老舗煎餅屋が“おつまみ専門店”に転生!いま再注目される「リブランディング」の可能性

倒産寸前の老舗を救ったのは「マーケティングの視点」だった
1987年創業の老舗煎餅屋「杵屋」。
かつて地域に愛された名店は、時代の変化についていけず、静かにその灯が消えかけていた。
しかし今、「麻布十番にある“大人のおつまみ専門店”が面白い!」とSNSを中心に話題を呼び、20〜30代の新たなファンが次々に訪れている。その裏には、あるSNSコンサル会社によるM&A×リブランディングの挑戦があった。
「伝統を活かしながら、現代にフィットする形へ大胆に再構築する」
そう語るのは、リブランディングを主導した篠原さん。老舗の再生に取り組んだきっかけから、商品開発、ブランド戦略、SNS活用までを、全2回にわたってお届けする。
伝統 × 革新で、若者が列をなすブランドへ
かつて「煎餅=お茶請け」のイメージが強かったが、今や“晩酌に合うおつまみ”として再定義された杵屋のプロダクトは、若年層からも熱い支持を受けている。
本記事では、M&Aの決断から商品企画、ブランディング、そして売上30%アップの成果まで、篠原さんのリブランディング戦略を深掘り。
変化を恐れるすべての経営者へ――
これは、伝統を活かしながら未来を切り拓いた“挑戦の記録”である。
変化を恐れる経営者にこそ、ぜひ読んでほしい“挑戦の記録”だ。

最近、『麻布十番に斬新なおつまみ専門店がある』って噂をよく耳にするんです。しかもルーツは1987年創業の老舗煎餅屋!? それをM&Aで取得して大リニューアルしたそうですね。まずは、どういう経緯だったんでしょう?



SNSのコンサル会社として、自社ブランドを育てたいと考えていた時に出会ったのが、倒産寸前だった老舗『杵屋』さん。
当時は一人で運営されていて、SNSも広告もほとんど活用できていなかったんですが、商品力は抜群。
マーケティング次第で絶対に再生できると確信して、“これはチャレンジしがいがあるぞ!”とワクワクしました。
1. なぜ“今”リブランディングが必須?





そもそも、老舗をそのまま存続させる道もあったのでは?



もちろん、昔ながらの路線を守る選択肢もありました。
ただ実際、老舗の煎餅屋が次々と倒産しているのが現状です。時代の変化に合わせられなければ、伝統だけでは生き残れない。
「煎餅=お茶菓子」だけだと、やっぱり若い世代にはなかなか響きにくいんですよね。
だからこそ“お酒に合う大人のおつまみ”という新しい切り口に挑戦したんです。



なるほど。“今こそリブランディングしないともったいない”と?



まさにそうですね。
全国から厳選した素材への強いこだわりや老舗感の雰囲気はそのまま残しつつ、現代のライフスタイルに寄り添う形で進化させるのが重要だと思いました。
2. M&A後、どうやって“おつまみ”にシフト?





元は煎餅屋さんなのに、ポテトチップスやパスタを揚げたスナックまで並んでる…! これ、商品開発はどう進めてるんですか?



既存のお客様向けに昔ながらのお煎餅は残しつつ、新規のお客様にも届くよう、“お酒に合う揚げ菓子”をテーマに商品を開発しました。
まずはポテトチップスを軸に、揚げパスタや野菜ミックスなどもラインナップしています。
すべてお酒とのペアリングを考慮して厳選された素材へのこだわりはそのままに、晩酌のお供にぴったりなフレーバーを追求しました。
3. “憧れ”を醸成するブランディング術





実際、SNSを見ると商品の写真がすごくオシャレで“ここ行ってみたい!”って憧れる気持ちになるんですよ。ビジュアルや情報発信はどう工夫しているんですか?



デザイナーチームと連携し、Instagramやオンラインショップではカラフルかつ洗練された、見ているだけでワクワクするような世界観を演出しています。
撮影も自分たちで細かくディレクションして、背景や小物もブランドイメージに合わせて選んでいるんです。
また発信の内容は、季節感やシーン提案を交えながらストーリーを届けることを意識しています。
SNSでの魅せ方を工夫するなら、『【2025年最新版】飲食店のSNS運用完全攻略!店舗集客に効果のある活用術を徹底解説!』が役立ちます。
4. “職人不在”でも継承できる伝統とは?



ただ、一方で“煎餅の伝統的な職人技”はどのように生かされてるんでしょう? 今は職人さんがいないと伺いましたが…。



職人はいない代わりに、これまでの長年のレシピや仕入れルート、素材選定のノウハウはしっかり引き継ぎました。
むしろ“データを使いながら、新しい味に挑戦する”スタイルのほうが柔軟で合っている気がします。
5. 実績と反響:リブランディング後どう変わった?





実際に数字やお客様の反応はどうですか?



初年度にはテレビ局からの取材が6本も入って、まだオペレーションに慣れていなかったので、かなりバタバタでしたね。
父の日企画も大好調で、生産が追いつかず3日間泊まり込みで作業することになったくらいです(笑)。
新たな商品企画も功を奏し、20代〜30代のお客様の来店も目に見えて増えて、売上もリブランディング前と比べて約30%アップしました。
実店舗でのイベント活用法については、『小売店で効果の高いイベント企画アイデア完全版!実際の成功事例や具体的な実施方法まで!』も参考になります。
6. 初めてのリブランディングを成功させるコツ





今まさに『うちもリブランディングしたいけど…』という経営者も多いと思います。篠原さん的に、成功のコツは何でしょう?



ポイントは大きく3つ――
“本質”を見極める(何を残して何を変えるか)
“顧客目線”で商品や販路を再設計する
“発信”を強化する(SNSや店舗デザインで憧れを生む)
ですね。古い体質を守り続けるだけでは進化できないし、伝統を全部捨てるのももったいない。
あくまで“強み”を残しつつ、新しさをプラスするのが理想です。
集客アイデアを幅広く知りたい方は、『小売店の集客アイデア総まとめ!来店効果が高い売上増加施策を徹底解説!』をご活用ください。
7. 今後の展望と“リブランディングしないのはもったいない”理由





最後に、これからの展望と、まだリブランディングに踏み切れずにいる経営者へのメッセージをお願いします。



今後は越境ECを通じて海外展開も進めていきたいと考えています。
実際、外国人観光客の方の反応も非常によく、日本ならではの繊細な味や、美しい見た目が高く評価されていると感じます。
…もし“うちの店、時代についていけてないかも”と思うなら、今こそ立ち上がる絶好のタイミングです。
伝統の良さは大事にしながら、変えるべきところは大胆に変える。
その思い切りができる人こそ、これからの時代に愛されるブランドを作れるのではと思います。


守るべき“本質”と、変えるべき“形”――リブランディング成功の3原則とは?


時代の変化に取り残されそうだった老舗が、「大人のおつまみ」という新たな切り口で再出発し、若年層からも愛されるブランドへと進化した。
この挑戦を成功させた秘訣は、篠原さんの言う「3つの原則」に集約される――
- 本質を見極める
- 顧客目線で再設計する
- 発信を強化する。
伝統は、ただ“守る”ものではなく、“活かして変える”もの。
店舗経営に携わるすべての人にとって、リブランディングは「もったいない」どころか、未来の成長を拓くカギとなるはずだ。