 施工実績やデザイン力、見積もりの明瞭さなどを総合的に評価して業者を選定する
- スケジュール管理を徹底する
- 余裕を持ったスケジュール設定と定期的な進捗確認で工期の遅延を防ぐ
- 契約内容を確認する
- 見積書の詳細や追加費用の可能性、保証内容などをしっかり確認してから契約する
- 工事中・完了後のチェックを怠らない
- 定期的な現場確認と最終引き渡し時の入念なチェックで問題を早期発見する
店舗改装は一度きりの大きな投資です。十分な準備と計画、そして適切な業者選びによって、あなたの店舗が「選ばれる店舗」へと生まれ変わることを願っています。
「店舗カイゼンラボ」では、これからも店舗ビジネスの集客に特化した改善ノウハウを提供していきます。売上アップや経費削減、人材確保など、店舗経営のあらゆる悩みを解決するための情報を発信していきますので、ぜひ定期的にチェックしてください。
あなたの店舗、もっと良くなる。その一歩を、今日から踏み出しましょう。