焼き小籠包の音と香りで人を惹きつける。博多・大名から始まった「博多焼き小籠包 1010」流 体験型テイクアウトの世界

2019年にオープンした「博多焼き小籠包 1010(てんてん)」。そのユニークな立ち上げから、SNS時代の戦略、体験設計まで。飲食未経験から福岡で注目のテイクアウト専門店をつくったshuさんが、自身の言葉で語ってくれた。
飲食経験ゼロからの挑戦。焼き小籠包専門店を始めた理由とは?


そもそも、shuさんは飲食経験があったんですか?



全然飲食経験なかったんですよね。普通にサラリーマンやってて。そしたら、上海に通じた知り合いから「ミシュラン取った店で焼き小籠包やらん?」って声かけられて。「おもろそうやん」って感じで上海行って、職人呼んで始めたんです。





えー!いきなりそんな話が!?



最初はミシュランの姉妹店として始めたんですけど、すぐにコロナが来ちゃって。それでコンセプトをもっと自分なりのスタイルに変えていこうと思って。店名を「博多焼き小籠包1010(てんてん)」にして、地元・博多らしさを出したかったんです。博多の甘めの醤油や、明太子を使ったアレンジなんかも取り入れていて、ただの中華じゃなく“博多の焼き小籠包”っていうのをやりたかったんですよね。
気になる「1010(てんてん)」の名前のヒミツとは?



この店名、なんだか印象的ですよね。由来が気になります!



「てん」って響きが好きで、経営してる会社も「TEN-NANDA」っていうんです。中国だと同じ文字繰り返すのって縁起いいって聞いて。バランスもいいし、「てんてん」ってなんかかわいいでしょ。



響きのかわいさも含めて、印象に残りますよね。
窓越しのジュワッに惹かれる!「ライブ感」で勝負する店づくり





お店のコンセプトってどんな感じですか?



体験型飲食っていうのがコンセプトで。大きな鍋で小籠包焼いてるのが外から見えるんですよ。ジュワ〜って焼く音とか、肉汁が飛ぶ感じとか、ライブ感あって。





実際に通りかかった人が、つい足を止めちゃいそうです。



福岡には焼き小籠包の専門店って全然なくて、うちを目的に来てくれる人も結構多いんですよ。だから中には「一生に一度しか来ないかもしれない」って人もいると思ってて。そういう人たちにとって、ちゃんと思い出に残るような、体験として楽しんでもらえる店にしたかったんです。
食べ歩き文化は来ると信じた。福岡でテイクアウト専門にした理由





福岡で始めた理由は?



福岡でやったのは、地元だからです。生まれも育ちも福岡で、大学だけ東京。だから福岡で面白いことしたかった。



そうなんですね!なぜテイクアウト一本に?



最初は立ち食いもできる感じだったけど、テイクアウト一本に絞っていったんですよね。当時は福岡に「食べ歩き文化」ってなかった。でも「これから絶対来る」って思ってた。SNS、TikTok、インスタの時代が来る中で、キャッチーでチープなものがウケるって思ってたんです。
韓国・台湾からも注目!アジアに広がる1010の人気





海外からのお客さんも多い?



全体で言えば日本人が多いですが、だいたい5対1くらいの割合です。インバウンドで来られる方は、ほとんど韓国の方。その次が台湾(中国)って感じですね。福岡って欧米人はほんと少ないんですよ。だから「インバウンド=韓国・台湾」って感じです。



そうなんですね!何か海外向けに発信とかしているんですか?



別に韓国向けにPRとかはやってないんですけど、韓国のインスタグラマーが勝手に撮って、勝手に拡散してくれる(笑)。
フォロワー4.5万人。SNS運用は独学、でもUGC重視でバズらせる





SNSは戦略的に運用されてるんですか?



SNSはオープン当初から結構意識してやってました。インスタのリールとか、YouTubeショートがない時代で、縦動画ってTikTokだけ。でも当時はTikTokに飲食のインフルエンサーもいなかったから、インスタでミニインフルエンサーみたいな子たち呼んで、ただで食わせて撮ってもらったりして。



ご自身では何か発信とかしてるんですか?



自分ではYouTubeやってて。今4.5万人くらい登録者います。でもラーメンばっかりなので、視聴者さんからは「福岡のラーメンの人」って思われてます(笑)。だからお店に立って焼いているときに、「バイトしてるんですか?」とか「焼き小籠包やってるんですか?」って聞かれることもあるんですよ(笑)。YouTubeが店とつながるのはもっと先のイメージですね。



今もインフルエンサー施策やってるんですか?



インフルエンサーにお願いしたのはオープンした時だけで、今はほとんどやってないです。最近は、SNSやってる子たちと仲良くなって、その子たちのつながりから他のインフルエンサーの友達が「撮りに行っていいですか?」って言ってきてくれる感じです。そういったUGC(ユーザー生成コンテンツ)をめちゃくちゃ重要視してます。



“撮りたくなる仕掛け”が要なんですね!



「撮ってください!」って貼り紙とかはしてないけど、つい撮りたくなるような導線をつくってるんです。結局、お客さんが自分で撮って、誰かに見せたくなる。そこが一番の勝負どころだと思ってます。
SNS映えチキン南蛮!?“ストップ”で盛り上がる仕掛けとは



最近もう一店舗始めたと聞きました。



そうなんです。実は焼き小籠包の居酒屋版みたいなお店をやってたことがあって。焼き小籠包を調理するのが難しくて、人材がおらずに一年くらいで閉めました。すぐに閉めて、じゃあ次は何やろう?ってなったときに、もっとお客さんに楽しんでもらえるような、体験重視のお店をやろうと思って始めたのが、チキン南蛮の専門店でした。



そこではどんな面白い仕掛けがあるんですか?



タルタルソースかけ放題っていう仕掛けで、お客さんが「ストップ!」って言うまで、店員がひたすらタルタルをかけ続けるんですよ(笑)。
必死で学んだSNS。「生活のため」に生まれた発信術





SNS戦略ってどこかで学ばれた?



SNSの運用とか、誰かに教わったわけじゃなくて、全部自分で試して学んできました。生活のために、やるしかなかったって感じです(笑)。
次なる“仕掛け”はまだ秘密。「喜ばれることをやるだけ」





今後やってみたいことは?



今後のこと? それはまだ内緒っす。3ヶ月後くらいに発表しますけど、めちゃくちゃいいアイデアがあって。「それは確かに!」ってなると思うんで、楽しみにしててください。



めっちゃ気になりますが楽しみにします!では最後に読者の皆さんにメッセージを。



うーん……特にはないけど(笑)、やっぱ喜んでもらえるようなこと、これからもやっていきたいです。
次はあなたの番?shuさんに学ぶ「ワクワクを生む発想力」
shuさんの話から感じられるのは、「戦略」というより「感覚と行動」の積み重ね。それは裏を返せば、「今この時代に必要なこと」を、誰よりも早く“肌で”感じ取ってきたということ。ライブ感、食べ歩き、UGC、映える体験──どれもキーワードになりそうな時代のなかで、「人が撮りたくなる店」を自然体で作り続けるshuさん。
次なる“仕掛け”にも、大いに期待したい。