飲食店でテイクアウト販売を始めるには許可が必要?具体的な始め方や準備・注意点を徹底解説!

飲食店でテイクアウト販売を始めるには許可が必要?具体的な始め方や準備・注意点を徹底解説!
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目次

第1章 飲食店がテイクアウトやデリバリーを始めるための保健所の手続き

1-1. 飲食店がテイクアウトやデリバリーに必要な営業許可の確認方法

テイクアウトやデリバリーを行う場合、多くの飲食店は既に「飲食店営業許可」を取得していることがほとんどです。しかし、通常の店内提供とは異なる形で食品を販売する際に、新たに保健所へ追加の届け出が必要になるケースがあります。たとえば、調理した料理を容器に詰めて外部へ持ち帰らせる「テイクアウト」、さらに配達スタッフが利用者のもとへ届ける「デリバリー」ともなると、衛生管理上の考慮事項が増えることも特徴です。

基本的には、同じ施設(店舗)の中で調理を行い、そこから直接テイクアウトやデリバリーを行う場合、既存の飲食店営業許可だけで対応できることが多いです。ただし、新たに惣菜や菓子を作り始める、あるいは調理工程が増えるなど、別区分の営業許可が絡むときは注意が必要です。最も一般的な流れとしては、まず保健所に「このように営業形態を変えたいが、追加で許可は必要か」を問い合わせるのがおすすめです。検討しているメニューや販売方法を具体的に伝えれば、必要な手続きを案内してもらえます。

特にデリバリーの場合、長い時間をかけて運搬されるため、食品が傷みやすくなったり、温度管理が不十分だと食中毒リスクが高まったりします。開業当初に提出した書類では想定していなかったリスクが生じる可能性もあるため、これを防ぐために保健所から追加の衛生管理方法を求められることもあるでしょう。食材の仕入れ・調理時間・容器への詰め方や注文の受付方法を見直すきっかけにもなります。

デリバリー拡大が進む中、飲食店が売り上げを維持するためにもテイクアウトやデリバリーは欠かせない手段となっています。ただし、安全性を確保するために、どのようなルートで販売するかを明示し、保健所が示す許可要件をクリアしておきましょう。


1-2. ケーキやアイスクリームなどの食品販売に求められる施設基準

ケーキやアイスクリームなどの食品販売に求められる施設基準

飲食店で新たにケーキやアイスクリームといった菓子系商品を販売したい場合、単なる店内提供ではなく「製造した上でテイクアウトやデリバリーを行う」形態なら、菓子製造業許可やアイスクリーム類製造業許可が必要となる場合があります。たとえば、店内の一部スペースで生地を仕込み、焼き上げたケーキをカットして販売するケースでも、保健所が求める施設基準に適合しなければなりません。

具体的な施設基準としては、調理室(製造室)が清潔に保たれ、防虫・防鼠対策がしっかり施されていること、そして他の調理と交差しないよう動線が整っていることが重要です。たとえば、通常の飲食店営業許可とは異なり、菓子製造許可では食品を加工・包装する作業環境がより厳密に定められています。器具や容器の洗浄設備が十分か、作業台が食品に異物混入を起こさない素材かなど、細部まで配慮しましょう。

もし、アイスクリーム専門店を開業したいと考えているなら、さらに低温管理の要件が加わります。店舗内にアイスクリーム製造専用の機材を設置し、一定の温度を保てる冷凍庫や冷蔵庫を用意しなければなりません。容器の保管場所や、注文を受けてから盛り付ける場合の衛生管理方法など、細かい部分で「こうしなければならない」という基準が追加されるのです。

これらの準備を怠ると、許可申請が通らず販売ができないどころか、無許可営業とみなされる可能性もあります。事前に必ず保健所へ行き、計画段階で設計図などを提示しながら相談するのが確実な方法です。正しい基準を理解して必要な設備を整えれば、後々のトラブルや注意点を大きく減らせます。


1-3. お酒類を含むデリバリー販売の注意点

お酒類を含むデリバリー販売の注意点

お酒をテイクアウトやデリバリーで販売したいという飲食店も増えています。特に、コロナ禍以降、宅飲み需要が急増し「自宅でレストランの料理とお酒を楽しみたい」というニーズに応える形です。しかし、ここで気をつけたいのは、通常の飲食店営業許可だけでは「酒類の持ち帰り販売」に対応できないことがある点です。

お酒のテイクアウトやデリバリーを行うには、国税庁の管轄する「酒類販売免許」が必要となるケースが多々あります。店舗でグラス提供しているだけなら免許不要ですが、ボトルを丸ごと販売したり、量り売りで容器詰めして持ち帰ってもらう形なら、酒類販売免許の対象となる可能性が高いです。これはデリバリーでも同様で、飲食店が料理を宅配するときにお酒も同梱して届けるなら、免許区分が合致しているかどうかを確認する必要があります。

また、営業時間や販売可能な時間帯にも注意しましょう。地域の条例や自治体のルールで「深夜帯のアルコール販売」が制限される場合があり、デリバリー先での年齢確認方法も課題となります。未成年が注文している可能性がある場合には、受け渡し時に身分証を提示してもらうなど、慎重な対応が求められます。

このように、お酒を伴う販売・開業には、保健所だけでなく税務署や酒販免許を扱う機関とのやりとりが増えがちです。デリバリー事業者や配達スタッフに対しても、アルコールに関する注意喚起や法律遵守について教育を行う必要があります。飲食店にとっては新たな収益源となる一方、守るべきルールや施設基準が増えるため、早い段階で情報収集と準備を進めることが大切です。


第2章 飲食店がスイーツのテイクアウト販売で売上を増やす方法と注意点

飲食店がスイーツ販売で売上を伸ばす方法と注意点

2-1. 飲食店がスイーツをテイクアウト販売するメリット

飲食店がテイクアウトやデリバリーでスイーツを販売するメリットは、まず客単価やリピーターの増加が挙げられます。たとえば食後のデザートを自宅で楽しみたい人向けに、食事と一緒にスイーツを注文できる仕組みを作ると「もう少し甘いものが欲しい」という需要を取りこめます。スイーツは単価が高めでも購入しやすい性質があり、特にSNS映えしやすいケーキや焼き菓子なら話題になりやすいです。

さらに、飲食店営業許可をもとに店内で調理できるため、既存の厨房やスタッフを活用し、そこまで大規模な追加投資をしなくても始められる場合があります。たとえば余った食材をアレンジして新しい菓子メニューを開発するなど、無駄を減らしながら売上アップを目指せる点は魅力的です。

一方、消費者の側も「お気に入りの飲食店の味を家でも楽しめる」ことで満足度が高まります。特に飲食店のシグネチャー・デザートがあるなら、それを持ち帰れる形で販売すれば、専門店とはまた違った強みを発揮できるでしょう。デリバリーサービスを介して広範囲に届けると、新規顧客の獲得にもつながります。

ただしスイーツのテイクアウトは、食品の劣化や食中毒のリスクを管理するうえで店側の注意点が増えるのも事実です。焼き菓子であれば比較的日持ちしやすいですが、生菓子は温度管理や容器への包装方法が重要となります。また、アレルギー表示や原材料表記が必須となるので、菓子製造許可の要件も満たしながら、お客様が安心して購入できる環境づくりを徹底しましょう。


2-2. 菓子製造業許可と食品表示の重要性

スイーツをテイクアウト向けに販売する際、店内でイートインするだけなら必要なかった「菓子製造業許可」が求められることがあります。これは、あくまでも店内での提供にとどまる「飲食店営業許可」と違い、持ち帰り用に菓子を製造・加工・包装する行為が対象になるためです。実際には、同じ厨房で料理も菓子製造も行う場合、間仕切りや洗浄設備の確保など、施設レイアウトで考慮すべき点が多く出てきます。

また、消費者の手元に届くまで時間がかかるテイクアウトやデリバリーでは、食品表示が非常に重要です。具体的には、商品名・原材料・アレルゲン・内容量・消費期限(または賞味期限)などをラベルに書き添える必要があります。たとえば、卵や乳、小麦などアレルギーを引き起こしやすい食品を使用している場合、しっかりと明記しておかないと安全面で大きなリスクとなります。

実際、食中毒やアレルギー事故は、店舗の信用を大きく損ない、最悪の場合営業停止にもつながります。売上アップを狙うなら、まずはこうした衛生管理面のリスクを減らす仕組みを構築しましょう。菓子製造許可を取る際にも、保健所から「食品表示をどのように行うか」についてヒアリングされることが多いため、事前準備が欠かせません。

このように、スイーツを販売するにあたっては「手軽で儲かりそう」というイメージだけで突き進まず、衛生管理や許可申請をしっかり押さえる必要があります。商品自体の魅力はもちろんですが、正しい表記と管理体制を整えることで、リピート客が増え、長期的な売上増を期待できるでしょう。


2-3. 消費税率と販売容器の選定

スイーツのテイクアウトで意外と見落とされがちなポイントが「消費税率」と「販売容器」の選び方です。まず消費税率に関しては、店内で飲食する場合には通常10%が適用されるところ、テイクアウト・持ち帰りでは軽減税率の8%が適用されます。そのため、同じ飲食店であっても店内飲食とテイクアウトの併用を行う場合、レジ設定や会計フローをきちんと分けて管理する必要があるでしょう。間違えて同一レシートで10%を上乗せしてしまうと、後から訂正が必要になるなどトラブルにつながります。

また、テイクアウトやデリバリー用の容器選びも売上に大きく関係します。たとえば高級感のあるしっかりした箱やカップを使うと、商品単価を上げやすくなりますが、その分コストもかさみます。一方で簡易的なパッケージだと、見た目のクオリティは落ちるかもしれませんが、原価を低く抑えられるメリットがあります。お店のブランドイメージと販売価格に見合った容器を選定することが肝心です。

さらに、スイーツの形状や保存時間によっては、容器の素材を工夫しなければなりません。たとえばアイスクリームなら保冷効果がある断熱材入りのカップや保冷バッグ、ケーキなら衝撃に弱いため箱内部に固定できる仕切りなどを用意する必要があります。容器をいい加減にすると、配送中に崩れて見栄えが悪くなったり、味が落ちたりする問題が起きるので要注意です。

こうした容器のコストや税率設定を踏まえながら、トータルの価格戦略を組み立てるのが飲食店にとっての課題ともいえます。適正価格と魅力的な見せ方が両立できる容器を選ぶことで、顧客満足度とリピート率を高めることに直結するでしょう。


第3章 菓子製造許可と飲食店営業許可の違いを徹底比較

菓子製造許可と飲食店営業許可の違いを徹底比較

3-1. 菓子製造許可とは何か?対象となる調理や販売内容

「菓子製造許可」は、クッキーやケーキ、焼き菓子などを調理して販売する場合に必要となる営業許可のひとつです。ポイントは「菓子として加工・包装したうえで販売するかどうか」。店内で調理してすぐ提供する分には通常の飲食店営業許可で事足りるものの、テイクアウト用にパッケージングを行う場合や、販売先が店舗以外にも広がる場合は、別途菓子製造許可の範囲内で取り扱う必要が出てきます。

たとえば、飲食店が「焼き立てのマフィンやクッキーを店頭で売り、そのまま持ち帰ってもらう形にしたい」と考えたときには、保健所から「菓子製造業許可が必要です」と言われるかもしれません。これは、焼いた菓子を包装して販売する行為が、すでに一般的な店内飲食とは異なるからです。メニュー構成や調理法にもよりますが、生地を混ぜたり成形したりする工程自体が、保健所の基準で「菓子製造」に該当する場合があります。

また、菓子製造許可にはアイスクリーム類製造業や食肉製品製造業など、別の細分化された許可区分と混同しやすい部分があります。実際には作ろうとしている食品がどのカテゴリーに属するのか、細かい基準を確認しながら手続きしなければなりません。これを怠ると、保健所が想定していない食品を製造しているとみなされ、無許可営業として指摘されるおそれがあるわけです。

こうしたリスクを回避するためにも、事業計画の段階で「何を作って、どのように販売するか」を明確にし、保健所に相談するのがベストです。菓子製造許可さえ取得しておけば、将来的にスイーツ専門店への拡張や、ネット販売への展開も行いやすくなるでしょう。


3-2. 飲食店営業許可でできること・できないこと

一方、「飲食店営業許可」は店内調理と店内飲食を主眼とした営業形態を認めるものです。お客さんが席に座り、店舗の中で調理された食品を食べるスタイルを前提としています。そのため、多くの飲食店が当初はこの許可を取得して開業するわけですが、後から弁当販売やテイクアウト専門メニューを増やす際に「今の許可で大丈夫だろうか?」と不安になることもあります。

実際には、店内で調理し、その場で提供するだけではなく、お客様が自分で持ち帰るテイクアウトやデリバリーを行っても、飲食店営業許可の範囲で対応できるケースが多いです。ただし、前述のとおり「菓子製造」や「惣菜製造」に該当するメニューを扱うときは注意が必要です。また、店内ではなくイベント出店先やキッチンカーで提供する際には「飲食店営業(自動車)許可」を別に取得する必要があります。

さらに、アイスクリームなど特定の食品については、飲食店営業許可だけでは製造販売が認められない場合があり、その場合は「アイスクリーム類製造業許可」を別途取得しなければなりません。つまり、飲食店営業許可は非常にベーシックな営業範囲をカバーするものの、全ての食品販売を網羅しているわけではないのです。

要するに、自分の店舗で提供する食品がどの業種に該当するのかをはっきりさせるのが最初のステップ。店内提供だけなら問題ないにせよ、販売形態が拡大していくと新たな許可や施設基準が求められる可能性があるため、定期的に事業計画を見直しておくことが大切です。


3-3. 両方を取得する場合に押さえるべき施設区画

菓子製造許可と飲食店営業許可を同時に取得するメリットは、店内でのイートインとテイクアウト用の菓子販売を並行して行える点にあります。いわゆる「カフェ兼スイーツ専門店」のような形態を実現しやすく、顧客にとっては「店内でも食べられるし、お土産にも買える」という利便性が高まります。

しかし、両方を取得するには、施設区画をはっきり分けるなどハードルが上がることも覚えておきましょう。特に保健所が最も注目するのは、クロスコンタミネーションを防ぐ仕組みです。生菓子を作るエリアと、一般的な調理を行うエリアが混在していると、食中毒リスクやアレルギーの混入リスクが高まります。そのため、洗浄設備やシンクの数を増やしたり、空調や換気扇も分離したりと、追加の投資が必要になるかもしれません。

また、衛生管理責任者や調理スタッフの動線確保といったオペレーション面も重要です。スイーツを作る人と、店内で調理を行う人がぶつからないよう、動線を上手に区切らなければ効率も落ちてしまいます。保健所は、こうした動線計画や設備設計をかなり細かく確認するため、厨房レイアウトの図面を事前に用意して相談することが多いです。

一度許可を取得すれば、テイクアウトだけでなくデリバリーやネット販売などビジネスの幅が広がる可能性があります。菓子製造許可があれば、自家製ケーキや焼菓子を全国に発送できるようになるなど、専門店としてブランドイメージを高める展開も期待できます。投資額や労力はかかるものの、長期的な視点で考えると、両方の許可を持つ利点は非常に大きいでしょう。


第4章 飲食店が菓子製造業許可を取る手順と保健所への申請書類

菓子製造業許可を取るための手順と保健所への申請書類

4-1. 食品衛生責任者の配置と衛生管理の基本

菓子製造業許可を取得するうえでまず押さえたいのが、食品衛生責任者を配置して衛生管理体制を確立することです。食品衛生責任者は、法律や条例のルールに基づき、調理スタッフを監督したり衛生マニュアルを整備・運用したりといった重要な役割を担います。飲食店が新たにお菓子やスイーツのテイクアウト販売を始める際も、店内だけでなく持ち帰り用に製造する行為が増えるため、衛生管理の範囲が広がる点に注意が必要です。

たとえば焼き菓子を大量に仕込んで容器に詰め、注文を受けて販売する場合でも、調理環境から包装作業まで管理すべき工程が増えます。そのため、温度管理の手順を明確にしたり、食中毒リスクを下げるための交差汚染防止策を講じたりする必要があります。食品衛生責任者が中心となり、スタッフ全員が共通のルールを守れるようマニュアルを作り、定期的に教育することが大切です。

また、飲食店がすでに店内提供を行っている場合でも、菓子製造を新たに加えるなら、使用する食材や調理器具が異なるため衛生管理計画を再構築する必要があります。アレルギー表示の対象が増える場合や、店内で販売しない原材料を新たに仕入れる際のチェック体制など、細かいところまで責任者が目を光らせることが重要です。特に容器の管理は、テイクアウト販売の際に大きな役割を果たし、包装ミスや異物混入を防ぐための手順を徹底しなければなりません。

食品衛生責任者は通常、保健所で指定の講習を受講し、その修了証をもって資格保有者となります。調理師免許や栄養士資格を持っている人であれば、そのまま食品衛生責任者として登録できるケースもあるため、まずは店舗内の人員構成を確認して担当者を決めるとよいでしょう。


4-2. 施設基準に適合するための調理スペース設計

菓子製造業許可の申請にあたり、最も大きな課題となるのが施設基準への適合です。保健所では、調理スペースが清潔であり、異物混入や食中毒を防ぐための構造・設備が整っているかを厳しく確認します。飲食店であればすでに厨房を備えているケースが多いですが、菓子製造を行うには追加の設備やレイアウトの変更が必要になることも珍しくありません。

たとえば、クロスコンタミネーションを防ぐための動線設計が重要です。生地をこねる作業台と、既に焼き上がった商品を包装するスペースとが近すぎると、未加熱の原材料から菌が移るリスクが増してしまいます。また、洗浄設備については、通常の飲食店営業許可では1か所のシンクで済むところが、菓子製造では2層シンクや専用の手洗い場が求められるなど、自治体や製造内容によって基準が変わることがあります。

さらに、保管庫や冷蔵・冷凍設備も十分な容量があるかどうかがチェックされます。菓子の原材料である卵や乳製品、チョコレートなどは温度帯の管理がシビアであり、少しでも管理が甘いと菌が繁殖したり品質が劣化したりする危険があります。仕込みの時間や方法にも左右されるため、製造計画を立てたうえで設備容量を確保しなければなりません。

こうした設備要件を踏まえつつ、保健所に事前相談をしておくのがおすすめです。実際の許可申請を行う前に、施設の図面や改装計画を見せながら細かい部分をチェックしてもらうことで、後から高額な工事が必要になるリスクを下げることができます。また、各自治体が公開している「施設基準のチェックリスト」なども活用すると、漏れなく要件を満たせるでしょう。


4-3. 申請にかかる費用・書類・交付までの期間

菓子製造業許可を取得するためには、申請にかかる費用をはじめ、用意すべき書類や申請してから許可証が交付されるまでの期間を把握しておく必要があります。費用は自治体ごとに異なりますが、目安としては14,000円〜17,000円程度が一般的です。アイスクリーム類製造業許可など、業種によってはこれより高くなる場合もあります。

申請書類には、店舗の平面図やレイアウト図、食品衛生責任者の資格証明書、使用する調理器具や設備のリストなどが必要です。また、営業者の身分証明書や法人登記簿謄本など、個人・法人によって別の書類も求められるケースがあります。いずれにせよ、申請漏れがあると審査が一時ストップすることになるため、保健所が指定する書類をしっかりと確認した上で提出しましょう。

書類を提出したあとは、保健所の職員が実際に店舗や施設を検査に訪れます。厨房レイアウトやシンク・排水設備の状態、防鼠・防虫対策、清掃状況などが確認され、問題がなければ「営業許可証」が交付されます。この過程で改修が必要と判断されれば、再度工事を行って再検査となり、許可取得までの時間が延びることもあります。

許可証の交付後は店舗での掲示が義務付けられているところもあり、自治体によっては**有効期限(5〜6年など)**が設けられているため、更新を忘れないように管理しましょう。特に、テイクアウトやデリバリーに力を入れて長期的に菓子製造を行う予定があるなら、早めに許可を取得し、定期的に衛生管理をアップデートすることが安定した営業につながります。


第5章 パン屋・ケーキ屋・惣菜屋とテイクアウト専門店の違い

5-1. パンや洋菓子を扱う場合に求められる営業許可の組み合わせ

パンやケーキといった洋菓子を扱う店舗は、基本的には菓子製造業許可を取得してテイクアウト中心の販売を行うことが一般的です。ただし、店内にイートインスペースを設けて「カフェ」の形態も兼ねる場合は、飲食店営業許可も併せて取得しなければなりません。この組み合わせによって、お客様に「店内でコーヒーと一緒に楽しめるし、持ち帰って自宅でも食べられる」という柔軟な選択肢を提供できます。

一方、パン屋やケーキ屋では、内装や厨房設備の設計が飲食店と少し異なる点があります。通常のレストラン厨房ほど大規模な調理設備を必要としない代わりに、生地の発酵スペースやオーブン、菓子専用の冷却装置など、パン・洋菓子向けの専門設備が優先されがちです。ここにイートイン用の机や椅子を配置しようとすると、作業動線が狭くなるなどレイアウト面での調整が求められます。

また、パン屋は焼成後に陳列して販売するため、店内に並べるパンが「食品」として扱われる時間が長くなります。その間の衛生管理や防虫対策はしっかり行わないと、食中毒リスクや異物混入トラブルの原因となるでしょう。特にテイクアウト専門店として大々的に販売するなら、ショーケースや棚のレイアウトを最適化し、温度や湿度、虫の侵入などに注意を払う必要があります。

このように、パンや洋菓子を扱う店舗は「菓子製造をするのか」「イートインを併設するのか」などによって取得すべき許可や施設要件が大きく変わります。もし将来的に専門店化やネット販売を視野に入れるなら、設備投資と許可申請をまとめて検討しておくと、後から二度手間にならずにスムーズに拡大できるでしょう。


5-2. 惣菜販売や弁当販売で気をつけたい食品衛生

惣菜屋や弁当販売を行う場合は、惣菜製造業許可や場合によっては飲食店営業許可が必要となります。調理の工程で肉や魚を扱うことが多い惣菜は、スイーツ以上に食中毒のリスク管理が難しい面があります。特に仕込みの時間帯が長く、調理済み食品を店頭に並べて販売する時間も長いことから、時間管理温度管理を徹底して行うことが重要です。

たとえば揚げ物や煮物など、一度加熱した後に放置すると菌が増殖しやすいゾーン(10〜60℃)に長く留まる恐れがあります。そのため、いつ作った商品なのかを分かりやすく表示し、一定時間で廃棄するルールを設けることが一般的です。デリバリーに対応する場合も、配送中の温度が不適切にならないよう、保温ボックスや保冷バッグを活用しながら管理を行う必要があります。

さらに、弁当をテイクアウト向けに大量生産する場合、大量調理施設に該当するかどうかもチェックしましょう。一定数量以上の調理を行う施設では、「食品衛生管理者」や「大量調理マニュアル」が求められるケースがあります。もちろん、小規模の飲食店が少量ずつ弁当を販売するだけなら、飲食店営業許可の範囲で賄えるかもしれませんが、保健所に細かなルールを確認しておくことが大切です。

惣菜販売や弁当販売は、手軽さと需要の多さが魅力的な分、販売責任をしっかり果たすための衛生管理が不可欠です。**「調理後何時間以内に売り切るか」「保存状態はどう保つか」**といった基準をスタッフ全員で共有し、容器の材質や包装方法にもこだわることが、信頼とリピーター獲得への近道となります。


5-3. 店舗デザイン・什器配置で気を配るポイント

パン屋やケーキ屋、あるいは惣菜屋としてテイクアウト専門の店舗を運営する場合、店内のデザインと什器(ショーケースや棚など)の配置が売上に直結するポイントになります。まず、来店客が商品を見やすく、手に取りやすい配置を考える必要がありますが、一方で食中毒や異物混入を防ぐために「蓋つきショーケース」などを導入することも欠かせません。

特に、パンやケーキ、惣菜などは空気に触れることで乾燥したり雑菌が付着したりするリスクがあります。温度管理が必要なものは冷蔵ケース、常温でOKなものはガラスケース、といった具合に、商品ごとに最適な什器を選ぶことが大切です。また、照明や装飾を工夫して商品を美味しそうに見せる演出も効果的ですが、熱を持ちすぎる照明を食品近くに当てると品質が劣化する恐れがあるため、注意点を理解してレイアウトする必要があります。

一方、スタッフの動線設計も見逃せません。テイクアウト専門店では、注文から会計、商品受け渡しまでの流れがスムーズであるほど、お客様の満足度が上がり、混雑時のトラブルを減らせます。商品補充や陳列作業の際、他のお客様とぶつかり合わないように通路幅を確保し、作業スペースを店内の奥側にまとめるなど、細かな配慮が必要です。

最近では、感染症対策を兼ねてレジ付近に飛沫防止パネルを設置する店舗も多いですが、その分スペースが狭く感じられることも増えます。実際にどのように配置すればお客様が注文しやすいかをシミュレーションし、**「必要な衛生管理と売り場演出の両立」**をめざすことが重要です。テイクアウト専門店として開業するなら、限られた面積の中でこれらを実現するノウハウが成功の鍵を握るでしょう。


第6章 改正食品衛生法と最新の営業許可制度について

6-1. HACCPに沿った衛生管理が求められる背景

2021年6月に施行された改正食品衛生法では、HACCP(ハサップ)の考え方に基づく衛生管理がすべての飲食店や食品取扱事業者に義務付けられました。HACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略であり、食品を製造・調理する工程を細分化して、危害要因(Hazard)を分析し、重要管理点(Critical Control Point)を設けて集中的に管理するという手法です。

これまで大規模な工場や大量調理施設に導入されるイメージが強かったHACCPですが、改正食品衛生法によって、たとえ小規模な飲食店やテイクアウト専門店でも、基本的な衛生管理計画を作成し、日々のチェックを行うことが求められるようになりました。たとえば、「仕込み時の食材温度を記録する」「加熱温度を測定する」「冷蔵庫内の温度をこまめにチェックする」など、従来よりも細やかな管理が必要になります。

その背景には、海外との食品輸出入の増加や食の多様化に伴い、食中毒や異物混入リスクが高まってきた現状があります。特にデリバリーやテイクアウトの拡大により、飲食店側が従来以上に衛生管理に気を配らないと、お客様のもとに届くまでの時間や温度変化で大きな事故が起こりかねません。HACCPは、こうしたリスクを予防的に管理し、安全な食品提供を確立するための国際標準的な方法として注目されています。

飲食店がHACCPに沿った管理をスムーズに導入するには、最初に店舗全体の調理工程を洗い出し、どこに潜む危害要因があるかを明確にする必要があります。たとえば「生肉を扱う工程」「仕込みが夜遅くなる工程」などは特に注意が必要な場面です。各段階での温度測定や清掃確認など、きちんとチェックシートにまとめ、スタッフに周知徹底することで、改正食品衛生法に対応しつつ信頼性の高い店舗運営が可能となるでしょう。


6-2. 届出制と営業許可の違い

改正食品衛生法では、一部業態が届出制に移行したことも大きな特徴です。以前は営業許可の取得が必須だった業態のうち、衛生リスクが比較的低いと判断されたものに関しては、保健所への「届出」のみで営業が可能になりました。たとえば、加熱を必要としない乾燥食品の包装や、単なるコーヒー豆の焙煎・小分け販売などは許可不要となるケースがあるのです。

ただし、「届出制=自由に何をしてもよい」というわけではありません。 届出業種でも保健所への登録手続きや、HACCPに沿った衛生管理が求められることは変わりません。単に営業許可取得の手数料や施設検査が不要になっただけであり、万が一食中毒や異物混入といった事故が起これば、飲食店同様に厳しく追及される可能性がある点に注意が必要です。

一方で、菓子製造業やアイスクリーム類製造業など、依然として営業許可が必須の業態も数多く存在します。特に動物性原材料や水分を多く含む食品を扱う場合は、許可制のまま厳格な基準をクリアしなければいけません。テイクアウトやデリバリーの販売形態が広がったことで、無許可営業とならないよう「自分の業態が届出で足りるのか、営業許可が必要なのか」をしっかり確認することが大切です。

このように、届出制と営業許可制が混在している時代だからこそ、飲食店や専門店を開業する場合は最新の法律や自治体の運用ルールを調べる必要があります。自店舗のビジネスモデルがどういったカテゴリーに入るのかを早めに把握し、保健所と連携して手続きを進めると、トラブルや無駄なコストを大幅に減らせるでしょう。


6-3. アイスクリーム類製造業や菓子製造業における改正点

改正食品衛生法は、テイクアウトやデリバリーを含め、幅広い食品ビジネスをカバーする形で変更が行われました。アイスクリーム類製造業や菓子製造業といった業態も例外ではなく、改正後はこれまで以上に製造過程での温度管理や衛生チェックが重視されています。特にアイスクリームは、低温状態を維持しなければ品質が劣化しやすいため、調理設備や施設区画に対する要件が一段と厳しく設定されています。

たとえば、ジェラートやソフトクリームを店内で製造する専門店の場合、原材料の殺菌工程から仕上げまでの一連の流れを、どこで、誰が、どのように行うか明確にしなければなりません。少しでも異なる温度帯で管理されると細菌が繁殖しやすくなるため、HACCPの考え方を導入して「ここが重要管理点(CCP)だ」と明確に示すことが求められます。

一方、菓子製造業で焼き菓子やチョコレートを取り扱う店舗も、改正後はアレルギー表示や原材料の情報管理をより徹底する必要があります。持ち帰り用の容器や包装材にも、適切なラベリングを行い、消費者に対して安全性と透明性を担保しなければなりません。これらの表示ルールを無視してしまうと、後々クレームや行政指導につながることもあるので、**「表示可能なシールやラベルの印刷方法」「アレルギー物質の表示順」**など細かい点までチェックするのが望ましいです。

改正によって厳しくなった面がある一方で、先述したように一部業態が届出制となりハードルが下がった部分もあります。ただし、テイクアウトやデリバリー市場の拡大により、消費者の食品に対する目はますます厳しくなっています。売上アップを目指すには、単に法的な基準をクリアするだけでなく、安全第一の姿勢で衛生管理と品質向上に努めることが、長く愛される店舗づくりの秘訣といえるでしょう。


第7章 手作り食品や焼き菓子のオンライン販売の始め方

手作り食品や焼き菓子をオンラインで販売するステップ

7-1. 自宅キッチンの改装と保健所への対応

自宅で弁当や焼き菓子などの手作り食品を販売したいと考える方が増えています。特にオンラインで注文を受け、宅配やテイクアウトで届けるビジネスは初期費用を抑えられる魅力がある一方、保健所の許可を得るためのハードルも存在します。多くの自治体では、自宅のキッチンを営業用として使うには施設基準を満たす必要があるからです。

具体的には、生活空間と調理空間を完全に区切ることが求められます。家庭用のキッチンがリビングとつながっている場合は、扉や仕切りを設置して明確に分離するなどの改装が必要になるケースが少なくありません。さらに、家庭内でペットを飼っている場合は、その毛や汚れが食品に混入するリスクがあるため、より厳しくチェックされる可能性があります。

また、食品衛生責任者の設置や、専用の調理器具・容器を使うといったルールを守らなければならない場合もあります。自宅と店舗が同一敷地内だとしても「飲食店営業許可」「菓子製造許可」「惣菜製造業許可」など、扱う食品に応じて許可区分が変わるため、あらかじめ計画を具体化して保健所に相談することが欠かせません。

こうしたハードルが高いと感じる場合には、シェアキッチンを活用する方法もあります。シェアキッチンとは、すでに食品営業許可を取得している施設を時間貸しするサービスのこと。自宅キッチンを改装しなくても、衛生管理が整った場所で調理できるメリットがあり、初期投資を抑えながらオンライン販売を始めたい方に適しているでしょう。いずれにせよ、自宅で食品を扱う以上は、保健所への対応を軽視できません。きちんと許可を取得してこそ、安心・安全なテイクアウトやデリバリーを継続できるのです。


7-2. 食品表示とラベル作成で気をつける点

オンライン販売において、食品表示ラベル作成はとても重要な役割を果たします。店舗で直接手渡しする場合と違い、購入者が実際に商品を手に取るまで店側と対面する機会が少ないからです。販売ページを見て注文したお客様は、「商品に使われている材料やアレルギー情報、消費期限、保存方法」などを明確に知る術がラベル表示しかありません。

まず、アレルゲンの表示は必須事項です。特に卵や乳、小麦などを使った焼き菓子は、多くの人がアレルギーを持っている可能性があり、誤って口にすると健康被害を引き起こすリスクがあります。製造時に使用した原材料のうち、法令で定められた特定原材料は必ず表示する必要があります。また、混合設備を使う場合は、微量に混入する可能性があることを「本製品は○○を含む設備で製造しています」などの文言で伝えるのがベターです。

次に、消費期限または賞味期限の記載も欠かせません。消費者が安全に食べられる期間を明示することで、食中毒のリスクを抑えると同時に、クレームや返品トラブルを防ぐことにつながります。オンライン販売の場合、配送にかかる時間も考慮し、期限の設定が短すぎると受取時にすでに期限が迫っているという事態を引き起こすことがあるため、十分に検討しましょう。

また、手作り食品のネット販売では、製造場所の表示が抜けてしまうケースが散見されます。自宅であっても保健所の許可を取得した施設であれば、その住所や連絡先をラベルに記載しなければなりません。万が一食中毒などの問題が発生した場合、どこで製造されたのか明確に特定できるようにするためです。こうした表示義務を誤解していると、行政指導や罰則対象になる恐れもあるので注意が必要です。


7-3. オンラインショップ開設から発送までの方法

自宅やシェアキッチンで製造した食品をオンラインで販売するためには、オンラインショップの開設が必須です。近年では、メルカリShopsやBASE、STORESなどのプラットフォームを使って、初心者でも簡単にショップを立ち上げられます。それぞれのプラットフォームで決済や配送のシステムが整備されているため、クレジットカード払い、コンビニ払いなど多様な方法を導入できるのも利点です。

まずは、商品の写真撮影商品説明の作成からスタートします。テイクアウトや宅配用の容器に実際に詰め、視覚的に美味しそうなイメージを演出しましょう。説明文では、主要な原材料やサイズ、賞味期限、保存方法を丁寧に記載します。さらに「調理時間」「食中毒防止のための注意点」などを追記しておくと、購入者が安心して注文しやすくなります。

注文を受けたら、発送準備に移ります。焼き菓子や弁当など、商品によってはクール便が必要な場合があるため、発送方法を事前に設定し、プラットフォーム側で配送オプションを選べるようにしておきましょう。包装材や緩衝材も揃えておき、配送中に商品の形が崩れないようしっかり保護することが大切です。特に生菓子などは、保冷剤を入れて一定温度を保つ工夫が欠かせません。

最後に、到着後のフォローとして、お客様にメールやメッセージで「商品の感想」や「再購入の意欲」をうかがうと、リピーターを増やすきっかけになります。飲食店がオンライン販売に参入する場合は、店頭との相乗効果を狙い、実店舗で使えるクーポンを同封するなどの施策も面白いでしょう。こうしてオンラインとオフラインの販売チャネルを組み合わせることで、弁当やスイーツの売り上げを安定させる方法が確立できます。


第8章 アイスクリームのテイクアウト販売専門店の開業方法

アイスクリーム販売で専門店を開業するための要点

8-1. アイスクリーム類製造業許可と必要設備

アイスクリームやジェラートを店内で製造し、テイクアウトやデリバリー、店内飲食で提供するには、アイスクリーム類製造業許可が必要になる場合があります。これは、通常の菓子製造許可とは別枠で、牛乳や乳製品を使って冷却・凍結する工程がメインとなる業態に適用される許可区分です。ソフトクリームマシンを導入するだけでも、保健所の定める施設基準を満たすことが前提となるので、開業準備に時間とコストがかかる場合があります。

具体的には、冷却設備殺菌設備の充実が求められます。アイスクリーム用の原材料は衛生管理が厳しく、冷蔵・冷凍庫の温度を常時モニタリングしなければならない場面が増えるでしょう。さらに、洗浄・殺菌の工程を怠ると、細菌が繁殖したまま商品化されるリスクが高まり、食中毒の危険が高まります。そのため、シンクや洗剤の種類、機械洗浄の手順などを詳細にマニュアル化しておくことが望ましいです。

また、アイスクリーム製造にはクロスコンタミネーションに対する厳格な対策が欠かせません。ジェラートやソフトクリームはカウンター越しに提供することが多く、店内に顧客が出入りする状況で衛生を保つのは容易ではありません。調理室と販売スペースを明確に分け、食材が露出する時間を最小限にする工夫が必要です。ケース内の温度管理やスプーン・シャベルの消毒方法など、細かいルールを守ることで安全性と品質を維持できます。

開業資金の面でも、アイスクリーム専門店は製造機器が高額になりがちです。大型冷凍ストッカーや硬度調整機、空調設備などを揃えるコストを見込まなければなりません。余裕をもった資金計画と十分なリサーチを行い、事前に保健所への相談を徹底することで、円滑な開業につなげましょう。


8-2. 盛り付け・個包装・バルク販売などの提供方法

アイスクリームの提供方法は多岐にわたります。店頭でスクープしてカップやコーンに盛り付ける「対面販売」や、あらかじめ個包装された市販アイスを仕入れて販売する形態、さらに大容量のバルクアイスをまとめて仕入れ、小分けして提供する形態もあります。どの方法を採用するかで、必要な許可や設備、オペレーションが変わってくる点に注意しましょう。

1つ目は、盛り付けて販売する方法。作りたてやフレッシュさをアピールできるため、SNS映えしやすく、差別化が図りやすいのがメリットです。一方でアイスクリームマシンのメンテナンスやクリーンアップに手間がかかり、保健所からは厳しい衛生基準を求められます。お客様との対話を重視する店舗に向いていますが、ピークタイムには混雑しやすく、スタッフの接客スキルが必要です。

2つ目は、個包装アイスの販売。仕入れたカップアイスやバータイプをそのまま販売するので、調理工程が省略され、オペレーションコストが抑えられます。冷凍庫をしっかり管理すれば品質が維持できるため、食中毒や溶けるリスクも比較的低めです。しかし、独自性を出しづらく、コンビニアイスとの差別化戦略が必須となるでしょう。

3つ目のバルクアイス販売は、業務用で大容量のアイスを仕入れ、店舗で小分けにして提供するスタイルです。フレーバーの組み合わせやトッピングのアレンジが自由度高く楽しめるメリットがあります。ただし、解凍・再凍結の繰り返しを防ぎ、常時一定の温度を保つ必要があるため、温度管理ミスによる食中毒リスクに常に気を配らなければなりません。

いずれのスタイルも、テイクアウトやデリバリーを想定するなら保冷容器の選定は重要な課題です。夏場は特に短時間で溶け始めるため、保冷バッグやドライアイスなどのオプションを用意し、購入者が持ち帰るまでの温度を確保する仕組みをつくると、リピーター獲得につながります。


8-3. アイスクリーム専門店の収益モデルと温度管理リスク

アイスクリーム専門店を開業する魅力は、季節商品ながらも根強い需要があることや、オリジナルフレーバーを提供することで高いブランド価値を生み出せる点です。一方、売上はどうしても天候や気温の影響を受けやすく、真夏や真冬で売上が極端に上下するリスクがあります。そのため、テイクアウトだけでなく、店内で食べられるイートインスペースを設置したり、パフェやスイーツを併売したりして一年を通じた集客策を考える店が増えています。

また、オンライン販売やデリバリーに挑戦する方法もありますが、アイスクリームは温度管理が難しい食品です。宅配に対応するなら、ドライアイスを入れた保冷ボックスやクール宅急便を利用する必要がありますが、その分コストがかさみ、薄利になる可能性があるでしょう。保冷資材を工夫して破損や溶けを防ぐなど、商品の到着状態を最優先に設計しないと、受取時にアイスが溶けてしまうトラブルが起きかねません。

さらに、店舗内の温度管理ミスによる食中毒リスクにも気を配らなければなりません。アイスクリームは低温状態を保っていれば安全ですが、一度溶けかかったものを再冷凍すると細菌が繁殖しやすくなり、品質が著しく低下します。HACCPの考え方を導入して、製造から販売までの各工程で温度を確認・記録し、異常があれば即座に廃棄や再仕込みするルールを整備しましょう。

こうしたリスク管理をクリアできれば、アイスクリーム専門店は「季節感を演出しやすい」「若年層やファミリー層にアピールしやすい」などの大きな魅力があります。独特のフレーバーや映える商品写真でSNSでも拡散されやすいため、テイクアウトやデリバリーとも相性がいいといえるでしょう。重要なのは、温度管理と衛生管理をおろそかにしないこと。店舗と顧客の双方に安心・安全を提供できてこそ、長期的な収益モデルが成り立つのです。


第9章 自宅で弁当や焼き菓子を販売する上でのチェックポイント

9-1. 弁当販売とデリバリーを両立させる仕組み

自宅や小さな店舗で弁当を製造し、テイクアウトとデリバリーの両方で販売するケースが増えています。特に、働く人の忙しい昼休みを狙ったランチボックスや夕食代わりのデリバリー弁当などは高い需要がある一方、温度管理と時間管理が非常にシビアな分野でもあります。安全においしい食事を届けるために、どのような仕組みが必要なのでしょうか。

まず、弁当を作る場合は調理方法と保存時間を正確に把握し、食中毒リスクを下げる工夫を徹底しましょう。加熱が甘い肉や魚は細菌が残る可能性があるため、中心温度を充分に上げる必要があります。また、調理後に室温で長時間置いておくと、温かさが中途半端に下がり、菌が増殖しやすい温度帯に留まることになります。調理完了からお客様の手に渡るまでの時間をできるだけ短縮し、保温・保冷を適切に行う体制を整えることが大切です。

デリバリーを導入するなら、配達にかかる時間やルートを見極めた上で、注文受付時間帯や対応エリアを設定しましょう。遠方までカバーしようとすると配送コストや食品品質の維持が難しくなり、不満やクレームにつながりやすくなります。配達スタッフの手配やバイク・自転車などの交通手段、保温BOXや保冷バッグの用意も必須です。最近ではUber Eatsや出前館などのプラットフォームを活用して配送をアウトソースできる反面、手数料がかさむため、利益率とのバランスをよく計算する必要があります。

さらに、メニュー構成にも注意が必要です。長時間の持ち歩きに向かない食品(生野菜サラダ、刺身など)は、デリバリーには不向きです。代わりに加熱調理した総菜や冷めても美味しい副菜を中心に構成し、客への食品安全に関する注意点を明示しておくことでトラブル回避につながります。テイクアウトやデリバリーで弁当を販売するなら、こうした仕組みを整え、時間と温度にシビアな運営を行うことが成功への鍵となるでしょう。


9-2. 保健所の要件を満たすキッチン改修事例

自宅で弁当や焼き菓子を作って販売したいものの、現行のキッチンが保健所の基準を満たしていない場合、改修工事が必要になることがあります。たとえば、家族が日常的に利用するシンクや冷蔵庫と、営業用に使用する設備を区分できていないケースです。生活空間と仕込み空間が混在する状態では、異物混入や衛生事故のリスクを排除できないと判断される可能性が高いでしょう。

代表的な改修例としては、間仕切りや扉の設置があります。リビングとキッチンの間にドアを取り付け、ペットや子供が立ち入らないようにするだけでも保健所の印象は大きく変わります。床材や壁材も掃除や消毒がしやすい素材に張り替えることが推奨される場合があり、防水処理などを施して清潔な環境を維持できるように設計するのが理想です。

また、シンクや手洗い設備の追加を指示されることも珍しくありません。たとえば菓子製造の場合、容器や器具を洗う2層シンクと、スタッフが手を洗う手洗いシンクを分離することで、交差汚染を防ぐ必要が生じるかもしれません。換気扇も、食品のニオイを外へ逃がすだけでなく、ホコリや虫の侵入を防ぐためのフィルタリング性能が求められることがあります。

こうした工事には費用と時間がかかりますが、一度クリアすれば営業許可が取りやすくなり、堂々とデリバリーやテイクアウトを展開できます。改修工事を行う前に保健所へ図面を持参し、どの程度の工事が必要なのか具体的に教えてもらうのが最善の方法です。無駄な工事を避けつつ、確実に要件を満たすことで、長期的に安全で安定した営業が続けられます。


9-3. ネット販売・店舗受け取り両方に対応する方法

自宅や小規模店舗を拠点に製造した弁当や焼き菓子を販売する際、「オンライン注文」と「店頭ピックアップ」を組み合わせるハイブリッド方式は、売り上げと顧客満足度の両方を高める有効な方法です。注文方法を多彩に用意することで、新規客やリピーターを取り込みやすくなりますが、一方で在庫管理やオペレーションが複雑になる点に注意が必要です。

まず、オンラインでの受注システムを構築する際は、注文カットオフタイムを設定しましょう。たとえば「当日受け取りの弁当は前日18時までに注文」「焼き菓子の発送は注文翌日の正午までに順次処理」など、明確なルールを設けることで、調理や梱包の時間をしっかり確保できます。事前に仕込みが可能なメニューとそうでないメニューを分けておき、急な注文が重なっても対応できるように作業フローを整備しましょう。

店舗受け取りを導入する場合は、受け取りカウンターをスムーズに用意することが大切です。限られたスペースで受け渡しが混雑しないよう、来店客向けの導線とオンライン注文の引き渡し導線をある程度分けるなど、ストレスフリーな設計が求められます。弁当は保温棚や保冷ショーケースに一時保管しておくと、受け取り時に温度が下がりすぎたり上がりすぎたりするのを防げます。

また、ネット販売と店舗受け取りを両立させる場合、商品の在庫管理をリアルタイムで把握する仕組みが重要です。オンラインで注文が入っているにもかかわらず店頭で売り切れてしまったり、逆に店頭用に確保していた商品がオンライン注文分とかぶってしまったりするミスが生じやすいからです。POSシステムやネット注文管理システムを連動させ、注文が入り次第在庫が自動的に引き落とされるように設定しておくと、こうしたトラブルを未然に防げます。

結果的に、ネット販売と店頭ピックアップを上手く組み合わせると、顧客の利便性が向上し、リピート注文につながりやすくなります。飲食店がテイクアウトやデリバリーを通じて売り上げを伸ばしたいと考えるなら、多角的な販売チャネルを持つことが競争力強化につながるでしょう。


第10章 飲食店がテイクアウト販売食中毒を防いで安定運営する方法

許可取得後に食中毒を防ぎながら店舗運営を安定させる方法

10-1. 定期的な衛生管理チェックと記録の徹底

テイクアウトやデリバリーを中心に行う飲食店や専門店では、食品が店内を離れてからお客様の手に渡るまでの時間が長引きやすく、その分食中毒リスクや品質低下のリスクも高くなります。そのため、開業時に保健所の許可を取得して終わりではなく、定期的な衛生管理チェックを行い、日々の運営で発生しうるリスクに迅速に対処することが大切です。

まずは、HACCPの考え方をベースにした衛生管理計画を作り、仕込み時間や調理温度、冷却・冷蔵工程の詳細をスタッフ全員で共有しましょう。たとえば、「生肉を扱う時間帯や場所を明確に分ける」「冷蔵庫内の温度を一日何回確認し、記録するか」など、具体的なルールを設けると管理がしやすくなります。いずれもチェックや記録が形骸化しないよう、担当を割り振り、記録台帳を定期的に見直すのが理想的です。

また、テイクアウト用の容器や包装材、デリバリーで使用する保温バッグや保冷ボックスなどの清掃・消毒も重要です。これらの器具は一見すると食品に直接触れないように見えても、容器の外側やバッグの内側が汚染源になり得ます。スタッフは**「使用前後にはどのように洗浄・消毒を行うか」**を明確に把握し、使い回しや雑な管理が起こらないようマニュアルを整備してください。


10-2. リスクヘッジに役立つ店舗総合保険の選び方

飲食店を運営するうえで、火災や盗難、自然災害などの物的リスクに加え、調理ミスや衛生管理不備による食中毒事故のリスクも考慮しなければなりません。特に、弁当やスイーツなどのテイクアウト販売、デリバリーで遠方に届ける形態は、店舗外で生じるトラブルに対しても賠償責任が発生する可能性があります。こうした想定外の事故やクレームに対応できるよう、店舗総合保険の加入を検討する価値は高いでしょう。

店舗総合保険には、火災・風水害などによる建物や設備の損害を補償するプランから、食品事故を含む賠償責任をカバーするプランまでさまざまな種類があります。まずは自店舗で想定されるリスクを洗い出し、「どの範囲をカバーすべきか」「保険料の予算はどの程度か」を明確にするのが先決です。デリバリー中のトラブルで商品が破損し、お客様に弁償しなければならないケースが多いなら、動産総合保険や運搬時の損害補償が含まれるプランを確認してみましょう。

また、保険会社や保険代理店とのやり取りでは、「どの程度の事故が対象となるのか」「損害が発生した際の申請手続きはどう進めるのか」を具体的に確かめておくと安心です。食中毒が発生し営業停止を余儀なくされるケースでは、休業補償をカバーするオプションが役立つこともあります。店舗の信用と経営を守るためにも、十分な補償内容を持つ保険を選び、トラブル発生時にスムーズに対応できる体制を整えましょう。


10-3. 店舗拡大・専門店化を検討する際の注意点

テイクアウトやデリバリーに力を入れている飲食店の中には、順調に売り上げを伸ばした結果、店舗の拡大業態の専門店化を検討するケースがあります。たとえば、「菓子製造許可を取得して、スイーツ専門店として別店舗を立ち上げたい」または「テイクアウト専門の支店を増やし、より広域に商品を届けたい」などのビジョンです。こうした拡大路線を取る場合には、いくつかの大切なポイントを押さえておきましょう。

まず、追加の許可申請設備投資が必要になることが多い点を忘れてはいけません。新店舗を構えるなら、改めて保健所へ図面を提出し、調理場の規模やスタッフ配置などを含めて審査を受ける必要があります。メニュー拡大やジャンル変更に伴って「惣菜製造業許可」や「アイスクリーム類製造業許可」を追加で取得するケースもあり、予定外の費用や時間がかかることも考慮しましょう。

さらに、スタッフの教育と衛生管理の統一が課題となります。複数店舗を展開すると、オーナーや管理者の目が行き届かない場面が増えがちです。各店舗の食品衛生責任者がしっかり任務を果たし、HACCPに沿ったルールがどの店舗でも同じ水準で守られているかを、定期的にチェックする仕組みを作ることが大切です。また、マニュアルや教育資料を標準化し、新人でもすぐに適切なオペレーションができる状態を整えると安心です。

最後に、テイクアウトやデリバリー事業を拡大する際は、ネット販売システムや予約システムとの連動も検討してみましょう。オンラインでの注文数が増えると、スタッフが手作業で管理するには限界が生じやすく、在庫や注文のミスが発生しやすくなります。クラウド型の受注管理システムやPOSレジを導入すれば、複数店舗のオペレーションを一元管理でき、配達エリアや時間帯の調整もスムーズに行えます。

このように、規模拡大や専門店化は大きなチャンスである反面、許可手続きや衛生・スタッフ管理への負担が増えるリスクも伴います。新しい店舗が早期に軌道に乗るよう、事前にしっかりと計画を練り、保健所や専門家へ相談しながら進めることで、トラブルを最小限に抑えながら事業を拡大していくことが可能です。

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この記事を書いた人

鵜飼 あきひろのアバター 鵜飼 あきひろ 株式会社Grill 取締役/店舗経営・集客コンサルタント

2014年にオイシックス株式会社で海外事業を担当後、香港・中国現地法人の社長に就任。
2017年に起業した株式会社Emooveでは代表として事業を成長させ売却・EXIT。
現在は株式会社Grillの取締役COOとして複数の飲食店舗を経営する傍ら、現場目線で成果の出る集客支援に取り組んでいる。
豊富な実践経験と経営視点を活かし、小さなお店の“ファンづくり”をサポートするのが信条。

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